俳句 田畑益弘俳句の宇宙

iモードをんなのしりとり俳句秀句選
平成13年2月17日〜平成17年10月
田畑益弘選

 

痛くなくなり愛も醒めてゆきけり   miyako

理由などなくて蝶々を殺した日   simon

虫がついて欲しいほど淋しい夜    simon

手をあげて春一番を横断す   miyako

離婚して知る春風のようなもの   simon

ルージュ変え桜前線につながる   simon

たっぷりとふたつの乳房春愁い   koinoneko

夜桜を見てより乳房張ってくる   miyako

瑠璃空へ瑠璃蝶々のさやうなら   koinoneko

デージーや年下の子に愛されて   koinoneko

水蜜桃丸ごと食らふ山育ち   みなこ

抜き手して男の間(あわい)泳ぎゆく   koinoneko

くすり指気にして欲しい星月夜   茶月

来し方に続く闇あり盆の月    みなこ

さやうなら貝殻遠くとほく投げ    koinoneko

元気な児お腹を蹴っている良夜   のんちゃん

老人も介護士われも汗滂沱   ゆみ

打掛の重なる白さ秋の水   茶月

ルオーの絵実山椒噛みて思いだし   茶月

瑠璃石の似合ふ九月や白い肌   みなこ

団欒にそれぞれの顔梨をむく   茶月

しみじみと人の妻なり長き夜   のんちゃん

栗おこわ蒸かすあいまの私小説   茶月

田麩炒る箸音せわし秋まつり   茶月

今日からシングルとんぼの羽音聞こえた   ゆみ

連絡帳紅葉いちまい挟まれて   弓月留菜

手鏡の指紋を拭い秋そぞろ   茶月

せきとめる術無く摩天楼 秋愁   弓月留菜

手紙にもいつかまつわる秋の声   弓月留菜

宵月夜誘うでもなく横座り    茶月

波音の重なってゆくいわし雲   弓月留菜

嫉ましいほどななかまど真紅なり   麻里

てのひらはあたたかきまま すすき原   弓月留菜

しまいには月に代わりて嘘を書く   弓月留菜

蟷螂がぐるり見渡す小宇宙   茶月

秋気澄む思い出す事柔らかく   茶月

長すぎる夜は地球儀を回そ回そ   麻里

そろりそろりNYの秋天仰ぐ   moonlighter

グーチョキパーおててに金の猫じゃらし   茶月

真直ぐな道一人ゆく秋思かな   ゆみ

美しき小石を拾う十七夜    圭子

越天楽空まで響く菊日和   茶月

仮縫をほどけば指先の冷ゆる   弓月留菜

憎まれず愛されず蓑虫ぶらり   miyako

テイクアウトの紅茶香りし秋日和   弓月留菜

雷(らい)起こるエンピツのようなビルの先   弓月留菜

綺麗な眼の青年と逢う鹿の園   ゆみ

経験の浅いくちびる草紅葉    圭子

夜汽車ゆくさながら天の川の灯り   弓月留菜

理路整然と間違えてどんぐりこ   弓月留菜

体(てい)のいい言い訳秋風のせいね   弓月留菜

猫チビが長橋渡る長き夜   のんちゃん

ていねいに切り抜く雑誌 神無月    弓月留菜

瑠璃色の空高々と我を吸う   のんちゃん

嬉しくて紅葉になってしまいそう   圭子

林檎から聞いた幸せそこにある   ゆみ

ぎりぎりの譲歩寒さに手をつなぐ   のんちゃん

過ぎ行けばいつも短き秋であり   弓月留菜

好きだった北風に待っていてくれた   麻里

つよがりて別れてきたり冬の月   もみじ

リリアンを編めば風花きざす街    弓月留菜

リカちゃんの捨てられている枯野かな   圭子

すしだねのゆっくり回る師走かな   弓月留菜

サンタ来るようにパンティー脱いでおく    妙

キラキラと歌舞伎町にも雪が降る   妙

ゼリーから作ったようなポインセチア   弓月留菜

でまかせのメールアドレス月冴ゆる   なぎさ

リンゴ飴握る幼のわれと会ふ   みきほ

るんるんと春呼ぶ児等の一輪車   かおるこ

行き過ぎて戻る道の辺福寿草   みきほ

死海へと春風 オアシスはいずこ   弓月留菜

へりの少し破れし辞書や卒業す   弓月留菜

是空是空鈴の音揺らす花一枝   みきほ

いつまでも見送つてゐる春の月   みきほ

糸遊や女心のうらおもて   かおるこ

やり直すプリントの山 春休み    弓月留菜

千代紙の折り目なぞりて春愁ひ   空

黄信号渡ってをりし恋の猫   かおるこ

一途さの色に染まりて山笑ふ   空

薺摘む空っぽの手は寂しくて   茶月

泣きやめば桜の輪郭確かなり   弓月留菜

理容店鏡に映る春の海   ぽち

恋々と古寺に集まる夕蛙   茶月

とりあえず春の愁いと言っておく   麻里

ずかずかと庭を抜けたり猫の恋   弓月留菜

伊東家の食卓に満つ春野菜   弓月留菜

靴音のひそかに黄砂降りにけり   弓月留菜

麗かに幼な子大き鐘をつく   麻里

ないものをさがしてしまう春の暮れ    弓月留菜

「を」から「ん」で閉じたる辞書の五月闇    弓月留菜

みんなしてまくなぎとなるつもりなり   234ちゃん

「る」ではじまる言葉探して春深し    麻里

息遣ひ荒くなりたる鯉のぼり   234ちゃん

闇深し身の裡(うち)更に花火待つ   234ちゃん

横寝して乳房重たき夕薄暑   ゆみ

手間仕事の末に噴水は天へ   234ちゃん

寸分の狂ひ尺取虫(しゃくとり)にもありぬ   234ちゃん

沼は夏得体の知れぬもの動く   妙

苦心してつくる家族という積木   麻里

木の芽和え食みて家族の沈滞す   かおるこ

すみやかに夏の蝶々となりなさい   234ちゃん

ずっとセクシーな水着買う淋しさ   妙

少年の声しらべよき雲の峰   234ちゃん

余花白くみちのくの空汚れなし   麻里

歴史とはすなはち蟻の列のこと   234ちゃん

しがらみは断つもの虹は立たすもの   234ちゃん

物の芽の色のほのかや人は病む   かおるこ

離合集散 蚊柱の昏昏(くらくら)と   234ちゃん

背伸びしてゆきし大学若葉寒    妙

きつく手を握る見るみる虹消えゆく   麻里

いつまでも少女のつもり糸とんぼ   妙

麺類をどかと買い込み夏に入る   かおるこ

なりわいの香水強き自己嫌悪    妙

遠島を申し付けたる梅雨入りかな   弓月留菜

四丁目の狼犬にジャスミン香れ    弓月留菜

恋々とぼうふら達のゐる朝(あした)   234ちゃん

エッチなこと女も言いてビール酌む  妙

ちまちまと線香花火核家族    麻里

どこからかハングルの歌夏の星   麻里

なっちゃんのバナナさっちゃんより大きい   弓月留菜

苦きものクスリ珈琲ほたるの火   234ちゃん

ずぶ濡れの金魚の明日と明後日と    234ちゃん

のぎへんの漢字をさがす夏野かな   弓月留菜

電光掲示板に1点梅雨の晴れ   弓月留菜

いよいよ真夏大きな地図に腹這って   妙

美央柳花廻廊へ続きけり   かおるこ

輪唱の虹をくぐつてゆく如し   234ちゃん

泣くことも忘れし齢梅雨最中   かおるこ

在庫一掃ほうたるの舞ひ止まず    234ちゃん

蚊遣香父の背中の匂いせり   麻里

遠藤君今も泳ぎは苦手ですか   弓月留菜

七月が始まる解熱剤のように   麻里

蛞蝓(なめくぢ)も寝付けぬ夜に相違なし   234ちゃん

流転ふと天の川ゆく電車かな   みきほ

「ないものは言わない約束」驟雨くる    弓月留菜

定時にはきつちり帰る蛍かな   234ちゃん

ふと思う夫(つま)は空蝉かも知れぬ   麻里

まず雲が真夏の歌をうたいだす   弓月留菜

すくすくと育つあなたの入道雲   妙

ずつしりと香水壜はとうに空(から)   234ちゃん

乱読の青春黴の匂いして   妙

ビニール傘を幽霊に差し掛けむ   234ちゃん

しがらみを流す夏の川が好き    妙

するすると脱がされているバナナかな   妙

幸せか線香花火はじけさせ    麻里

ルーレットに0と00原爆忌    234ちゃん

ルビコン川渡る枇杷の種飛ばし   234ちゃん

海で子と 作りし我が家 砂の城   久美子

ひりひりと日焼している失恋が    妙

つんとする少女の髪に蜻蛉来て   小夜子

ミニカーのくるりと転ぶ汗の昼    小夜子

仕事着に汗ずっしりと光りたり   小夜子

雷神も少し驚く青りんご   小夜子

夜の秋のたかたか指が淋しくて    妙

キャベツ畑にウォンウォンと在り蝶の群れ   小夜子

爆走するわたしのバイク夏の果(はて)   妙

虹の根に立て掛けてある注意書き   234ちゃん

目立たない子に目を注ぐプールかな   かおるこ

鳥の目に睨まれている朝すずし   小夜子

駱駝とは涼しき山でありにけり   麻里

丘陵の国立病院野路の秋   みなこ

なんとなく花火に飽きて闇を見る   妙

転校生異国より来て九月かな   八栄

へらへらと夜のプールは軽薄なり   妙

うらごゑも尖つてきたる秋の蚊よ   234ちゃん

泣き虫の子の背の伸びて夏終る   小夜子

ゴリラが好き秋めいている男より    妙

理科室の匂ひは無花果のにほひ   234ちゃん

見返りの橋 長崎は秋の雨    龍子

全面の水澄みゆけり奥三河   234ちゃん

心太女盛りとうそぶいて   八栄

不器用に生きて飲み干す月見酒    龍子

曼珠紗華島の女人の潔き   八栄

ルルルルと一度きり鳴る夜寒かな    麻里

けったいな俳句作れば虫の声    龍子

基地囲む有刺鉄線夾竹桃   八栄

てんてん手毬の手を逸れて十五夜   妙

磨り硝子越しに人影そぞろ寒   234ちゃん

メレンゲも恋も焦がしてレモンパイ   八栄

似顔絵の似すぎてゐたる秋思かな   234ちゃん

鬼女の面花野の風に外れゆく   小夜子

悔しさは言葉に出さずつるし柿    小夜子

舌噛んだ傷口癒えず鰯雲   小夜子

泣きにゆく渋柿実る故郷    小夜子

抜けた髪の一本愛し稲実る   小夜子

上海の雨月に熱きタカラヅカ   八栄

その道を真直ぐにと指す秋の暮   小夜子

ルーに先ず拘るカレー秋うらら   えこ

じゃがいもにふうふう云つて独りの夜    えこ

泣き顔は見せぬ敗退秋夕焼    えこ

手の中に哀しみもあり柿熟るる    小夜子

ロシアの船出でゆく港冬近し   麻里

掌を見つめいるも灯火親しむこと   麻里

長湯して受験子歌ふビートルズ   八栄

キスさえも許さずにいる秋の星   妙

天高し土を這うもの歩くもの   小夜子

乱心のカマキリ枯れてゆく蟷螂    234ちゃん

マクベス乱心 枯蟷螂も灰になる   小夜子

したたかに腰の抜けたる文化の日   234ちゃん

けふの日を締めくくるごと蜜柑食ぶ   えこ

略歴のながき空白返り花    234ちゃん

きっかけはインターネットおでん酒   勿忘草

縫い針の糸長々し立冬よ   小夜子

栗を剥く女の爪の風の色   小夜子

やさしくてふっと冷たき人と思う   妙

振向けば東京タワーとふ寒灯    麻里

リア王を読めば凍星輝きて    小夜子

「ラッフルズホテル」にて待ち合はす聖夜かな   勿忘草

ときどき雪大東京で転ぶかな    麻里

泣き顔になつてしまひぬ雪だるま   えこ

難破船めく着ぶくれてゆくごとに   234ちゃん

備長炭枕すがしき虫の秋   葉子

シルクのドレスにする月を意識して   妙

きみが指ふとく勤労感謝の日   もとこ

からからと身のどこか鳴る一葉忌   麻里

まつすぐに歩いて寒くなりにけり   麻里

くらくらと年暮れてゆくルミナリエ   葉子

毛皮被て妙な噂の立ちにけり   葉子

マヨネーズたつぷり使い春の昼   葉子

平穏の厨を覗く朧月   もとこ

しろつめくさ踏み荒しては一人っ子   珠実

午後の日矢まともに病理検査室   珠実

忌中燈火蛾を集めてをりしかな   珠実

ぬらりひょん出てくるような梅雨の駅   珠実

りりりりと滴りのりの切りもなし   彩

虫一つ殺せぬ人に泣かさるる   葉子

ルカ書読み台風の昼やり過ごす   珠実

目高から始まるむかし話かな   アリス

理科室の骸骨笑ふ夏休み   葉子

風灼けて洗濯物の白さかな   もとこ

ほんたうの夏雲はもう夢なのか   もとこ

吸い口のぽっぺんぽっぺん郷の夏   うらら

白百合の香やひとときを昏睡す   葉子

涙腺のゆるみをとめて花南瓜   もとこ

ふらり来て新酒にするめ男前   もとこ

レモン切り智恵子になりて夢を追ふ   もとこ

胎動を手のひらで受け 月満つる   うらら

林檎にはぎゅうぎゅう詰の白い闇   珠実

熊の出る町となりしよふるさとは   珠実

はらはらと吾子を見てゐし運動会   miyako

生きていてくださいあまた星の飛ぶ   珠実

字足らずも余りも雀蛤に   珠実

めずらしきものふはふはと冬めきぬ   珠実

ねえあんた鴛鴦を見に行かへんか   珠実

湯豆腐の湯気のむこうの新所帯   雛

夜の長さ全ての音を聴いている   葉子

留守録の青の点滅日短か   珠実

会社てふ寒きものより帰り来る   彩

瑠璃色の小鳥来てゐる百度石   珠実

嬉しくて日記を買ってしまひけり   彩

律気なる夫残しをり木の葉髪   もとこ

泣き虫も母親ゆずり枇杷の花   雛

奈良の墨買い足す母の年用意   珠実

石焼きと石焼きと芋遠ざかり   雛

病院の待合室の大聖樹   倫子

樹氷林翔びたき鳥のかたちして   葉子

女々しくて時雨のやうな男かな   葉子

なんとなく恋人でいるクリスマス   ひとみ

布子着て漁師の妻の遠目がち   雛

領海のあたり三角波激し   倫子

馬小屋の藁あたらしきクリスマス   珠実

好きだから別れることも冬の星   ひとみ

仕事して聖樹の街へ溺れゆく   彩

白砂に冬日を拾ふ雀どち   珠実

すっきりと別れしひとや冬の月   もとこ

キムといふ男憎らし鵺の鳴く   倫子

くるくると地球儀回す寒いゆび   ひとみ

ビートルズ大音響に聖夜以後   倫子

極月のかたまりやすき白砂糖   珠実

後ろから声かけてくる隙間風   雛

画鋲もろともはたと落ちたる古暦   彩

陵の濠に睦びし番鴛鴦   珠実

悔み状このたびはから進めない   倫子

凍空や戻らぬ人の置き手紙   はなんな

籤結ふぽぽぽぽぽんと蝋梅は   珠実

雪降り積む太郎次郎の去りし国   のんちゃん

老酒を熱くせよ炉に薪くべよ   かろん

よよよよと木偶の泣き伏す畳かな   ひとみ

※以上の全投稿句を「呟く女」ーSUPER HAIKU集ーとして出版させていただきました。
 (平成17年2月14日初版)
以下の句は機を見て、第二集として出版させていただきます。


仲直りするのに燗をつけました   雛

体温の静かに移る雪の宿   倫子

うろついて唇よごす暖冬なり   ひとみ

履歴書に他愛なき嘘冬銀河   珠実

雁木市彼が屈めばわたくしも   かろん

物思ふ窓に日脚の伸び始む   はなんな

絹鳴りを隠しきれない雪女郎   倫子

ビリビリと寒月光に感電す   のんちゃん

墨の香や音なく積もる雪の嵩   かろん

笹鳴や夫に来ている女客   珠実

くしゃみして咳払いして開く障子   はなんな

狐火を見たの見ないの夜の深む   珠実

むささびと我名呼ばれん朝帰り   雛

いつのまにこんな年寄るコンパクト   かろん

とんとんと叩いてあげる肩がない   ゆう

婆娑羅男に少年を見し雪つぶて   珠実

テニヲハを知り尽くしたる寒の鯉   千鶴留

伊勢海老の茹で上げられて目のうつろ   はなんな

ロンリーハートに流氷の接近す   珠実

すべったりころんだりして松の内   ゆう

散らかっている一月の小抽斗   倫子

南無慮舎那佛坐像嗚呼寒波急   千鶴留

冴ゆる天 人類は孤独なり   彩

銃音に雪はねかえす女子竹   倫子

待たされてそれでも好きで息白し   はなんな

水仙の向き変へてもや変へてもや   珠実

八重波の果つる崖なり石蕗の花   珠実

瑠璃色の潦(にわたずみ)あり春立ちぬ   彩

ゲームセットは薄氷を踏むように   倫子

日本海鈍色(にびいろ)にして春立ちぬ   みみ

抜き足差し足女盗つ人佐保姫は   千鶴留

落第の息子ちゃらちゃら外出す   はなんな

スクランブルエッグたっぷり春日影   ひとみ

原潜浮上せり春はあけぼの   千鶴留

脳内春眠物質増加中   みみ

うららかに騙されてゐるをんなです   彩

水金地火木土天初蝶   千鶴留

うっかりと春灯ともし見てしまひ   みみ

ひらひらと初蝶のごと初月給   ゆう

自信なき化粧に風の光りけり   みみ

なんとなく春めいている御婆様   圭子

ぬかるみに靴を取らるる納税期   珠実

着膨れといいわけできず は文字かく   うらら

迷宮は頭(ず)の中にあり春愁ひ   彩

いささかの恋おぼえあり早春賦   雛

ふたとせのおもひ重ぬる春うらら   うらら

ライオンの背に隙ある春日向   はなんな

椅子詰めてひとり加わる日向ぼこ   かろん

こらこらと恋猫叱り引っ掻かれ   彩

冷湿布わたしのハートも冷やしてよ   うらら

よい声で鳴いて恋してうちの猫   雛

東風吹きて胸疼きをり薬指   もとこ

病舎より牧師出てくる朧の夜   はなんな

夜泣石雪をいただき仏めく   珠実

来るはずのなき人を待つ避寒宿   倫子

ドドドドと新入社員居酒屋に   みみ

海鳴りかはた耳鳴りか春の地震   珠実

ママと呼びおばさんと呼ぶ受験の子   葉子

恋猫の声つきささる女の身   ひとみ

未亡人てふ残酷な水中花   倫子

帰る家ありてをとこの帰りけり   珠実

利休忌や雨のあかるき心字池   かろん

蹴飛ばして二月の空へ石っころ   はなんな

へそくりをしてゐるは夫春寒し   葉子

白酒に酔うて候居候   雛

キリストの没後の月日柳絮飛ぶ   珠実

無骨なる手のもてあそぶ鰆かな   もとこ

なほざりにあひづちの声 春淡し   うらら

新聞に彼の名見つく朧の夜   はなんな

良い大人になれるとおもふシャボン玉   みみ

まひまひのやうな青春たりしかな   彩

なかなかに骨太なりし余寒なる   葉子

ぬかるんで俄かに春の古道かな   彩

なるようになると思えば麗けし   みみ

下萌を踏みて一足退きぬ   もとこ

糠雨に涙をかくし卒業す   雛

すんなりとほどけぬ紐や戻り寒   葉子

結婚は霞の中に尖る塔   舞

うららかやお巡りさんもくしゃみして   みみ

てのひらから言葉生れて風光る   舞

蔵窓の開け放たれて春の月   はなんな

キリン舎が待ち合せ場所春袷   彩

背中合せに坐ってふたり春の芝   みみ

場違ひな装ひにして春うらら   圭子

駱駝駱駝駱駝春の夢よぎる   彩

ルックスは良し性格はおたまじゃくし   みみ

シクラメン拗ねたおんなのようにかな   倫子

夏までと決めた結婚四月馬鹿   雛

悲しきも辛きも暫し春の雪   おしん

きららなる才ありながら落第す   彩

すつぴんで水買ひに行く朧の夜   はなんな

ローカル線たまには通るつくしんぼ   雛

勇みたつ日本晴れの雪解川   倫子

わがこころの扉開きし忘れ雪   彩

気取りつつ孔雀歩めり春の影   みみ

下駄箱に一足の靴風光る   おしん

留守宅にまたルルルルと花の昼   みみ

留守電にさよならと入れ春の駅   彩

綺麗だと真面目な顔で云ふ寒さ   みみ

囀りも村議町議の子守唄   雛

高らかに辛夷の空へ婚の鐘   はなんな

寝過ごして見知らぬ春の駅に佇つ   珠実

気が付けばまた独り言朧の夜   雛

よろめいて確かむる愛春の夜   おしん

瑠璃渓の水を掬びて春定か   ひとみ

鐘朧をとこ名前で書く手紙   倫子

沼静か残りし鴨のぽつねんと   珠実

ともだちでいましょう生まれ変わるまで   かろん

伝言に気づかぬふりして削除キー   うらら

理科室のフラスコ滾り麦青む   ゆみ

何もかもこの春風に舞はしめよ   アリス

夜風立ち万朶の花を眠らせず   珠実

不似合ひな風船逃がす月曜日   ひとみ

ビル風に狼狽へる新社員かな   きなこ

なりたくてなった受付春愁い   いとさん

いつしかにマルサのをんな花は葉に   ピアドール

人間が嫌ひで花種蒔いてをり   彩

凛と化粧ひて春眠の顔匿す   ピアドール

なあお前そろそろ飯に目借時   雛

きなこです未だ花見に誘はれず   きなこ

妙齢の音響かせて春の滝   ピアドール

なんとなく学校へ行く春休み   珠実

水草生ふ廃船底の心地よさ   もとこ

さよならは雨傘少し上げるだけ   珠実

をんなの子飼へない仔猫抱きに来る   みみ

ルーレット廻すごと行く春日傘   雛

幸薄く逝きし棺へ花衣   はなんな

もう一度壊れてみたし夜は朧   きなこ

ろくでなし花粉症の泪じゃない   いとさん

分け入りて山吹一枝(いっし)採り来たる   みなこ

ルイ・ヴィトン贋物なれど麗かに   彩

庭の春 赤白黄色きれいだな   うらら

撫でてやることしかできず捨仔猫   ピアドール

これからもひとりの暮し種を蒔く   綾乃

くるきつと来るダービーの馬券買ふ   ふらこ

ふわふわと風船逃げて遊園地   ひとみ

近道は迷ひ道卯の花腐し   ふらこ

夏立ちぬ木椅子を一つ持ち出せば   ピアドール

薔薇の香ややわやわと人傷つけて   かろん

夏来る二の腕たぷとうちの猫   バンブー

この仔猫どこの仔猫か捨仔猫か   ひとみ

悲しくて摘むクローバーきりもなし   はなんな

知り過ぎしあなたのことを合歓の花   ふらこ

撫子や風に吹かるる身体ごと   バンブー

飛び立てる風を探して天道虫   雛

芍薬や夫の浮気に知らん振り   さら

理科系のをのこ寡黙や若葉光   みみ

現し世にたれかを思ふ卯波かな   バンブー

何もない何もない夜の短さ   ピアドール

島人に鉄条網や南風吹く   珠実

黒砂糖口に溶かして仏桑花(ぶっそうげ)   はなんな

玄関に見慣れぬ靴や薔薇の花   バンブー

凛と装ひて密かに汗かいて   ピアドール

点滴の落ちるを数ふ冷夏かな   さら

何度でも好きと聞かせて女郎蜘蛛   雛

ものの音のざわと色めく青嵐   バンブー

しらじらと男の寝言明易き   舞

きっかけはエイプリルフールのあの言葉   はなんな

バナナ食ぶ父に遥かなる戦争   ひとみ

うんと一言麦秋のプロポーズ   バンブー

なんとなく夏めいてゐるお臍かな   ピアドール

夏蜜柑憎めぬ危険分子かな   バンブー

菜ばかりが並ぶ朝市麦わら帽   雛 

よそゆきの声で迎へる花茨   バンブー

駱駝駱駝一列に行く影涼し   ひとみ

波音に緩急のあり夜の短か   珠実

噛み砕くほどに愛しき薔薇の雨   バンブー

目からうろこ息子の裸見てしまふ   圭子

風鈴の蘇へりくる風呂あがり   もとこ

リヒテンシュタイン壁紙の風薫る   バンブー

累々として大汗のサポーター   珠実

ああ言へばこう言ふ香水強くして   みみ

天花粉まみれに逃げてゆく赤児   珠実

しあわせに気づかずにゐる七変化   バンブー

芸術の道なき道や風薫る   さら

累代の墓々濡らし雨蛙   雛

涙腺のゆるぶドラマよ明易き   ほうずき

貴船からでんでん虫を連れて来し   倫子

白日傘波しづかなる埠頭かな   バンブー

生意気な女で結構髪洗ふ   はなんな

深入りの予感蛍の大乱舞   倫子

るの字とるの字でで虫の親子かな   みみ

遅まきながら姑(しゅうとめ)の更衣   ひとみ

会釈のみゆるり交はして薔薇心地   バンブー

ちまちまと毛虫の如き上司かな   ピアドール

鳴くな鳴くなこの薄給に油蝉   ほうずき

みんみんの早や鳴き始む給料日   ピアドール

無粋なる話はやめてビール注ぐ   もとこ

愚痴ばかり言ふ夫の酒梅雨最中   ひとみ

夏草や飛び石隠し夢隠し   もとこ

新月が七夕の空きらめかす   うらら

林檎怒る錆び色をして食卓に   はなんな

日日草わかつていても不摂生   バンブー

理想通り働き蟻になり果てぬ   ひとみ

なるやうにしかならぬなり汗かいても   ピアドール

もうあとへ戻れぬ道やのうぜん花   バンブー

かき氷食べて始まる偏頭痛   ピアドール

海の家ラーメン啜る父と子と   もとこ

籐椅子に何もせぬ日や夫の留守   ひとみ

涼しさや何も買はずに素通りし   ピアドール

死んだふりするゴキブリや猫の皿   choro

ランダムに選曲したる蝉時雨   バンブー

レース手袋して帝國ホテルへと   ピアドール

とんぼうの群れ飛ぶ心定まらず   choro

隧道を嗚呼嗚呼とゆく子供たち   珠実

瑠璃光る切子に杯を重ねをり   バンブー

リハビリの夫に寄り添ふ白日傘   choro

葛の蔓二重螺旋の旅に出づ   choro

遠花火手酌の酒のほろ苦し   choro

白樺の林に消ゆる夏の蝶   バンブー

立秋や厨の音も澄みてゆく   もとこ

草刈りのモーター唸る昼餉時   choro

なにごとも胸におさめて百日草   choro

嘘すこし推敲をして恋をして   ほうずき

Tシャツの吾娘の残り香こそばゆし   choro

しんがりを見たことのない蟻の列   雛

閉ざされし市民ホールの月見草   choro

一本の日傘にふたり茶店出づ   choro

てんてんと続く足跡晩夏光   バンブー

海鳴りに向かひて童謡口ずさみ   choro

見比べて叩いて持って買う西瓜   ほうずき

殻剥きし赤海老の卵(らん)琥珀色   choro

ロック聞きジャズを聞きつつ夏惜しむ   バンブー

人格は草臥れ易し熱帯夜   ふらこ

やれやれとかなかなの鳴く帰郷かな   バンブー

なんとなく月に見られているような   ほうずき

目配せをして別るるや酔芙蓉   バンブー

うたた寝や遠く聞こゆる踊太鼓   choro

これからは秋と決めたるルージュかな   ピアドール

地震(なゐ)見舞ふメール送りぬ星降る夜   choro

夜の秋の音ひびかせて厨下駄   バンブー

対岸にひるな咲きゐて回り道   choro

絹雲や旅の終りの宿の上   もとこ

ゴシックの文字黒々と花野かな   バンブー

紅芙蓉窓辺まぶしくひとと逢ふ   もとこ

ふくよかな菩薩の笑みや桐一葉   choro

半身は湯につかりをりちちろの夜   バンブー

葦笛を寝転んで聴く星月夜   雪

林檎剥く赤き螺旋のフラフープ   choro

プラハまで鳩笛届け届けよと   バンブー

心太作りし祖父や自在鉤   choro

鍋底を焦がして想ふ母の味   choro

じっとして虫の声聴く検査後   雪

常夏の海越えブーゲンビリア来ぬ   choro

抜いて来し赤きポルシェや草の花   バンブー

地震(なゐ)の地の友も満月見しと言ふ   choro

ゲレンデを尾花覆へり雪のごと   choro

てにをはを間違えてゐる星降る夜   バンブー

酔うて寝てしまふをとこや夜の長し   珠実

秋蝉や浜の松みな捩れゐて   choro

天高く旅ごしらえを始めたり   雪

履歴書の嘘のあたりを残る蝿   珠実

縁かと月見てをりぬ山の宿   バンブー

うろこ雲文庫本読む男あり   choro

理解を越えるこの背高泡立ち草   バンブー

待たされることに慣れっこ草は実に   倫子

前略のまま焼き芋を頬張りぬ   choro

抜き手きる男だらけのプールにて   ピドール

撫子や夕日に透けるたなごころ   バンブー

ランボーを読みたくなりし秋の雲   彩

紅葉にはまだき木立や早瀬の音(ね)   choro

いぬ蓼や田を吹き渡る風優し   雪

悔い矛盾後ろめたさの介護たり   choro

竜胆や馴染みの地図を取り出して   雪

リヤカーを引いてみたしよ烏瓜   バンブー

涼夜なり裸のマヤを懐かしみ   choro

利口にも馬鹿にもなれず秋刀魚焼く   おしん

天高し声張り上げる弁論部   バンブー

茶室今日あけはなたれて白い秋   珠実

桐一葉産声高く響きけり   choro

モンゴルの押し葉ほのかな草いきれ   choro

レモン水静止画像の中にかな   バンブー

胃の腑までちぢむ辛さや夏大根(なつだいこ)   choro

木の実落つ花咲か爺のあらはれて   バンブー

低音のアンダースンや川は秋   choro

均衡のひとつくづるる葡萄かな   バンブー

竜胆の藍極まりて風の原   choro

ラムネ飲む過去が浮かんで消ゆるごと   ふらこ

花野へと着地してゆくリフトかな   バンブー

杭打ちの音響きけり後の月   バンブー

わさわさと月見てをりぬねこじゃらし   バンブー

霧深き夜のサイレン港町   かろん

荷札には宛名だけなり秋の風   バンブー

税金を納め終へたり蕎麦の花   choro

きらりきらリあなたの不実を映す窓   さよこ

草もみじあの頃のこと今日のこと   バンブー

とうがんの土間にころがる結願寺   倫子

地渋吹き寄せられてあり枯蓮田   珠実

輪の中に小鳥来る来るフォークダンス   バンブー

ルンバ踊りて月光を手中にす   バンブー

凛々と月光は降る我が爪に   こむ

にきび面少年二十世紀剥く   choro

栗剥いて爪の形は父似かな   バンブー

身の欲も程よく抜けて秋の風   さよこ

月光のソナタたゆたふ湖水かな   バンブー

なかなかに口固きひと夜の長し   はなんな

リズム取る人の足元風涼し   さよこ

椎の実の肩たたかれし日暮れかな   バンブー

泣き合へる友ゐて朝(あした)さやけしや   choro

やさしさを嘘と知りつつ月の道   さよこ

ゴリラの目はるかをのぞむ菊日和   バンブー

とんぼうとリュックサックが土手をゆく   バンブー

栗御飯ふっくらと炊け日曜日   かろん

暫くは遊んでいたい秋の蝶   さよこ

理科室に出入りしてゐる秋の蝿   バンブー

連弾や秋の夕日の横射しに   珠実

ニンフの絵彫られし箱に種子しまふ   choro

舟霊の銭の錆びつく望の潮   珠実

武勇伝聞かされてをりちちろの夜   るい

全快の膳にひとしな菊膾   choro

西瓜割る等分といふ清しさに   バンブー

煮凝りやあなたは笑顔取り戻す   さよこ

月の中徴税人の顔ありて   choro

てすさびの鶴飛び立たむ秋の暮   バンブー

野分晴ひつくり返す日の光り   バンブー

二階席よりチェ・ジウに逢ひぬ秋の昼   バンブー

ルパシカをまとへば芋も芸術家   choro

とんぼ湧いて高原の昼人もなし   こむ

草の絮記念日ばかり増ゆるかな   バンブー

草もみぢ付けて散歩の犬帰る   リバー

 

※「秀句選」は随時、更新してゆきます。

 最終更新日・平成17年10月2日

俳句 田畑益弘俳句の宇宙HOME   をんなのしりとり俳句