【俳句】田畑益弘俳句の宇宙

をんなのしりとり俳句 新秀句選
平成24年12月〜

田畑益弘選

 

瑠璃色の雪後の天と日本海   奈津美

恋人がけふも瞬く冬銀河   奈津美

とろとろと睡魔寄り来るお正月   阿紀

酔ひどれを炬燵の隅に捨て置きぬ   珠実

奈良町の七種粥をなぁあんた   珠実

ただいまと冬の金魚に声かけて   阿紀

テーブルに今年の埃うっすらと   珠実

冬眠の夢を覚ましてベルの鳴り   麻里

離縁状己が名前を書きよどむ   珠実

むつつりと寒の鏡を見てをりぬ   麻里

ぬばたまの蔵の闇にも淑気かな   奈津美

涙拭く人差し指よ寒茜   阿紀

遠き日の別れも雪が降っていた   倫子

旅人として東京の雪に遭ふ   珠実

深酒はよせと高倉健が言ふ   阿紀

踏んで脱ぐ姉のお古のスキーウェア   珠実

あらたまの閨にて夫婦喧嘩かな   麻里

名草枯る何をいまさら結婚など   倫子

ドアマンのぴかぴかの靴日脚伸ぶ   珠実

ぶぶ漬けはいかがどすかと京をんな   阿紀

菜花漬けて老いゆくことも悪くなし   珠実

しんしんと雪の匂へる銀閣寺   麻里

厄落し夫を落してしまひたく   麻里

悔い少し未練が少し置炬燵   倫子

ツイッターフェイスブックも乗り遅れ   阿紀

霊名で呼ばれて灰の水曜日   珠実

ビル街に夜の音冴えてハイヒール   葉子

水仙のやうにはゆかぬ化粧かな   麻里

鍋焼や周りおっちゃんばかりなり   葉子

リンスインシャンプー下げて着ぶくれて   珠実

手をつなぐ時期は短し卒業期   阿紀

切干や夫に作りしわけでなく   麻里

暗がりに含み笑いの女雛の目   倫子

目貼して海遠ざけて能登に生く   葉子

葛湯溶く子らに思いをはせながら   阿紀

ライオンの檻はからっぽ風花す   珠実

住み古りし柱に刺さる冬の日矢   倫子

薬缶しゅんしゅん夜勤の手擦り合わす   阿紀

スヌードや頬杖で観る蓮の骨   珠実

眠りゐる山に抱かれ誕生日   葉子

美術史にピカソの女冬の星   珠実

褞袍着てゐて恋の歌うたふのか   倫子

手袋の片手ばかりが残る春   阿紀

逃水を追ふのをやめて郷に生く   葉子

草おぼろ昔戦のありし野辺   阿紀

べた凪や橋でつながる島と陸   珠実

鳥交む大きな古墳ありにけり   麻里

ものの芽や初恋の人おもひだし   奈津美

しあはせか皆兄弟の蝌蚪の国   麻里

二月やアッサムティを熱く濃く   倫子

口ずさむ昭和の唄や麦青む   阿紀

麦青む地球が丸く見える丘   珠実

かんじきも履き慣れ能登のをんなです   葉子

しもじもに生れておでん酒楽し   可愛い奥様

新聞を隅まで読めり太郎月   珠実

風船を逃がしてやりぬ月曜日   奈津美

美容師と鏡の中でする会話   阿紀

若布干す十指てんでん動かして   珠実

てふてふを夢うつつ見てまどろみぬ   麻里

ぬばたまの夢に君見る雪籠り   葉子

林間に夫と子と犬日脚伸ぶ   可愛い奥様

武勇伝また聞かさるる春暖炉   珠実

炉塞ぐか否か迷ひて二三日   葉子

地下鉄の闇より着いて闇へ消ゆ   阿紀

湯上りを春の匂ひと思ひしよ   珠実

霾晦家中の靴磨き上げ   倫子

手帳には書かぬ約束春の雪   阿紀

如月のきれいな飴を子にもらふ   可愛い奥様

ふらここに腰掛けて子の手紙読む   麻里

武者震ひして答辞述ぶ六歳児   珠実

じゃんけんで負けても泣いて勝つ妹   阿紀

ルンペンが増えしデフレの春の闇   可愛い奥様

ミスミセスミズうやむやな花粉症   倫子

嘘つきがまた嘘をつく春の夢   阿紀

しげしげと吾を見る仔猫を拾ふ   葉子

ふたりして街の朧になりましょか   倫子

からころからころ宿下駄の大きすぎ   阿紀

銀縷梅バックパッカー二人連れ   珠実

暦日を忘れし母や児の如く   葉子

草の芽にかがめば草のこゑ聞こゆ   麻里

マヌキュアを乾かす右手春の宵   阿紀

ライオンの後ろ姿の隙だらけ   阿紀

啓蟄や指輪はづせば指かろく   麻里

クレソンの篭をしたたる春の水   珠実

ずくがないずくがないとて春厭う   倫子

うぐひすの初音は江戸家小猫かな   妙

暇なんですメールください春の宵   妙

鳥雲に更地となりし生家跡   阿紀

とこしへに父を探して青き踏む   妙

むむむむむ虫穴を出て虫語かな   ゆみ

なんとなく春の愁ひの乳首です   妙

すし飯の香り立ちたる春の日に   柚季

庭箒新しくして春の夕   柚季

浮かれ猫三日三晩をうろついて   阿紀

照り鷽の雨鷽を呼ぶ佳き日かな   珠実

菜の花は嫌ひしあはせになり損ね   雪

眠るため開く聖書や万愚節   阿紀

つらつらと山鳩鳴くや蕨餅   澪

チューリップ キスをするなら今のうち   妙

ちりめんじやこ母のおむすび思ひ出す   可愛い奥様

すつぴんのままで過ごしぬ春愁ひ   麻里

百千鳥ともに老いても姉妹   阿紀

鳥の恋声美しくきそひあふ   麻里

ふわふわと回転木馬春の風   可愛い奥様

ゼリー揺れ新入生の昼休み   珠実

みな見てるフリスビー犬たんぽぽ野   澪

野遊びの犬より先に疲れたり   妙

林立するビルのあはひの朧月   麻里

きのふより晴れゐて深き春愁ひ   葉子

一鳴きのあとの静けさ春の鳥   柚季

りんごの花一つ待ち侘ぶみちのくは   雪

春深き耳たぶコロンしつかりと   可愛い奥様

東京の人の早口水温む   阿紀

レンズ豆スープにも飽き春暑し   珠実

春光や地下鉄までの二千二歩   柚季

空しさよ花の盛りの二七日   阿紀

わがままを堪(こら)へてばかり雪の果   葉子

天道虫だましだます気無いけれど   澪

レガッタの男の腕に惚れてます   妙

すみれ野や屈めばそこに少女の日   倫子

漆黒の和泉山脈春北斗   澪

遠き道歩む子居りて杏咲く   柚季

車座の真中に仔猫花筵   珠実

路地深く仔猫生まるる真昼かな   珠実

菜の花も司馬遼太郎も嫌ひ   妙

雲雀野にひばりは見えず声ばかり   麻里

柳絮飛ぶそこより先は日本海   葉子

犬ふぐり団地の隅に椅子並べ   澪

紅おしろいいつやめようか花に雨   阿紀

名椿の空へ空へと自由なり   柚季

リラ咲いてけふはあの子の誕生日   阿紀

病弱な母でありしが春田打   雪

地図読めぬ女の迷ふ弥生山   倫子

俎板の干されし塀に春嵐   澪

下萌えて能登半島のかぐはしき   葉子

北窓を開くやこころより先に   雪

憎らしいあんたが好きよ二輪草   阿紀

嘘に嘘重ねても嘘田螺鳴く   珠実

連衆のひとりは尼僧花の句座   珠実

目貼剥ぐ身ぬちに響く日本海   葉子

いい加減にしてと鏡に言ふ春愁   麻里

嘘とすぐわかる嘘聞き春の闇   澪

陵を住み処としたる告天子   倫子

白波の卯波となりて岬浜   阿紀

日曜の犬のあくびやチューリップ   阿紀

poor poorと金魚のやうに息をして   妙

天才の雲を見てゐる啄木忌   麻里

菊植ゑて仏の母にものを言ふ   雪

ふるさとはつばくろ飛んでいる頃か   可愛い奥様

かなしみを吹き込みました石鹸玉   妙

豆の飯炊きて家中匂はする   澪

深爪の一夜の痛み夏兆す   阿紀

豆の花ことしも咲かせ大家族   可愛い奥様

草を摘む目にも爪にも汁(つゆ)の染む   柚季

振り返る雉に呼ばれし心地して   珠実

てふてふと書き祖母(おほはは)を思ひ出す   葉子

姿見に亡母の来てゐる暮春かな   珠実

なほ残る亡母の香りの単衣出す   澪

巣箱あり我に六畳一間あり   倫子

流木に浜昼顔の淡き色   阿紀

老木に今生の花匂ひたつ   珠実

喜寿の春子の行く末も少し見へ   柚季

へつらはぬ女のこころ髪を断つ   葉子

次の間に次の男よ次の夏   亜紀

土筆野にかんかん帽を忘れ来し   珠実

しのび逢ふ春の驟雨の海女の小屋   倫子

山猿の哀しき声や春の昼   柚季

ルカ伝を読みゐて青き春の山   澪

まじまじと嬰児に見られサングラス   阿紀

陣取って代田にかがむ鷺の影   柚季

金魚買ふさみしい人で居たいから   倫子

追伸に五月の雪を嘆くかな   珠実

茄子の紺もんぺの紺をおもひだす   葉子

すらすらと祖父の毛筆すゞしかり   麻里

しがらみを見たくなき日のサングラス   雪

涼しさや浜より富士を仰ぎ見て   珠実

てんでんに旅の荷を置き蕨摘む   阿紀

村々は柿若葉また椎若葉   澪

バリウムのヨーグルト味走り梅雨   阿紀

立夏かな少し不良になる息子   可愛い奥様

これからは夏くちぐせを変へませう   妙

鶯や相槌もまた会話にて   珠実

てのひらの陰が好きなるてんとむし   倫子

しあわせはこれからのはずクローバー   阿紀

あかときのぼうたん白しただ白し   澪

リーダーがどこかに失せしお花畑   可愛い奥様

竹の子を煮て吾子おもふ時間かな   麻里

茄子の花ひつそりと母ひとり生く   葉子

悔しくてかつ懐かしき試験かな   麻里

真剣な恋知らずまた水着買ふ   妙

節高の祖母似の指や蕗を刈る   柚季

ルッコラの伸び放題や妻の留守   阿紀

集落のはずれに猫と住みつづけ   阿紀

憲法も古びてきたり花槿   倫子

にこにこと老いてゆきたし山桜桃   阿紀

肉体を容れものとして滝修行   珠実

羅に似合ふわたしの薄い胸   葉子

熱帯魚飼ってひとりを楽しとも   倫子

藻の花に恋をしてゐるどぜうかな   可愛い奥様

夏の星わたしの股間直撃す   妙

水彩の教室満たす薔薇のかほり   きのこ

緑陰やひそやかに出すコンパクト   珠実

素袷を着て来客にかかわらず   倫子

昵懇の猫が先客竹床几   珠実

ギヤマンの壺に溢れしむ海芋   澪

待たされて風に転がる夏帽子   阿紀

白地着て金の無心に行くところ   倫子

今日よりは一人の卓や豆の飯   阿紀

しらじらと夫の寝てゐて明易し   麻里

全自動洗濯乾燥機大昼寝   可愛い奥様

ねねの道てふてふの影あはあはと   夢

東海道夏草を分け一里塚   阿紀

缶ビール新幹線の窓に富士   可愛い奥様

爺ちゃんの好きないか飯夏の月   澪

きっと来るやっぱり来ない金魚玉   倫子

万華鏡また覗いてる夏休み   阿紀

巫女が掃く夏の落葉と蝶の死と   珠実

陶板に世界地図描く夏の旅   柚季

ビヤガーデン東京に星いくつある   麻里

ルーペにて読む歳時記や火取虫   綾乃

生まれ児に名前まだ無し柏餅   珠実

茅刈るジープ来ている利根川に   倫子

ワンワンをまず覚えたり桜の実   阿紀

水無月のスーパームーン礼拝す   珠実

涼しかり朝の窓辺に主の祈り   澪

天の青巨大布袋の夏景色   柚季

臆病な仔犬の右手蟻に触れ   阿紀

恋々と銀座に住まふ柳かな   可愛い奥様

なほざりにせぬ戸締りや熱帯夜   葉子

やつれたり四十九日の七変化   雪

七月の支那の夜市や香り混む   柚季

噎せかえる台北の夜の屋台かな   倫子

泣いて見せ笑って見せて裸の子   珠実

仏桑花ダンサーの貌となるために   珠実

虹消えるまで恋人でいましょうか   阿紀

帰したくないと膨らむ夏怒涛   倫子

盂蘭盆会はらから似たる指を持ち   阿紀

散らかしてリビング狭き夏休み   珠実

みつ豆やうまいかと聞く男ども   澪

もてあます到来物の大なすび   倫子

団欒の卓に忘れし秋扇   阿紀

とっぷりと裏口暮れて虫の秋   雪

嫌ひでも好きでもなくて乗るボート   妙

灯火親しむにはうるさき亭主かな   麻里

いつまでも猫の抜け毛の残暑かな   可愛い奥様

南無圭子昭和も遠くなりにしよ   珠実

流れ星をとこはすぐに死にたがる   miyako

ルッコラのパスタそよがせ秋の風   澪

税率に納得行かぬ 昼の月   珠実

金曜の夜更かし癖や風は秋   阿紀

ぬくめ酒亡き父のことおもはれて   雪

天空の棚田麦わら帽ひとつ   倫子

月を待つ夫を待つより気楽なり   可愛い奥様

隣家よりやゝの泣き声月まどか   阿紀

デキャンタにひらくといへど女郎花   倫子

しばらくは夫を遠ざけ夜の長き   麻里

梨剥いて退院の後の話など   阿紀

りんりりんりと鈴虫が不倫に鳴く   miyako

くしゃくしゃに咲いてほどけぬ曼珠沙華   珠実

月明や京の小路を駆け抜けて   阿紀

運動会知らない国の旗ばかり   可愛い奥様

リリアンを替りばんこに姉妹   阿紀

すり足で畳の上の風を踏む   珠実

無人駅出て名月の道を行く   阿紀

明月は砂子を海へ撒き散らす   キャリコ

すっぴんで歩く湯の町初紅葉   阿紀

欝の字の筆順をふと葛嵐   珠実

鹿鳴くやゆめかうつつか隠れ宿   キャリコ

むせかえるほどの木犀嫁ぐ君   キャリコ

人間に生まれて生きて菊枕   阿紀

ラッコとは水に棲む犬冬うらら   妙

来世また女に生まれ毛糸編む   雪

虚しきひと冬の日向にゐるほかなく   妙

草の実や原爆ドーム見えてゐて   miyako

手の中で消えゆく命かへり花   キャリコ

悩むかな秋灯のもと我も蛾も   miyako

持ち替へし夜寒の湯呑茶碗かな   珠実

傘がない濡れて行こうかやめようか   阿紀

ときどきは死後を想へり置炬燵   珠実

軟膏は母のお譲り皹の指   阿紀

美少女の今は昔よ菜を洗ふ   珠実

スキャットのジングルベルや落葉掃   倫子

酢なまこを挟み兼ねたる利休箸   倫子

しりとりに尽きぬ言の葉冬うらら   阿紀

らしからぬ手紙など書く霜の夜は   珠実

触れし手の冷たさ別れ言い出せず   倫子

ずわい蟹ベーリング海のにほひして   miyako

年忘れ忘れ得ぬ人おもはれて   綾乃

手のひらに黒子が二つ十二月   阿紀

尹さんと爆弾酒飲む年忘れ   miyako

煉炭の穴を数へて無聊かな   麻里

やつがしらこっくり煮えて母の味   阿紀

慈善鍋異国のコイン混じりおり   キャリコ

リスキーな恋こそよけれクリスマス   倫子

煤逃げの猫さがす声夕まぐれ   キャリコ

山茶花の咲いて二人に戻る家   阿紀

エントランスに餅つきのにぎやかし   珠実

出払つている極月の駐在所   珠実

良きことを数えてをりぬ年の暮   阿紀

レシートに膨らむ財布年の市   珠実

ラガーらに獣のごとき匂ひして   妙

手袋の行方しれずはや三日   キャリコ

天窓をのぞく鬼か節分の夜   キャリコ

杭出しのひとつひとつの冬鴎   珠実

羊羹がすきです御婆ちゃん子だから   雪

裸木とは木の最も美しいかたち   妙

近くなる遠くなる春あなたのやう   紗枝

とまどひつ出て行く春の雪の中   珠実

懐紙もていただく雛の花あられ   珠実

黎明の色と思へりすみれ草   阿紀

噂では離婚したとか鳥雲に   麻里

肉じゃがが好きなあなたを待つ春夜   雪

闇まぎれ恋猫ひそと戻りけり   キャリコ

理髪屋の窓辺の猫と桜草   倫子

天窓を塞ぐ独居の春の雷   阿紀

いかのぼり見えるとこまで下りて来よ   倫子

よよと泣く浄瑠璃の袖濃紫   阿紀

起立礼上手にできて卒園す   珠実

ビラ配る春のマスクの哀しい眼   倫子

目刺焼いて父のやうに酒を酌む   雪

麦青む我慢できないわが身あり   紗枝

理屈ではなくて体感蛇出づる   妙

舐めて貼る二円切手も春憂ひ   珠実

ひらひらと落花は蝶になりにけり   妙

理屈などないから春の愁ひと云ふ   奈津美

柳絮舞ふ女子学生は饒舌で   阿紀

泥眼のしずかに置かれ花の宮   珠実

山笑ふ遅れて来たる路線バス   阿紀

すみれ野やあまた眠れる石仏   珠実

魔女になれそうな気がする春の燭   珠実

伊達締めの固き結び目春の宵   阿紀

一年生母を遠くに泣いてをり   綾乃

理科室に蝶が来て骸骨に止まる   妙

日永なる繋ぎたる手を離したく   可愛い奥様

渦潮のゆるみ始めし夕まぐれ   阿紀

昨日まであったはずです備忘録   阿紀

草青むリキといふ名の迷子犬   珠実

濡れてゐる春のゆふべの連子窓   麻里

ずる休みして裏山に蓬摘む   倫子

綾織部抹茶茶碗や春惜しむ   珠実

麦青む自分につくる塩むすび   雪

ビートルズが山にこだます春スキー   倫子

倫理・社会は苦手だったな蝶の昼   奈津美

留守宅のドアに筍かけておく   キャリコ

草若し猫の名前を決めかねて   珠実

てふてふと書けば力がぬけてゆく   麻里

地図広げ家籠りなり菜種梅雨   倫子

えこ贔屓して黒牡丹愛でてます   雪

すらすらと英語読む子や花は葉に   麻里

虹色の羽を拾へり弥生山   珠実

待ちぼうけライラック咲く時計台   キャリコ

仕事なき身となる夫の端居かな   綾乃

仲たがいして三日目の五目寿司   阿紀

白南風や顔あげてみる佐多岬   珠実

気晴らしの旅も五日を過ぎました   阿紀

丹頂を夢に見てうつつには知らず   麻里

ずる休みしても治らぬ春愁ひ   紗枝

昼酒や日の翳りたる滝見茶屋   珠実

山小屋は草の匂いよ遠郭公   阿紀

浮いてこい宝の地図はほんものか   キャリコ

肝心の人は来なくて貴船川床   紗枝

会社から富士は見えねど春の空   妙

ラジオより正午の時報青嵐   阿紀

しらじらと昨夜が終る蚊遣香   綾乃

留守電の不穏なランプ麦嵐   キャリコ

幸せと思ふ日もあり金魚鉢   阿紀

ちちははの微笑んでゐる日日草   雪

留守番を犬に任せて日永かな   可愛い奥様

長雨にただひたすらに梅を煮る   キャリコ

虹かかり見知らぬものの縁結ぶ   キャリコ

ぶをとこを見直しにけり夏祭   可愛い奥様

くるくると日傘廻して夫恋し   紗枝

蝦蛄ばかりつまむ男や祭あと   倫子

スマホなど友達にして熱帯夜   紗枝

夜食などいらないKitKat食ふ   麻里

憎からず繋ぎたる手の君の汗   雪

せせらぎに秋の来てゐる去来の忌   妙

きりぎりすになるわ蟻になるよりも   simon

もう少し涼しくなれば逢つてあげる   妙

ビル街に渇きしこころ夏落葉   simon

ずる休みして草笛を吹く子かな   麻里

なぜひまわりはみなわたしをみてるの   倫子

飲めばまた戦のはなし十三夜   紗枝

みんみんに合せてうたふ島唄よ   エミ

夜蝉鳴く置いてゆかれし哀しみに   倫子

にやにやと笑ふゴキブリ原爆忌   可愛い奥様

鹿の声夜のしじまを破りけり   キャリコ

留守といふあなたの返事秋の風   雪

禅寺になんにもなくて秋の風   妙

理屈より人情が好きおでん酒   紗枝

たよりない男に惚れておでん酒   紗枝

しつかりと独り身なりぬ冬の月   妙

キッチンの音が加速の冬籠   わかな

凛々しさの吾子だれに似し寒稽古   麻里

コスプレの人すれ違う聖夜かな   キャリコ

海だけを見ているひとと初詣   ルカ

でも好きだ年賀状くれないアイツ   雪

ルルルルと一度きり鳴り冬深む   圭子

室咲きの水やわらかくやりにけり   ルカ

リクエストされし手料理寒の卓   ひで

理科室のドアの向こうの枯野かな   ルカ

七草粥夫にやさしくなれさうで   麻里

出前寿司にて女正月とせり   圭子

猟犬の目の少女ゆくニューヨーク   ルカ

くずれた雪だるまは泣きだしそうに   キャリコ

コンサート会場行きの初電車   ルカ

読み切れぬ本の洪水春の夢   ルカ

メレンゲのやうな雪積む二月かな   雪

羊羹を薄く切り分け春の雨   ルカ

手鏡の中の他人やヒヤシンス   ルカ

スイートピー他人行儀の姉妹かな   ルカ

雛あられ色のこぼれておりにけり   ルカ

林檎咲くアルペンホルンに誘われて   キャリコ

白梅や絵馬に貼られし保護シール   キャリコ

ルート2の数字の羅列冴え返る   ルカ

レコードの針の沈みし春夕べ   ルカ

椿落つ海へと誘うかのように   キャリコ

にんげんの影の重なる震災忌   ルカ

きらめきをときめきにして春の海   ルカ

水温む十年ぶりの葉書かな   ルカ

椅子ひとつ空けておくなり春の夢   ルカ

手を振れば桜も海に散りにけり   雪

松の芯うどん屋かつて武家屋敷   はなたん

瑠璃色の空るりいろの春愁ひ   妙

瑠璃色の風一直線はかわせみ   キャリコ

郁子の花ここより高野裏参道   はなたん

うさぎの餌やり当番昭和の日   はなたん

輪切りのレモンとりあえず酢橘のかわり   はなたん

利休なら一期一会の田植えする   徹子

理屈ではなくて別れし沙羅の花   紗枝

梅雨籠ピースの足らぬパズルかな   キャリコ

無愛想なおやじ器用に泥鰌割く   群すずめ

黒船を丘でのぞみし夏薊   徹子

見えざる手ゆっくり動く夏の月   珠実

目印の棒浮走る夜釣りかな   珠実

なぜにか闘志朝から蝉の声   むめこ

縁日の財布は軽し秋の暮   徹子

めはじきや実家みえぬか背を伸ばす   むめこ

隙間より月の光や三連符   群すずめ

釜山より届く便りや椿の実   紗枝

竜胆の原に暗雲垂れ込めり   群すずめ

トロッコ列車速度を落とす紅葉渓   花

ふつてわく縁談秋の日がまぶし   むめこ

べんがら格子昼を灯して秋の雨   むめこ

ぐつぐつとおでん煮えてるレジの横   キャリコ

きりきりと締めるお太鼓菊人形   むめこ

日記買ひゆつくり渡るアメリカ橋   妙

くさめして一つ年取る一葉忌   麻里

坑道に鍵を掛ければ山眠る   徹子

絵襖の虎に泣きたる幼なかな   紗枝

年用意孤りなれども今年また   綾乃

菜の花がもう咲いてゐる土佐郡   むめこ

絵蝋燭苞にいただく冬暖   むめこ

炉語りの主役の孫を生みました   ゆみ

蟒蛇のやうな女と年忘れ   むめこ

連絡も無く雪女戸をたたく   むめこ

父母のまぼろしを追ふ雁木市   群すずめ

嬉しかり初場所優勝琴奨菊   徹子

料峭や畑に人形棄ててあり   むめこ

リスボンのファドの調べや春の汐   群すずめ

盧遮那仏囀ずりに耳かたむけて   よひら

倖せはあつと言ふ間の夏芝居   藍

いつまでも男はこども水鉄砲   麻里

類想の句ばかり浮かぶ夏の風邪   藍

追悼の長き合掌猛暑くる   藍

ルミノール検査の画面夕立くる   むめこ

理系女子さつそうと行く白い靴   よひら

ビー玉をあまた沈めて金魚鉢   藍

メダカにも生存競争あるそうな   藍

夏の夜の祭典悲劇ニースにて   小耳

手庇に白い船見る青岬   むめこ

帰省して先づは五右衛門風呂に入り   麻里

臨海学校星がいつぱいあったこと   妙

父さんと見る夏の星肩車   藍

駅前のワシントン椰子祭待つ   藍

月涼し眉をはいたるやうな山   よひら

マーマレードドレッシングかけのトマト   藍

通りゃんせ帰りも楽し夕焼空   よひら

ランドセル姿も板に夏がくる   むめこ

教科書の赤の書き込み時鳥   藍

西瓜割いつもあいつの頭と思い   よひら

いきなりの君の告白大花火   藍

林檎むく朝の始まり蝉の声   むめこ

鉛筆を削ってばかり夏休み   藍

葭簀ごし洩れ来る声ぞ将棋指す   よひら

ウーロン茶よく冷えてゐて夏館   藍

誰が吹くか篠笛の音ぞ夜の秋   むめこ

ずつころ橋渡りて見たし月すずし   むめこ

しゃきっと結ぶ踊帯新町へ   よひら

絵手紙来梨でも買うて送ろうか   はなたん

肝心のひとこと聞けず夕端居   藍

今だから云う同期会青林檎   むめこ

ひりひりと日焼の跡とおもひでと   雪

蜻蛉生まれ父亡き棚田にぎやかに   奈津美

ニッキ水よく売れている夜店かな   むめこ

なんとなく一人で花火見たくなり   麻里

リカちゃんが裸のままの夏休み   奈津美

ミコちゃんの水着まるで裸なる   風子

つまようじ銜え出て来るアロハシャツ   藍

鶴亀の石の置物驟雨くる   むめこ

琉璃色の鰭ひらひらと熱帯魚   風子

夜は秋やどこからとなくいい匂い   藍

今は昔顔を見合わす鳳仙花   風子

かってマドンナ染み隠すサングラス   はなたん

さて犯人は夏の夜のサスペンス   風子

九九の声何と昼寝の寝言かな   はなたん

美男子に適ふ美女ゐてソーダ水   藍

いくら待ちてもこぬ便百日草   むめこ

海夕焼過ぎ去つてゆく何もかも   葉子

瓶に詰める想い出の品夕焼雲   風子

ヨベッサンは島の守り神蜻蛉とぶ   むめこ

ブーケ取る秋空高く手を挙げて   藍

海に向く不動明王つくつくし   藍

しかられて海を見ているちちろ鳴く   よひら

立秋や退院まぢかの空の雲   はなたん

木琴や秋を連れ来る音のして   風子

手風琴鳴る秋色の街の角   はなたん

瓶に詰めたる星の砂夏去りぬ   はなたん

梨を売る無人の店や海に向く   風子

草の実や久に訪ひたる父母の墓   藍

かすとりを辞書で調べる夜長かな   風子

イムジン河小鳥きている頃ならむ   風子

無意識に唇かむ癖や秋あざみ   はなたん

未練なぞないと強がり秋日傘   むめこ

爽やかや後ろ姿の割烹着   むめこ

臭木の実絶壁にたつ望遠鏡   風子

竜胆の咲いてリュックの停まりけり   藍

竜胆に夕べの風やつぼみそめ   むめこ

面倒なことは避けたい秋袷   藍

ちんちんと鉄瓶の鳴る白芙蓉   風子

喧噪を抜け山裾の豊の秋   藍

「ミミ」といふ猫の毛真白酔芙蓉   むめこ

後影残してゆきぬ秋遍路   風子

蔦の葉の枯れそむ紡績工場跡   風子

問はず語りつ秋の夜のふけてゆく   むめこ

連子格子倉敷河岸に小鳥来る   むめこ

瑠璃色のチロリで新酒なみなみと   風子

とうかぞふ間に帰ってよ酔芙蓉   よひら

茨の実いつもの時間いつもの子   風子

ずずずずと通の真似して走り蕎麦   よひら

白桔梗象牙の根付帯にゆれ   むめこ

連絡船舳先を回す秋夕焼   よひら

面倒なこと後回し栗おこわ   藍

和歌の浦色変えぬ松に波さわぐ   むめこ

決心はたちまち消えて鰯雲   はなたん

もしかして花野でキスしたあなたかしら   風子

ランドセル忘れているよ柿泥棒   藍

組み紐は京の土産よ秋袷   むめこ

世界一低い山とや小鳥来る   風子

塁審の余所見御法度秋の空   藍

ラジオ聞きながらやりをる松手入れ   風子

ランプの宿月をたよりに露天風呂   むめこ

笑顔咲く天高うして句碑の前   藍

自転車に空気花野に出かけんか   風子

魘される毎夜必ず蚯蚓鳴く   徹子

ランドセル花野のどこへ忘れたか   風子

モカにして午后の一服木の実落つ   風子

ためらいながらの告白秋の虹   藍

人選を誤ったかも茸狩   藍

なつめの実たわわ幼の日の記憶   むめこ

クラス会の幹事やつてよ枳穀の実   風子

うろこ雲練習中の逆上がり   風子

うろうろと野良犬がゆく芋あらし   風子

仕舞湯の灯を消す月の燦々と   むめこ

ときに俳人ときに良き父赤い羽根   風子

実むらさき蹲に水ゆたかなり   風子

林檎ジャム家事の間に聞く英会話   風子

綿菓子の赤き口中秋祭   藍

懐かしき訛紅葉の札所道   よひら

ちんたらと道草の子や草紅葉   むめこ

獅子舞の獅子帰りゆく稲田径   むめこ

ちいたかたった古い歌あり星月夜   むめこ

ぬり絵塗りをれば木の実の落つる音   よひら

ととさまの名は浄瑠璃に泣く秋ぞ   むめこ

存分に俳句三昧秋深む   風子

亡くなるは無くなることか秋深し   恵美

 

※「秀句選」は随時、更新してゆきます。

 最終更新日・平成28年10月22日

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