俳句 田畑益弘俳句の宇宙

田畑益弘 俳句 新作


1月

醒めてゐる顔の半分初明り

向ひ風立ち来る方を恵方とす

相識らぬ幾万人や初まうで

褒められて猫のよろこぶ年賀かな

老猫を褒めて去にける老礼者

ふりだしに戻れぬうつつ絵双六

哥留多取り帝の恋も叩かるる

ワインロゼ互(かたみ)に酌みぬ姫始

炬燵して脳の大部を使はざる

ラーメンを所望したるも三日かな

初東風の鐘にぶつかる知恩院

初松籟逆さ金閣さゆらぎぬ

沈黙に湯の沸き初むる淑気かな

花かつをふはりと香る淑気かな

初凪やどの貝殻も傷負へる

寒月に水の流れて音も無し

しろがねの月に見ごろの寒桜

寒の怒濤に雄ごころの巌かな

寒紅やをんなは守るもの多き

家猫のけだものくさき冬籠

冬の蜂捨て身の飛翔せんとして

追ひすがる如くに汽車や寒夕焼

痛いほど満目皓々たる氷湖

ものすべて凍れるものを我が心火

寒風や歩めば何か見失ふ

寒卵記憶の母がコツと割る

死ぬ人の深雪のやうな白毛布

仮病なるおのれの臭ふ毛布かな

初国旗魔法の如く街しづか

燦燦と腑に沁みわたる寒の水

風花にまぎるゝほどの小さき幸

木の葉髪手くらがりにてものを書く

水飲んで忘れんとする火事の夢

おでん酒おやぢも泣いておひらきに

寒泳のくちびる青く笑ひけり

たまゆらのからくれなゐの浮寝鳥

鷹は去れど心の中に鷹を飼ふ

愕然と五十路も半ば初鏡

玻璃ごしに切なき白の冬かもめ

陽射しにも年賀の余韻祇園さん

寒の暮魔とも神ともすれちがふ

フラミンゴ水に映えゐて春近し

人形の起こせば開く眼春隣り

待春の身をひるがへす近江鯉


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