俳句 田畑益弘俳句の宇宙

田畑益弘 俳句新作


6月

待てる間の白湯甘かりし御来光

雲海や鉄のかたまり飛ぶ不思議

お花畑置いてけぼりを喰らひける

人々の言葉貧しく大雪渓

雷雨来て熟睡むさぼる去勢猫

黒駒は草喰みやまず雲の峰

薫風や双眼鏡に馬奔り

若きらが地べたにへたる薄暑光

筍流し直指庵へは明日ゆくと

さ迷へる夜の蟻にも二つの眼

夥しき蟻を集めて死んでゐる

ソーダ水泡立つばかり無言の間

遠縁の喪にあり暫し端居して

水打つて石塀小路のとゝのひぬ

水打ちて抜かりなかりぬ先斗町

かはらけを投げて夏蝶翔たしめし

涼風のくゞりて来る二の鳥居

涼しさや紙垂(しで)揺れやまぬ二の鳥居

磐座(いわくら)へは行かず鶯老いを啼く

空梅雨か仰向いてをる陶(すえ)の亀

喪ひしものに膨らむ夏の海

死魚の眼のなほ瑞々し夏燈

シーツに拾ふ短夜の長き髪

白球の泥まみれなる夕焼かな

県警の出動したる梅雨の穴

心臓は悲壮の器官父の日よ

父の日や今更なにを今更に

歳とりて人醒めやすく蓮の花

たそかれよりかはたれさびし蛍籠

わらはべは疲れを知らず捕虫網

あぢさゐの藍のきはまる寝覚かな

亡き父の財布より出で蛇の衣

無辜の民無辜のくちなは搏ちにけり

しらしらと窓の明けつつ夏至の雨

壮年にして突然死兜虫

玉虫や形見も減りし桐箪笥

妻なきわれ夫なきひとやセルを被て

走馬燈来ると云ふひとけふも来ず

端居してビッグバンなどありしかと

緑蔭に入りポアンカレ予想など


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