田畑益弘俳句の宇宙 ロゴ

2018年9月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像9月

地球まろく葡萄一粒づつまろし

横浜の九月の沖を見て飽かず

見えてゐる一樹が遠し秋の蝉

日時計の影鋭角に帰燕かな

小栗栖に光秀の藪秋の蛇

コンピュータひとり働く星月夜

一粒の露の中なる太虚かな

あさつてに食べ頃になるラフランス

くもりのち小鳥来てゐる金閣寺

大陸の匂ひがしたり落花生

名にし負ふ蛇塚にして穴まどひ

水筒の番茶がうまし野菊晴

秋の夜の振子時計の振子音

秋雲や十で神童いまいづこ

とほき日のとほき秋雲見てゐたり

爽やかや死ねば原子になる話

さらばてふ男のことば秋燕

蓑虫の揺れゐて遠き昭和かな

父が炊き母に供ふる零余子飯

銀閣に銀箔あらず秋のこゑ

ひとつぶの栗の貫禄丹波かな

眉月の産寧坂の二階かな

うつくしき北嵯峨の雨新豆腐

祇王寺の庭より昏れて竹の春

竹春の門よりまゐる天龍寺

上野発芋煮会へとかへる人

をととひはすでに昔日秋の蝉

亡くなりて本名を知るすまふとり

草相撲痩せぎすの子が勝ちに勝ち

をんなよりをやま美し秋燈

まつすぐに逃げて猪撃たれけり

饂飩にもきつねとたぬき西鶴忌

露けしやひとり占ふトランプに

さやうなら空のまほらへ秋の蝶

水澄みて近江に富士のありにけり

木の家が木の音立つる夜半の秋

詩の話より死の話へと夜半の秋

風の名もかはりて鮎は落ちゆけり

放たれし囮のとまる囮籠

花道や背なで泣きをる負すまふ

うかうかと昏れかゝりたる茸山

番地には既に家なし猫じやらし

凶年をきれいな蝶の舞ふことよ

百年の生家の闇のつづれさせ

久闊の京の松茸づくしかな

稲の香やみちのくは青の国なる

コスモスは揺れてまぎるゝコスモスに

爽やかや死ねば原子になる話

まぼろしの竜よ麒麟よ天高き

声量のゆたかなる空鳥渡る

かの日より停まりし時計鳥渡る

実柘榴の見事裂けたる吉事かな

黒猫の眸の金色(こんじき)の無月かな

金銀の鯉のたゆたふ良夜かな

老犬が老人を曳く秋夕焼

 


BACK  俳句 田畑益弘俳句の宇宙