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2018年3月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像3月

三月の空を去るひと来たる人

遠浅の海とほあさの春の空

春宵の家路をいそぐ理由なし

春装のひと鏡より出でゆきし

寝ねがてに須磨之巻など夜半の春

春の夜を更かす源氏のものがたり

春の夜のすぐに泣くひと泣かしけり

蛇穴を出て松島の松のうへ

蟻穴を出て信長の草履の上

京雛や過ぎにし御世のうるはしく

赤き蟻黒き蟻出て交はらず

鉄棒は嫌ひのままに卒業す

鉛筆を噛む癖とともに進学す

春昼や生八ツ橋を焼く香り

三条に大橋小橋春しぐれ

うらうらと茶碗は買はで茶わん坂

酒見世の意外な混みや菜種梅雨

爺ぃより婆ぁが元気桃の花

かげろふや薄暮ゲームと云ひしころ

大濁りして春告げぬ最上川

恋をはり猫に猫撫で声もどる

あぶり餅炙る煙もうららなり

春風やたまさかに買ふ時刻表

のゝ宮に恋の絵馬ふゆ竹の秋

とことはの父母の留守春落葉

引鶴や別るゝために邂ひしとも

どこからを晩年といふ鳥雲に

春眠の空を游いでゐたりけり

かへりみて蜷の道にも似たること

母子草母逝きてより目につきぬ

虻が来る己が羽音の後ろより

春休み小鳥のやうに早起きし

ジャムを煮て学生妻の春休み

春休み風のなまへを蒐めけり

蝶一つたゞよふ千の無縁塚

喪の花と知る筈もなき胡蝶かな

てふてふや北緯三十八度線

蝶博士蝶を愛して娶らざる

濡れてゐる暗闇さくら咲きつつあり

北野より平野へ花をうかゞひに

あをあをと潮満ちくる初桜

飯を食ふかりそめの世に接木して

接木して人生のどの辺りなる

存分に歩きて春の夕焼かな

言霊の駆けぬけてゆくさくらかな

まれびとを待ち花冷の京都駅

花冷のつながつて出るティシューかな

あをあをと花冷の空ありにけり

老人の眼のすぐ潤む櫻かな

一力に停まるハイヤー花の雨

周恩来詩碑もしとゞに花の雨

タクシーを拾ふ女人や花しぐれ

待ち合すフラミンゴのまへ花衣

春分の泥濘んでゐる裏参道

桜鯛紀淡海峡晴れ極む

幕の内弁当に春闌けにけり

占ひにひらくてのひら星朧

朧夜の身に九穴のありにけり

天井に龍の眼のあるおぼろかな

花咲いて祇園の夜空燃え易し

ひとつぶの雫の中の花月夜

板前はむかし美男子花の宿

USBメモリにしまふ櫻かな

コンピュータ・ルームに癒えし花疲れ

かげろふへ皆消えてゆく一人づつ

柳絮とぶ民の広場に民溢れ

ユーラシアの風に吹かれて柳絮かな

来てみれば果して散れる山桜

たましひの遠出したがる花の雲

かたはらに死亡広告花だより

花人の中に亡き人ゐるやうで


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