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2017年12月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像12月

山眠るふつと活断層のこと

山眠りゐて石英は水晶に

三十六峰しめし合はせて眠るかな

休校の砂場に遊ぶ風邪の神

熊出でし山にも市制布かれあり

御破算で願ひましては街師走

密やかにこひびとと逢ふ年忘れ

底冷の底を奔りて蒼き川

底冷の紫がかり比叡昏るゝ

底冷の底にはんなり京ことば

みちのくの伏目のこけし冬深き

これやこの枝垂桜の枯木かな

手を浸けて海ぬくかりし水仙花

水仙や怒濤いくつも見てゐたる

ジョン・レノン思ひ出させてしぐれけり

母遺す編みし毛糸の未来形

狛犬の阿吽の分かつ霜の花

ロボットの犬撫でやれば冷たさよ

火事跡を離れぬ犬のをりしこと

人参を微塵にすれば食ぶるひと

寒林やこゑ美しく禽の棲む

枇杷色に屋台はともり雪催

夜雨そと初雪となる別れかな

十二月八日未明の放屁かな

枯野行きて測量士に遇ひしのみ

落日を一鳥よぎる枯野かな

蟷螂も枯れてもう枯るゝものあらず

人よりも地図を信じて枯野なる

死亡欄読む間をしぐれては晴れて

音消して救急車去る寒夕焼

止まり木やひとり忘年会ぬけて

南窓開けて茶の花日和かな

冬凪いで猫日和とぞなりにける

昔男ありけり老いて着ぶくれて

冬の蝶大きあを空残しけり

酒ばかり届くを恥づる歳暮かな

日記買ふ鴨川の水けふ迅し

酌下手の汝を愛しむおでん酒

自動車も静かなオブジェ深雪晴

おほきにといふ妓の言葉冬ぬくし

清水へ七味を買ひに冬うらら

空箱の中に空箱十二月

一點へ収斂しゆく枯野人

風花やはんなりといふ京ことば

猫さまの家来となりて冬籠

昼月のかくも清らに年の暮

生き死にを篩にかけて年歩む

一つ翔つと皆翔つあはれ都鳥

狐より賢からざり狐罠

いづくへと行く靴音や夜半の冬

行く年の動く歩道を歩いてゐる

白毛布蛹のやうに子は眠る

ちちははの世より住みなす隙間風

人生の誤算のごとし隙間風

ゆきずりの嬰泣きやみぬ聖樹の灯

三寒の四温の兆す雨気かな

オロシヤの舶を怖れず冬かもめ

粘菌を視る虫眼鏡冬ごもり

うつくしき昆虫図鑑冬ごもり

冬籠るつむりの中の詰将棋

ユダのごと髭たくはへて冬籠

満目の枯れを見てきし深睡り

ヴィーナスの一粒のほか世は凍つる

年の瀬の背中押されて足が出る

年の瀬をやをら過りぬ霊柩車

炬燵居の脳の大部を使はざる

炬燵猫ときどき覚めて美食せる

短日を曲り損ねし事故ならん

長考に沈みゆくなる襖かな

佳き墨を買ひて天皇誕生日

枯園の一人と一人かゝはらず

冬耕の一人にとほき一人かな

雪つぶて雪へ抛りて一人なる

寒灯をいくつも点し一人なる

顔見世も千龝楽やゆりかもめ

若き日の悔いが犇く冬銀河

ひとり碁を打つ音響く枯山河

大時計の内部の暗き掃納め

大年の大き静寂はうき星

年越の観念したるしゞまかな

一服の紫煙のゆくへ除夜の星

倖せか余白の多き日記果つ


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