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2017年8月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像8月

八月の濤とたゝかふ砂の城

濤は己(し)が重みに崩れ夏の果

ひきしほに汐木をかへす晩夏光

でこぼこの道しかと踏む帰省かな

分け入つて蝮に出遭ふ山頭火

大鯰口をひらけば冥土かな

飛魚の仰山獲れて町貧し

灼くる地に歯並びの良き髑髏かな

日焼してカレーライスの好きなひと

夏惜むタクラマカンの石一つ

曝書して昭和時代を旅してをり

亡き母の財布小銭と蛇の衣

かなかなの鏡の中の鏡かな

かなかなのこゑのみ透きて杉襖

行く夏の渚にのこす砂の城

冷房の効きゐて壁に原爆図

夜の端居美空ひばりを口吟み

西方に君の星耀る夜の秋

正視してをとこ心の桔梗かな

朝顔の紺を愛する家系かな

存在をかそけくすれば蜻蛉来る

蛇口みな虚空を向きて広島忌

ひしひしと石積むが見ゆ広島忌

かはたれの濃き珈琲に秋立ちぬ

みちのくの或みちのべの男郎花

この道になまへはなくて明治草

八千草のどれもゆかしき名をもちて

稲妻のふところ深き丹波かな

秋蝉をあつめて広し妙心寺

ふり向けば既にたそかれ秋の蝉

久闊の送信二秒天の川

坂道に影の蝶生れ長崎忌

残暑とは猫の抜け毛のやうなもの

大阪の水のにほへる残暑かな

白鳥座研ぎ澄ましたる野分かな

あした死ぬ蜉蝣に透く夕山河

鳳仙花一所懸命爆ぜにけり

ひとけなき松虫草の盛りかな

秋蝶を日暮れの色に見失ふ

うしろより牛に啼かるゝ盆の月

過去帳に水子がひとり茄子の馬

狐面つけてまぎるゝ秋祭

銀漢や抜けたる一歯屋根に捨つ

鈴虫や夢のはじめに水流れ

京町家奥に鈴虫鳴かせをり

蚯蚓鳴くさすが六道珍皇寺

白露やたまたま人に生れけむ

露の世に坐りなほして飯を食ふ

東京に不二見えてゐる終戦忌

つかの間の逢瀬となりぬ大文字

昼の灯を点して淋し萩の雨

千年の水千本の萩の花

からだよりこころ疲れて螻蛄の夜

芙蓉咲く駅を乗り継ぎ黄泉の祖母

精魂の充満したる葡萄かな

有の実をいのち少なき母に剥く

仮病われに母は林檎を剥きくれし

斎場へつづく矢印秋の風

歩まねば径も消えゆく秋の風

秋風や一つ喪ふ永久歯

花野ゆくいつか一人になる二人で

花野風ここは鈍行のみとまる

大花野こどもがふつとゐなくなる

のら猫にノラと名づけて花野かな

美しき数式はあり秋の雲

恐竜展見てゐて残る蚊に喰はれ

秋郊の雲の影追ふ雲の影

新涼のイノダコーヒのテラス席

校庭にだあれもゐない法師蝉

ぎす鳴いて関東平野しづかなり

きりぎりす昔男に鳴きにけり

バッタ跳び亜細亜大陸蒼茫たり

高層街衢八月の落葉せり

月光のダム月光の一縷吐く

遍く主はいます糸瓜曲がり初む

秋風の京に七口ありにけり

かなかなや俄かに昏るゝ貴船川

銀漢やプラットホームは岬なる

どぶろくや此処は銀河の番外地

自転車で2マイル帰る銀河かな

銀河より漁火ひとつ帰り来る

新涼の弦を一本締めなほす

きぬぎぬを少し雨降る草雲雀

虫の夜のなかなか寝顔美人かな

やはらかき生家の真闇ちちろむし

化野のまつくらやみの鉦叩

落柿舎の殊に裏手の虫しぐれ

ぬばたまの耳塚といふ虫の闇


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