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2017年6月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像6月

現し世をいつしかはづれ螢舟

捕らへては放つ螢や思ひ川

夜の蟻をつまみて夜へ帰しけり

短夜の逢瀬のための時刻表

明易のまなこのテストパタンかな

法然院さまの緑蔭長居して

この下闇を祇王寺と云ふべかり

雨降れば雨を愉しむ籠枕

街娼の眸のあをあをと白夜かな

百の豚百の鼻ある溽暑かな

六月の樟の香の雨降りにけり

噴水の翼たゝみし星夜かな

東山暮れても青き麦酒かな

七曜の早くもめぐる四葩かな

キームンの香りの向う梅雨の街

浪速は夏やおつちやんのヘボ将棋

薄命の遊女に供ふ著莪の花

人類の滅びし星のゴキカブリ

横浜の夜景を游ぐ海月かな

新宿を海と思へばくらげかな

鉛筆に木のかをりしてついりかな

かのひとも窓辺に佇ちて梅雨の人

人類の脳重すぎる黴雨かな

故郷の先づはおはぐろとんぼかな

鑑真の聞きおはします五月闇

淡墨に暮れてうつくし梅雨の京

空梅雨か首を反らせる陶の亀

美しき思案のさ中梅雨の蝶

梅雨晴のイノダコーヒのテラス席

梅雨晴や生八つ橋を焼く香り

学校に来ぬ子草笛上手なり

朝焼褪せ高層街衢起動する

たれかれに吠ゆる痩せ犬日蔭街

網戸よりわたしの不在わが覗く

猿山にひと騒ぎあり旱空

百足死し遅れて百の足が死す

山椒魚人間嫌ひに徹しけり

夕網のものばかりとぞ夏料理

御来光待つ二杯目の濃き珈琲

驟雨過ぐ箸の先なる箸休め

五月闇標本室の蝶にほふ

一服の向精神薬梅雨の蝶

華燭とふ一つの別れ花氷

千人の千のまなざし花氷

出水して戻らざる亀桜桃忌

父の日の機嫌の悪きゴリラかな

父の日の父さりげなく旅にあり

ヤマトンチュと呼ばれ泡盛ふるまはれ

泡盛にたくましきかな島野菜

けさの卵に黄身二つ沖縄忌

七曜のおほかたは雨七変化

よべのこと蚊遣の灰の渦に似て

傍にゐて水着の娘はるかなり

山積みのバナナの中の日本かな

雨降れば雨を愉しむ籠枕

身の内の鬼を宥むる冷し酒

ハチ公はとはの忠犬梅雨滂沱

学校に七不思議あり五月闇

でで虫に捜し物ある銀河かな

見てをればつゆたゝかはぬ闘魚かな

ハーモニカつたなく鳴りて緑の夜

葛切や暮色とゝのふ祇園町

玉虫や形見も減りし桐箪笥

サントロペ水着濡らさぬ夫人ゐて

廻転扉シャネル五番の香もまはる

簡単服ひとは首筋より老けて

かなぶんになりてかの日へ帰りなむ

ハツといふ心を食べて暑気払ふ

ほととぎす智恵子の空を鳴きわたる

年半ば梅雨最中なる不如意かな

決めかぬる明日シャワーを全開す

蟻も蟻地獄も懈怠なく生きて

夕立を過ごす碧眼本能寺

サングラス未だに坊と呼ばれをり

香水を更へたるひとをいぶかしみ

毘沙門の使ひの百足殺めけり

夜店の灯美しき飴買ひにけり

いくたびも寄る同じ窓同じ梅雨

夏の河ふぐり濡らして徒渡る

考への空白くらげ浮きにけり

そのむかし駄菓子屋ありし片かげり

五月闇標本室の蝶にほふ

エマヌエル夫人がひとり砂日傘

面会謝絶五月闇五月闇

百の豚百の鼻ある溽暑かな


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