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2017年5月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像5月

カンバスはまだ白きまゝ夏が来る

水打つて暮色とゝのふ祇園町

日照雨(そばへ)には日傘をさして先斗町

薫風も九十九折なす鞍馬山

木の根道山の蟻にはかなはざる

パルテノン神殿さして蟻の列

水更へて金魚に鳴らすモーツァルト

金魚死す或る日誰かの身代りに

夜の蟻這ひて白布を哀しうす

大寺に大蟻の国ありにけり

渋滞のたゞなか憲法記念日よ

まつすぐに大人を見る眸こどもの日

三条も四条も見えて川床涼し

なほ動く明治の時計花は葉に

三毛猫が黒猫産んで聖五月

青松の白砂を借りて蟻地獄

分け入つて蚋に喰はるゝ山頭火

ハーバーに風を見てゐるサングラス

喪疲れは頬に出でゐてサングラス

コクリコの碑に触れてゆく夏の蝶

清水の舞台より翔つ夏の蝶

一雨の予感に揺るゝ夏のれん

蕗を煮て町家の奥の暗きかな

病床の目に蝸虫の迅さかな

とある日の仏足石に蜥蜴の尾

香水や未だ源氏名より知らず

マネキンの眸みづいろ夏帽子

たかむなの早やも長髄彦の丈

永らへよ『ゲバラ日記』のきららむし

蛇に遭ひ遂に神とは邂はざりき

なきがらに蟻群れてゐてしづかなり

見てしまひぬ毛虫の一つ二つ百

書く事もなしと書く日記夜の蟻

美しき距離ハンカチのなほ振られ

夏祭をとこに風の立ちにけり

鮎食うて六腑に香る貴船川

右源太の屋号もゆかし貴船川床

メロン切る女将のけふの機嫌かな

掛香や灯りて昏き先斗町

ゴリラは怒つてゐる我は氷菓舐む

いつ来ても誰かたたずむ未草

美しき独断薔薇は崩れけり

懸葵機嫌ななめの牛の啼く

飾られて葵祭の馬となる

かげろふの中へ去にゆく賀茂祭

鵜籠へとみづから入りて鵜の帰る

風聞の蛇がだんだん大きくなる

一汁一菜一人暮しの涼しさよ

夕焼小焼ひとりの飯はすぐ炊けて

人生のどのあたりなる夕焼川

扇風機めし屋の壁に裕次郎

時にジャズたゞの騒音大西日

滝壺の恐ろしければ又覗く

滝となり又滝となり又滝と

臨終ののち風鈴の鳴つてをり

女人より泊めぬ禅林沙羅の花

夕景のいつしか夜景ビアホール

仏壇の水に泛く火蛾死んでゐず

事も無げにけふも昏れゆく蟻地獄

微動だにせぬも守宮の自由かな

刑務所のほとりに佇てる白日傘

忘れゐし魚と眼の合ふ冷蔵庫

片蔭もゆかしき京の町家筋

化粧ふれば舞妓は暑さ忘じけり

冷し中華午前零時のネオンにて

斎の座に酔ふ鰻屋の二階かな

白妙の小流れに遇ふ青葉闇

軋みしは己れの五体籐寝椅子

掻い抱けば仄と螢のにほひせり

ほうたるの今宵をとことをんなかな

打水や一見さまは御ことわり

水打つて抜かりなかりぬ祇園町

水打つて創業三百五十年

うつぶせに臥てゐる女明易し

短夜や忘れてゆきし耳飾り

父の死後艶の失せたる竹夫人

涼しさの譬へば窓のある封書

すゞしさや死ねば原子になる話

山蟻の何より山を悉る歩み

老鶯や息継ぎの水こんこんと

奥の宮へと大いなり夏木立

コクリコの碑に触れてゆく夏の蝶

一雨の予感に揺るゝ夏のれん

蕗を煮て町家の奥の暗きかな

業平の終の栖の苔の花


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