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2017年3月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像3月

遠浅の海とほあさの春の空

うらうらと茶碗は買はで茶わん坂

お持たせの春の三時の五色豆

春宵の家路をいそぐ理由なし

寝ねがてに須磨之巻など夜半の春

春の夜を更かす源氏のものがたり

肉じやがの煮くづれてゐる目借時

春昼の生八ツ橋を焼く香り

三月の空を去るひと来たる人

しづかなる牛の反芻春の昼

虻が来る己が羽音の後ろより

水ぬるむ近江に富士のありにけり

フラミンゴシンメトリーに水温む

母子草母逝きてより目につきぬ

蛇穴を出て松島の松のうへ

蟻穴を出て信長の草履の上

京雛や過ぎにし御世のうるはしく

赤き蟻黒き蟻出て交はらず

酒見世の意外な混みや菜種梅雨

爺ぃより婆ぁが元気桃の花

滾ちつつ一期の鮎を上らしむ

口開けて口の数だけ燕の子

大寺の屋根まで飛べて雀の子

岬にも四五戸住みなす初つばめ

かげろふや薄暮ゲームと云ひしころ

鉄棒は嫌ひのままに卒業す

春休み小鳥のやうに早起きし

ジャムを煮て学生妻の春休み

春休み風のなまへを蒐めけり

啓蟄やふりがなを読む虫眼鏡

啓蟄や欠伸ちふもの伝染し

かへりみて蜷の道にも似たること

どの寺の鐘やおぼろの東山

北野より平野へ花をうかゞひに

のゝ宮に恋の絵馬ふゆ竹の秋

竹秋の門よりまゐる天龍寺

大濁りして春告げぬ最上川

恋をはり猫に猫撫で声もどる

幕の内弁当に春闌けにけり

とことはの父母の留守春落葉

引鶴や別るゝために邂ひしとも

どこからを晩年といふ鳥雲に

からつぽの財布がひとつ鳥帰る

ギモーヴちふ仏蘭西の菓子春の風

あをあをと潮満ちくる初桜

春星のけぶれる奥も春の星

朧夜の身に九穴のありにけり

天井に龍の眼のあるおぼろかな

朧夜のそろそろ眠き十指かな

ひとひらの波ひとひらの桜貝

存分に歩きて春の夕焼かな

春分の泥濘んでゐる裏参道

花冷のつながつて出るティシューかな

あをあをと花冷の空ありにけり

まれびとを待つ花冷の京都駅

占ひにひらくてのひら星朧

飯を食ふかりそめの世に接木して

接木して人生のどの辺りなる

言霊の駆けぬけてゆくさくらかな

濡れてゐる暗闇さくら咲きつつあり

蝶博士蝶を愛して娶らざる

蝶一つたゞよふ千の無縁塚

てふてふや北緯三十八度線

校庭に花理科室にスケルトン

老人の眼のすぐ潤む櫻かな

桜鯛紀淡海峡晴れ極む

一力に停まるハイヤー花の雨

周恩来詩碑もしとゞに花の雨

花咲いて祇園の夜空燃え易し

タクシーを拾ふ女人や花しぐれ

待ち合すフラミンゴのまへ花衣

ひとつぶの雫の中の花月夜

あぶり餅炙る煙もうららなり

春風やたまさかに買ふ時刻表

佇つひとに四条木屋町おぼろなる

三面鏡に春愁のかほかほかほ

野遊びのコリーに笑顔ありにけり

かげろふへ皆消えてゆく一人づつ

柳絮とぶ民の広場に民溢れ

ユーラシアの風に吹かれて柳絮かな


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