田畑益弘俳句の宇宙 ロゴ

2016年11月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像11月

鳴く鹿に小糠雨降る宵も来ぬ

鮑入り和風バーガー文化の日

11月1は淋しき数字かな

恋人の名前はふゆ子冬よ来よ

初しぐれ八ツ橋を焼く香りして

うかうかと小春日和の暮れかゝり

紙ヒコーキの宙返り小春風

蝶一つしまひ忘れし小春風

女傘をとこが差して朝時雨

三条に大橋小橋しぐれ過ぎ

色町に抜け路地いくつ小夜時雨

忠興とガラシャのねむる冬紅葉

小夜時雨ふたり濡らすも憎からず

祖母静江享年三十しぐれけり

しぐるゝやむかし揚屋の細格子

しぐれては祇園の燈し華やげる

冬の蝶供華より供華へ翔びにけり

一葉の喪中欠礼冬に入る

ひとゝせや冬の服より一名刺

千年の古都の川音浮寝鳥

をんな佇つ四条木屋町しぐれけり

大阪のやくざな奴とふぐと汁

てつちりは好き大阪は嫌ひどす

もう一人詰めれば坐れおでん酒

中年のまた流れつくおでん酒

天井を電車の走るおでん酒

運命のせゐにしてゐるおでん酒

マキノより冬めいて来ぬ湖西線

西陣の機織る音や日短

たこ焼屋蛸を刻みて日短

日向ぼこおなじ日向を鳩あるく

消しゴムで消せば済むこと冬の虫

銃声のたび青まさる狩の空

あをあをと大白鳥の大空よ

狐火も座敷わらしもダムの底

小春日や木喰仏のゑまふ顔

泣き上戸けふも泣かせておでん酒

凩の刷き残したる星屑よ

手袋の右手(めて)喪ひて左手(ゆんで)捨つ

夜の底の片手袋の流転かな

死とはその脱ぎし手套のやうなもの

レンズに土星蒼かりし湯冷めかな

さびしらに陸(くが)を見に来る鯨かな

狼の絶滅以後の堕落かな

冬眠なき人類に鳴る目覚しよ

この路のみるみる銀杏落葉かな

冬霧の底ひに響む五番街

蟷螂の首を傾げて枯れゐたり

京を見て鳥の眼となる屏風かな

御香典と書く薄墨や朝しぐれ

枯蟷螂なほ正眼に構へけり

亡き父のものも一枚重ね着て

外套が臭ふ世に狎れ人に狎れ

一対の白狐に視られ神の留守

一葉の喪中欠礼冬に入る

冬の蝿存ふるとは咎に似て

なんぴとが始めに食ひし海鼠かな

おじやにてお開きとなる嵐山

北風や貝殻なべて深手負ふ

焼鳥や資本論など聞かされて

止まり木にひとり勤労感謝の日

つぐみ焼昭和もとほくなりにしよ

冬海に真向ふ鬼の面つけて

透明のガラスの破片寒波来る

幸福の木にうすぼこり冬館

室花か造花か分かず精神科

暮れてより裏手にまはる虎落笛

本能寺址の暗闇もがり笛

洛中は花の盛の屏風かな

湯豆腐や玻璃にけぶれる嵐山

過去帳に水子がひとり霙れけり

クリスマスツリー角を曲れば裏社会

凍夜ふと街角に降る電子音

十一月流水のごと過ぎにけり

遠むのみ十一月のはうき雲

ソプラノの響きあまねく冬銀河

南座を見やる阿国やゆりかもめ

あすのため冬の怒濤をいくつも見る


BACK  俳句 田畑益弘俳句の宇宙HOME