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2016年10月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像10月

秋蝶の何かせはしき花背かな

仏壇の塵を許さず菊かをる

菊月をひと美しく闊歩せり

鳥は翔び人は歩みて菊日和

生きて死ぬそれだけのこと天の川

霧の夜の抱き寄せやすき肩なりし

深々と菊の香を吸ふ訣れかな

脳のこと考ふる脳冷ゆるなり

かにかくに白川に散る柳かな

ふりむけばすでにたそかれ柳散る

柳散るぎをん新橋巽橋

秋風や最後に拾ふのど仏

秋燈や自問自答の夜も更けぬ

秋郊や雲の影追ふ雲の影

三叉路は別るゝために秋の蝶

身のうちの鬼を宥むる温め酒

古池も完全な青十月よ

髪切ればこころも変る鵙日和

百獣の王の瞑想秋深し

鬼の子の鬼ともならず揺れてをり

祇王寺の滝口寺の薄もみぢ

粧へる山ふところの荼毘の径

宵闇の窓辺にをれば二胡噎ぶ

秋雲やフーテンの寅永遠なり

コリーにも笑顔のありて花野風

菊月や錦にそろふ旬のもの

おもひだす女の体温火恋し

ひとづまと訪ぬる嵯峨の薄紅葉

つれづれの手のひら白き秋思かな

爽やかに何も持たざる手がふたつ

たれかれのそびらがとほし秋の暮

日の本の色となりたる熟柿かな

あをあをと蟷螂飢ゑてゐたりけり

なんとなくイエスに似たる案山子かな

猫抱きて猫につぶやく夜寒かな

長き夜の猫のお相手致しけり

まつすぐに逃げて猪撃たれけり

ねもごろに紅を注しゐる竜田姫

粧へる山ふところの荼毘の径

乙訓の風あをあをと竹の春

のゝ宮に恋の絵馬殖ゆ竹の春

古民家の秋の昼寝によき柱

弥次郎兵衛静止して水澄みにけり

わらんべのうしろの正面秋の暮

初鴨や洛北の水青まさる

指にまた包帯をして夜学生

時計とふ非情の機械夜業人

夜業人なべて機械のしもべなる

かげぼふしより歩き出す秋の暮

しあはせを装ふ秋果盛りにけり

銀河より漁火一つ帰り来る

キヲスクに買ふ握り飯野菊晴

一塵の如く吹かるゝ秋天下

城址に佇てば聞こゆる秋のこゑ

濁酒酌むここは銀河の番外地

時代祭御維新の音に晴れわたる

ゆく秋を淋しきをんな太りけり

明朝体うるはし灯火親しめり

キネマ出て釣瓶落しにまぎれたる

釣瓶落し宇治の早瀬に見了んぬ

神妙に猫のはんべる障子貼り

末枯や結びたる実は朱を尽くし

黄落の水の迅さとなりにけり

デッサンの線走らせて黄落季

化野やきのふのけふを秋時雨

読みさしに戯曲閉づれば露時雨

穂芒のあつむる風のやはらかし

桐一葉町川に落ち町を去る

玲瓏と霜降の空ありにけり

化野に蝶見てよりの秋思かな

月だけが知る道化師の素顔かな

柿干して御歳百になりたまふ

薄目して猫の窺ふ夜長かな

酒あたゝむ朱鷺の滅びし話して

天体となれずに廻る木の実独楽

風立てば風に身構ふ蟷螂かな

秋惜むみたらし茶屋の外床机

惜秋や骨董街をたもとほり

つぶやけば消えてしまひぬ秋の虹

半眼に猫の見透かす長き夜

うまさうな酸素を吸ひに星月夜

剥げさうな季寄せの表紙冬隣

季寄せの背繕ふことも冬支度

冬帝は比叡より京を窺ひて


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