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2016年6月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像6月

六月の樟の香の雨降りにけり

七曜の早くもめぐる四葩かな

キームンの香りの向う梅雨の街

百の豚百の鼻ある溽暑かな

現し世をいつしかはづれ螢舟

捕らへては放つ螢や思ひ川

夜の蟻をつまみて夜へ帰しけり

噴水の翼たゝみし星夜かな

人類の滅びし星のゴキカブリ

浪速は夏やおつちやんのヘボ将棋

薄命の遊女に供ふ著莪の花

短夜の逢瀬のための時刻表

短夜や忘れてゆきし耳飾り

横浜の夜景を游ぐ海月かな

新宿を海と思へばくらげかな

うつぶせに臥てゐる女明易し

明易のまなこのテストパタンかな

鑑真の聞きおはします五月闇

学校に七不思議あり五月闇

淡墨に暮れてうつくし梅雨の京

美しき思案のさ中梅雨の蝶

梅雨晴のイノダコーヒのテラス席

鉛筆に木のかをりしてついりかな

かのひとも窓辺に佇ちて梅雨の人

人類の脳重すぎる黴雨かな

山積みのバナナの中の日本かな

故郷の先づはおはぐろとんぼかな

身の内の鬼を宥むる冷し酒

街娼の眼のあをあをと白夜かな

年半ば梅雨最中なる不如意かな

五月闇標本室の蝶にほふ

一服の向精神薬梅雨の蝶

雨降れば雨を愉しむ籠枕

梅雨晴や生八つ橋を焼く香り

回送の涼の一塊よぎりけり

学校に来ぬ子麦笛上手なり

朝焼褪せ高層街衢起動する

たれかれに吠ゆる痩せ犬日蔭街

出水して戻らざる亀桜桃忌

猿山にひと騒ぎあり旱空

ハツといふ心を食べて暑気払ふ

この下闇を祇王寺と云ふべかり

法然院この下闇が好きで来る

華燭とふ一つの別れ花氷

千人の千のまなざし花氷

空梅雨か首を反らせる陶の亀

ほととぎす智恵子の空を鳴きわたる

網戸よりわたしの不在わが覗く

あの世とはきつと退屈走馬灯

まつすぐな胡瓜つまらぬ世となりし

ハチ公はとはの忠犬梅雨滂沱

よべのこと蚊遣の灰の渦に似て

百足死し遅れて百の足が死す

山椒魚人間嫌ひに徹しけり

サントロペ水着濡らさぬ夫人ゐて

傍にゐて水着の娘はるかなり

雲の峰をんなが四股を踏んでをり

山椒魚人間嫌ひに徹しけり

無人島ひとをゆるして夏旺ん

夏の河ふぐり濡らして徒渡る

父の日の機嫌の悪きゴリラかな

父の日の父さりげなく旅にあり

これがまあ京の暑さや阿国像

驟雨過ぐ箸の先なる箸休め

ヤマトンチュと呼ばれ泡盛ふるまはれ

泡盛にたくましきかな島野菜

けさの卵に黄身二つ沖縄忌

決めかぬる明日シャワーを全開す

ハーモニカつたなく鳴りて緑の夜

毘沙門の使ひの百足殺めけり

葛切や祇園の燈しうつくしき

金閣の金を見すぎし霍乱か

廻転扉シャネル五番の香もまはる

簡単服ひとは首筋より老けて

業平の終の栖の苔の花

玉虫や形見も減りし桐箪笥

いくたびも寄る同じ窓同じ梅雨

舞妓けふ暇の絞り浴衣かな

夜店の灯美しき飴買ひにけり

見てをればつゆたゝかはぬ闘魚かな

考への空白くらげ浮きにけり

かなぶんになりてかの日へ帰りなむ

子かまきり無数のその後知らざりし

夕網のものばかりとぞ夏料理

御来光待つ二杯目の濃き珈琲

故郷の先づはおはぐろとんぼかな

夕立を過ごす碧眼本能寺

東山暮れても青き麦酒かな

一筋のをとこの泪サングラス

サングラス未だに坊と呼ばれをり

男とは孤り泣くもの夏の星

七曜のおほかたは雨七変化

香水を更へたるひとをいぶかしみ

冷素麺ひとりぼつちのしあはせよ

そのむかし駄菓子屋ありし片かげり


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