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2016年5月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像5月

イタリアの国旗お洒落や花は葉に

なほ動く明治の時計花は葉に

葉桜やサンドウィッチですます昼

日照雨(そばへ)には日傘をさして先斗町

三毛猫が黒猫産んで聖五月

薫風も九十九折なす鞍馬山

木の根道山の蟻にはかなはざる

山蟻の何より山を悉る歩み

嶮にして泉へつゞくけもの道

パルテノン神殿さして蟻の列

夜の蟻這ひて白布を哀しうす

大寺に大蟻の国ありにけり

渋滞のたゞなか憲法記念日よ

まつすぐに大人を見る眸こどもの日

カンバスはまだ白きまゝ夏が来る

水打つて暮色とゝのふ祇園町

水打つて創業三百五十年

簾を垂れて祇園新橋灯しごろ

一雨の予感に揺るゝ夏のれん

蕗を煮て町家の奥の暗きかな

水更へて金魚に鳴らすモーツァルト

金魚死す或る日誰かの身代りに

青松の白砂を借りて蟻地獄

分け入つて蚋に喰はるゝ山頭火

とある日の仏足石に蜥蜴の尾

清水の舞台より翔つ夏の蝶

コクリコの碑に触れてゆく夏の蝶

病床の目に蝸虫の迅さかな

ハーバーに風を見てゐるサングラス

喪疲れは頬に出でゐてサングラス

掛香や灯りて昏き先斗町

香水や未だ源氏名より知らず

マネキンの眸みづいろ夏帽子

たかむなの早やも長髄彦の丈

永らへよ『ゲバラ日記』のきららむし

したたかに浮世草子のきららかな

メロン切る女将のけふの機嫌かな

三条も四条も見えて川床涼し

鵜籠へとみづから入りて鵜の帰る

風聞の蛇がだんだん大きくなる

懸葵機嫌ななめの牛の啼く

飾られて葵祭の馬となる

かげろふの中へ去にゆく賀茂祭

右源太の屋号もゆかし貴船川床

老鶯や息継ぎの水こんこんと

奥の宮へと大いなり夏木立

白妙の小流れに遇ふ青葉闇

掻い抱けば仄と螢のにほひせり

ほうたるの今宵をとことをんなかな

いつ来ても誰かたたずむ未草

蛇に遭ひ遂に神とは邂はざりき

なきがらに蟻群れてゐてしづかなり

見てしまひぬ毛虫の一つ二つ百

日を送り月を動かす牡丹かな

一汁一菜一人暮しの涼しさよ

夕焼小焼ひとりの飯はすぐ炊けて

人生のどのあたりなる夕焼川

プール蒼く静かに世界記録生む

ゴリラは怒つてゐる我は氷菓舐む

美しき距離ハンカチのなほ振られ

夏祭をとこに風の立ちにけり

書く事もなしと書く日記夜の蟻

扇風機めし屋の壁に裕次郎

時にジャズたゞの騒音大西日

美しき独断薔薇は崩れけり

父の死後艶の失せたる竹夫人

軋みしは己れの五体籐寝椅子

滝壺の恐ろしければ又覗く

滝となり又滝となり又滝と

業平の終の栖の苔の花

涼しさの譬へば窓のある封書

すゞしさや死ねば原子になる話

片蔭もゆかしき京の町家筋

みづうみの夜雨すがしき洗鯉

鮎食うて六腑に香る貴船川

斎の座に酔ふ鰻屋の二階かな

忘れゐし魚と眼の合ふ冷蔵庫

臨終ののち風鈴の鳴つてをり

化粧ふれば舞妓は暑さ忘じけり

夕景のいつしか夜景ビアホール

仏壇の水に泛く火蛾死んでゐず

冷し中華午前零時の街にひとり

旱天や紙の葬花の紙の音

女人より泊めぬ禅林沙羅の花

刑務所のほとりに佇てる白日傘

つかの間の端居をよぎる過去未来

事も無げにけふも昏れゆく蟻地獄

微動だにせぬも守宮の自由かな

少年と少女の秘密麦は穂に

麦秋の納屋に終りし少年期


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