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2016年2月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像2月

切結ぶ竹の音聴く風二月

豆打や闇がたぢろぐ闇の中

やらはれし鬼見失ふ人の渦

春雪霏々と鬼はまだそこにをる

北野より平野へまゐる厄落し

島原の大門くゞる捨仔猫

恋猫の鈴の高鳴る真くらがり

眼が合ひて忽ち有縁捨仔猫

仏飯を喰ふ捨仔猫喰へばよし

屋根づたひ何処へも行けて恋の猫

受験子の眼中になくすれちがふ

節分の鬼妙齢の保育士で

柊挿して鬼も来ず人も来ず

立春のなかなか立たぬ卵かな

がうがうと篁鳴らし春立ちぬ

固まつて其処が都や蝌蚪の国

蝌蚪に手が出てもう魚にはなれぬ

佐保姫の覚めて奏づる深山川

春浅き雨のひそひそ降りにけり

淡雪やはんなりといふ京言葉

春はあけぼの珈琲はアメリカン

しら梅のあすにほころぶ気色かな

撫で牛は石のつめたさ梅白し

流氷の天も動いてをりにけり

いくさ経し不死身の人の春の風邪

風光るまだ傷だらけなる山河

七曜のめぐる早さの物芽かな

リモコンがいくつもあつて春の風邪

ひそかなる逢瀬の後の春の風邪

初午やすゞめ焼く香の裏参道

春泥の径の果てなる縁切寺

抱擁のあなたに海市崩れ初む

亡き数のひとを娶りし春の夢

春眠の空を游いでゐたりけり

繰り言が母の遺言しゞみ汁

白梅に醒め紅梅に惚けたる

湯上りのかほを向けたる春満月

龍馬遭難之地とのみ春疾風

順々に死ぬと限らず春疾風

料峭の候とひとひら喪の葉書

料峭に架かりて長き渡月橋

少年の日のローマ字日記鳥雲に

鳥雲に時差の向うの子をおもふ

豚落ちて黄河の春を泳ぎけり

春を寝て未生以前を旅してをり

春燈やをどる姿の京人形

春燈のともりて昏らき先斗町

をりからに三味の音漏るゝ春燈

三十六峰みな名をもちて霞みけり

かざぐるま恋とは風のやうなもの

風船が逃げるシンデレラ城の上

風車不意にシャネルの香り来て

万年を生きねばならず亀鳴けり

春の日を阿修羅にまみえ面映し

天平の色となりゆくはるぬかな

サイパンに戦死と墓銘忘れ霜

日本はご飯の國や花菜漬

淡雪や更けてはなやぐ祇園町

あをあをと冴返る空ありにけり

水筒に小さな磁石鳥雲に

鳥雲に河は苦しく蛇行せり

何者の手に蛇行せる春大河

春の夜のすぐに泣くひと泣かしけり

山河けふ力抜きたる雨水かな

寝ねがてに須磨之巻など夜半の春

春の夜を更かす源氏のものがたり

三条に大橋小橋春しぐれ

春寒の舌下のニトログリセリン

春寒やつまづきて知る己が齢

恋の傷舐めてなほしぬ恋の猫

春宵の家路をいそぐ理由なし

お持たせの春の三時の五色豆

龍馬の目切れ長にして沖霞む

春光のさゝ波なせる千枚田

料峭や紙の葬花の紙の音

春雷や地下街にまた地下がある

残る鴨勇の詠みし水にかな

東京に春の雪積む秘史ありき

白杖は道たがへざり百千鳥

柩窓開いておきぬ百千鳥

もう誰も踏まざる踏絵玻璃囲ひ

春の艸紙ヒコーキの不時着す

春装のひと鏡より出でゆきし

東風さむき白梅町といふところ

東風吹かば出船ま近き遣唐使

冴返る頬に眼薬零したる

うらうらと茶碗は買はで茶わん坂

遠浅の海とほあさの春の空


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