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2015年12月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像12月

空箱の中に空箱十二月

御破算で願ひましては街師走

顔見世や松葉の蕎麦もお目当てゞ

密やかにこひびとと逢ふ年忘れ

冬深し標本室の千の蝶

みちのくの伏目のこけし冬深き

山眠るふつと活断層のこと

山眠りゐて石英は水晶に

しぐれねばならぬ如くに小督塚

これやこの枝垂桜の枯木かな

手を浸けて海ぬくかりし水仙花

水仙や怒濤いくつも見てゐたる

枇杷色に屋台はともり雪催

夜雨そと初雪となる別れかな

今にして遠火事に似る秘事ありき

三十六峰しめし合はせて眠るかな

狛犬の阿吽の分かつ霜の花

短日を曲り損ねし事故ならん

ロボットの犬撫でやれば冷たさよ

火事跡を離れぬ犬のをりしこと

熊出でし山にも市制布かれあり

白毛布蛹のやうに子は眠る

ジョン・レノン思ひ出させてしぐれけり

母遺す編みし毛糸の未来形

つぐみ焼昭和もとほくなりにしよ

ひとり碁を打つ音響く枯山河

長考に沈みゆくなる襖かな

剥製の鷹翔つかたち冬座敷

風邪引いて一所懸命眠りけり

休校の砂場に遊ぶ風邪の神

十二月八日未明の放屁かな

ちちははの世より住みなす隙間風

人生の誤算のごとし隙間風

炬燵居の脳の大部を使はざる

酒ばかり届くを恥づる歳暮かな

牡蠣食うて賀茂鶴酌みて呉にあり

爆心の鬼哭の街の虎落笛

音消して救急車去る寒夕焼

三寒の四温の兆す雨気かな

鶴凍つる姿正しく歩みては

死亡欄読む間をしぐれては晴れて

賀状書き了ふ皓々と月ありぬ

底冷の底を奔りて蒼き川

底冷の紫がかり比叡昏るゝ

粘菌を視る虫眼鏡冬ごもり

うつくしき昆虫図鑑冬ごもり

冬籠るつむりの中の詰将棋

ユダのごと髭たくはへて冬籠

オロシヤの舶を怖れず冬かもめ

風花は都をさして荼毘の空

初雪は水子のために降りにけり

蟷螂も枯れてもう枯るゝものあらず

枯野行きて測量士に遇ひしのみ

人よりも地図を信じて枯野なる

落日を一鳥よぎる枯野かな

一點へ収斂しゆく枯野人

三寒の四温の兆す雨気かな

洛中の朝餉つましき酢茎漬

煮凝や町家の冷えも懐かしく

風花やはんなりといふ京ことば

寒雀遊ばせたまふマリアさま

たゞならぬ男が曳くや夜鳴蕎麦

ヴィーナスの一粒のほか世は凍つる

点鬼簿にわが知らぬ名や冬の星

ゆきずりの嬰泣きやみぬ聖樹の灯

日記買ふ鴨川の水けふ迅し

猫さまの家来となりて冬籠

炬燵猫ときどき覚めて美食せる

枯園の一人と一人かゝはらず

冬耕の一人にとほき一人かな

雪つぶて雪へ抛りて一人なる

寒灯をいくつも点し一人なる

年の瀬の背中押されて足が出る

年の瀬をやをら過りぬ霊柩車

帰り花仏の母につぶやくも

面白うなりさうな夜や京に雪

自動車も静かなオブジェ深雪晴

行く年の動く舗道を歩いてゐる

聖樹立つ角を曲がれば裏社会

ふりさけて比叡を見やる寒さかな

満目の枯れを見てきし深睡り

佳き墨を買ひて天皇誕生日

日記買ひ川の行く方見てゐたり

止まり木やひとり忘年会ぬけて

風花や空似のひとを見失ふ

枯野ゆく心の中のほむらかな

ゆきずりの嬰泣きやみぬ聖樹の灯

裸木の膚(はだへ)艶めくネオンかな

顔見世も千龝楽や阿国像

大時計の内部の暗き掃納め

生き死にを篩にかけて年歩む

大年の大き静寂はうき星

年越の観念したるしゞまかな

一服の紫煙のゆくへ除夜の星


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