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2015年9月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像9月

をんなよりをやま美し秋燈

水面はや夕べのけはひ河鹿笛

ひとづまと逢ふ台風の目の蒼空

流れ星たかが人生ではないか

爽やかや死ねば原子になる話

日時計の影鋭角に帰燕かな

横浜の九月の沖を見て飽かず

各駅に停まる虫の音に停まるかな

化野のまつくらやみの鉦叩

落柿舎の殊に裏手の虫しぐれ

虫の夜のなかなか寝顔美人かな

大陸の匂ひのしたる落花生

名にし負ふ蛇塚にして穴まどひ

風の名もかはりて鮎の落ちゆけり

くもりのち小鳥来てゐる金閣寺

水筒の番茶がうまし野菊晴

父が炊き母に供ふる零余子飯

眉月の産寧坂の二階かな

声量のゆたかなる空鳥渡る

ダージリン手作りケーキ小鳥来る

野仏の久遠の微笑(みせう)小鳥来る

上野発芋煮会へとかへる人

祇王寺の庭より昏れて竹の春

竹春の門よりまゐる天龍寺

百年の生家の闇のつづれさせ

蟷螂が畳に遊ぶ天気かな

木の家が木の音立つる夜半の秋

詩の話より死の話へと夜半の秋

秋の夜の振子時計の振子音

草相撲痩せぎすの子が勝ちに勝ち

蓑虫の揺れゐて遠き昭和かな

地球まろく葡萄一粒づつまろし

あさつてに食べ頃になるラフランス

見てをれば恐ろしくなり秋の水

をととひはすでに昔日秋の蝉

調律の済みたるピアノ涼新た

放たれし囮のとまる囮籠

下町に電線多きいわし雲

うつくしき北嵯峨の雨新豆腐

番地には既に家なし猫じやらし

松花堂弁当に秋闌けにけり

一粒の露の中なる太虚かな

凶年をきれいな蝶の舞ふことよ

初鵙に紺碧の空ありにけり

水澄みて近江に富士のありにけり

コンピュータひとり働く星月夜

秋雲や十で神童いまいづこ

秋めくや海のもの着く二條駅

銀閣に銀箔あらず秋のこゑ

ひとりとは耳敏きこと秋のこゑ

実柘榴の見事裂けたる吉事かな

自分史に落丁の章蚯蚓鳴く

右手より左手冷ゆる理由あり

医のゆるす一合の酒温めむ

とほき日のとほき秋雲見てゐたり

ひとつぶの栗の貫禄丹波かな

雁渡し老婦が吹くと云へば吹く

久闊の京の松茸づくしかな

日の本の秋の暮なる藁火かな

流星や十七文字の訣れの詩

老犬が老人を曳く秋夕焼

コンドルが金網を咬む秋夕焼

稲の香やみちのくは青の国なる

川あれば川のかゞやき秋めきぬ

秋の灯に故人の句集多きこと

夜業人なべて機械のしもべなる

ピエロまだピエロのままの夜食かな

露けしやひとり占ふトランプに

ねもごろに紅を注しゐる竜田姫

まぼろしの竜よ麒麟よ天高き

花道や背なで泣きをる負すまふ

化野に蝶見てよりの秋思かな

この秋思よみひとしらず読みてより

わが推理迷宮に入る夜長かな

長き夜の猫のお相手致しけり

わらんべのうしろの正面秋の暮

みづ色の空そら色の水小鳥来る

小鳥来て弘法さんの日なりけり

うつくしき山の容(かたち)の秋思かな

鵙の贄人目に触るゝ高さにて

金銀の鯉のたゆたふ良夜かな

黒猫の眸の金色(こんじき)の無月かな

十六夜の家路をいそぐ理由なく

さやうなら空のまほらへ秋の蝶

水バーに水を味はふ銀河かな


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