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2015年8月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像8月

水バーに水を味はふ夜の秋

夜の秋の星空浴に君の星

行く夏の渚にのこす砂の城

八月の濤とたゝかふ砂の城

濤は己(し)が重みに崩れ夏の果

かなかなのこゑのみ透きて杉襖

かなかなの鏡の中の鏡かな

蚯蚓鳴くさすが六道珍皇寺

存在をかそけくすれば蜻蛉来る

露の世に坐りなほして飯を食ふ

芋の露笑ひころげる天下かな

白露やたまたま人に生れけむ

高層街衢八月の落葉せり

朝顔の紺を愛する家系かな

校庭にだあれもゐない法師蝉

蛇口みな虚空を向きて広島忌

ひしひしと石積むが見ゆ広島忌

冷房の効きゐて壁に原爆図

正視してをとこ心の桔梗かな

みちのくの或みちのべの男郎花

秋蝉をあつめて広し妙心寺

ふり向けば既にたそかれ秋の蝉

銀漢や抜けたる一歯屋根に捨つ

久闊の送信二秒天の川

かはたれの濃き珈琲に秋立ちぬ

坂道に影の蝶生れ長崎忌

この道になまへはなくて明治草

八千草のどれもゆかしき名をもちて

坐しゐても心そぞろや萩の風

稲妻のふところ深き丹波かな

うしろより牛に啼かるゝ盆の月

過去帳に水子がひとり茄子の馬

東京の空のすがしき盆休

東京に不二見えてゐる終戦忌

この川を京へ流るゝ盆供かな

つかの間の逢瀬となりぬ大文字

狐面つけてまぎるゝ秋祭

秋蝶を日暮れの色に見失ふ

ぎす鳴いて関東平野しづかなり

きりぎりす昔男に鳴きにけり

バッタ跳び亜細亜大陸蒼茫たり

秋郊の雲の影追ふ雲の影

残暑とは猫の抜け毛のやうなもの

大阪の水のにほへる残暑かな

饂飩にもきつねとたぬき西鶴忌

鳳仙花一所懸命爆ぜにけり

ひとけなき松虫草の盛りかな

鈴虫や夢のはじめに水流れ

京町家奥に鈴虫鳴かせをり

からだよりこころ疲れて螻蛄の夜

あした死ぬ蜉蝣に透く夕山河

芙蓉咲く駅を乗り継ぎ黄泉の祖母

星流れ千夜一夜のものがたり

セロ弾きがセロ抱きて寝る星月夜

新涼のイノダコーヒのテラス席

昼の灯を点して淋し萩の雨

千年の水千本の萩の花

台風の置いてゆきたる鼠かな

白鳥座研ぎ澄ましたる野分かな

精魂の充満したる葡萄かな

有の実をいのち少なき母に剥く

仮病われに母は林檎を剥きくれし

月光のダム月光の一縷吐く

秋風の京に七口ありにけり

歩まねば径も消えゆく秋の風

秋風や一つ喪ふ永久歯

斎場へつづく矢印秋の風

花野風ここは鈍行のみとまる

大花野こどもがふつとゐなくなる

のら猫にノラと名づけて花野かな

花野ゆくいつか一人になる二人で

遍く主はいます糸瓜曲がり初む

恐竜展見てゐて残る蚊に喰はれ

新涼のイノダコーヒのテラス席

美しき数式はあり秋の雲


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