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2015年7月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像7月

七月の人をいざなふ無人島

室町も二階囃子の夜風かな

炎天へふらんすの水買ひにゆく

チャウシェスク倒しし弾痕灼けてゐし

たゞ灼けて芹沢鴨の小さき墓

鱧食はなけふに始まる鱧祭

毘沙門の使ひの百足殺めける

尺取の一枝加ふる青山河

緑蔭や二人ときどきものを言ふ

わたくしは記憶に過ぎず浮いて来い

白日傘楼蘭城址に忘れあり

京のものなべてあえかや川床料理

また太き雨が降るなり鉾祭

ゆびさきに覚えなき傷朝の虹

斑猫や京の終なるみささぎに

頭の中を真つ白にして蝉が鳴く

夏痩せていよゝ火の酒旨かりし

人妻と蛇のゆくへを見てゐたる

蛇這ひて毫も汚れぬ身をもてり

自転車で行けるだけ行き蛇捨つる

無辜の民無辜のくちなは搏ちにけり

母の眸に少しく痩せて帰省かな

しまひまで線香花火よくよく見る

手花火の向う三軒ひとりつ子

遠花火あなたは別のことおもふ

あぢさゐの尚あをあをと七七日

けふの蝉かの日の蝉や忌を修す

蝉しぐれ京に七口ありにけり

空蝉にこころばかりの雨水かな

藪蚊鳴く寂一文字の墓の裏

茂るまま茂りて過疎化高齢化

避暑の宿「長野日報」など読んで

避暑の宿ピンポンばかりしてゐたる

腕時計せぬ手の軽きハンモック

生きて死ぬそれだけのこと蝉時雨

光年の星またたける端居かな

いちづに空青く背泳孤独なり

こいさんも初の浴衣の三姉妹

熱帯夜スパークリングワインでも

日盛りの御町内ちふしゞまかな

炎昼の未来が歪む道路鏡

座の釜に蓋なき劫暑かな

地下出れば祇園囃子の最中なる

けふは未だ宵々山の嬉しさよ

宵山をぬければ洛中真くらがり

肩車され宵山の空をゆく

清正の鎧も屏風祭かな

でで虫のゆつくりいそぐ浄土かな

残念なき蝉の骸のかろきかな

骸骨に袋かぶせて夏休み

ハイヒールに足踏まれたる巴里祭

夏旺んなり蟻喰は蟻を喰ひ

草涼しサラブレッドの母子ゐて

なかなかに戻らぬ恋のボートかな

鉾廻す男のきほひ佳かりける

京ことば舞妓は炎暑やりすごす

夏痩せて御歳百に叱らるゝ

風入や古き写真に泣けてきて

もう読まぬ『されどわれらが日々』曝す

よべのこと蚊遣の灰の渦に似て

七月も後祭とぞなりにけり

追ふものは追はるゝものや走馬燈

父の忌や戸棚の奥の蝮酒

亡き母の財布より出づ蛇の衣

骨相といふかほのある大暑かな

いうれいに訊ねてみたる落し物

幽霊も汗をかくらし夏芝居

らふそくの火が一つ百物語

胆試しすれちがひしは誰ならん

病葉のひとつ舞ひ上げ新宿区

日蝕の後の日盛りめしを食ふ

亡き数のひとの空似も祇園会や

端居して宇宙に暮らす人おもふ

事もなく箱庭の日も暮れにけり

学校に七不思議あり夏休み

大夏野ひき返すには来過ぎたる

上蔟や深空は星の数殖やす

白繭の静謐の夜となりにけり

熱帯夜草木もねむる丑三か

こどもにも掬へて母郷鮴を煮る

すつぽんの生血カクテル暑気払ふ

いま打ちし水いま消ゆるこの世かな

地下街にまた地下のある熱帯夜

たましひのやをら戻りぬ昼寝覚

曝書して昭和時代を旅してをり

たゝなはる山たゝなはる蝉時雨

炎熱や歯並びの良きされかうべ

今生に残りて白し蚊火の灰

口あけて口の数だけ燕の子

頓堀に男前なる夏の月

夏月やふわりと豆腐沈みたる

ひきしほに汐木をかへす晩夏光

夏惜むタクラマカンの石一つ


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