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2015年5月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像5月

三毛猫が黒猫産んで聖五月

薫風も九十九折なす鞍馬山

ハーバーに風を見てゐるサングラス

喪疲れは頬に出でゐてサングラス

渋滞のたゞなか憲法記念日よ

まつすぐに大人を見る眸こどもの日

カンバスはまだ白きまゝ夏が来る

打水や一見さまは御ことわり

水打つて抜かりなかりぬ祇園町

日照雨(そばへ)には日傘をさして先斗町

三条も四条も見えて川床涼し

メロン切る女将のけふの機嫌かな

パルテノン神殿さして蟻の列

夜の蟻這ひて白布を哀しうす

木の根道山の蟻にはかなはざる

山蟻の何より山を悉る歩み

嶮にして泉へつゞくけもの道

大寺に大蟻の国ありにけり

掛香や灯りて昏き先斗町

香水や未だ源氏名より知らず

水打つて創業三百五十年

水打つて暮色とゝのふ祇園町

マネキンの眸みづいろ夏帽子

たかむなの早やも長髄彦の丈

少年と少女の秘密麦は穂に

麦秋の納屋に終りし少年期

紙魚走りゐる『或阿呆の一生』

永らへよ『ゲバラ日記』のきららむし

したたかに浮世草子のきららかな

病床の目に蝸虫の迅さかな

フリージアけふも香りてけふも病む

タンポポも占領されし平和かな

青松の白砂を借りて蟻地獄

分け入つて蚋に喰はるゝ山頭火

とある日の仏足石に蜥蜴の尾

微動だにせぬも守宮の自由かな

書く事もなしと書く日記夜の蟻

業平の終の栖の苔の花

CoCo壱のカレーの香り夕薄暑

いつ来ても誰かたたずむ未草

鵜籠へとみづから入りて鵜の帰る

風聞の蛇がだんだん大きくなる

蛇に遭ひ遂に神とは邂はざりき

懸葵機嫌ななめの牛の啼く

飾られて葵祭の馬となる

かげろふの中へ去にゆく賀茂祭

コクリコの碑に触れてゆく夏の蝶

右源太といふもゆかしき貴船川床

老鶯や息継ぎ水のこんこんと

奥の宮へと大いなり夏木立

白妙の小流れに遇ふ青葉闇

更衣一生傷といふがあり

日を送り月を動かす牡丹かな

一汁一菜一人暮しの涼しさよ

夕焼小焼ひとりの飯はすぐ炊けて

掻い抱けば仄と螢のにほひせり

ほうたるの今宵をとことをんなかな

一雨の予感に揺るゝ夏のれん

水更へて金魚に鳴らすモーツァルト

なきがらに蟻群れてゐてしづかなり

人生のどのあたりなる夕焼川

清水の舞台より翔つ夏の蝶

見てしまひぬ毛虫の一つ二つ百

父の死後艶の失せたる竹夫人

軋みしは己れの五体籐寝椅子

片蔭もゆかしき京の町家筋

蕗を煮て町家の奥の暗きかな

簾を垂れて祇園新橋灯しごろ

金魚死す或る日誰かの身代りに

プール蒼く静かに世界記録生む

ゴリラは怒つてゐる我は氷菓舐む

美しき距離ハンカチのなほ振られ

涼しさの譬へば窓のある封書

鮎食うて六腑に香る貴船川

若者が一人帰らず海夕焼

朝焼や誰かきれいに死ぬ予感

夏祭をとこに風の立ちにけり

扇風機めし屋の壁に裕次郎

時にジャズたゞの騒音大西日

夕立あとなかなか香る東京都

忘れゐし魚と眼の合ふ冷蔵庫

仏壇の水に泛く火蛾死んでゐず

事無げにけふも昏れゆく蟻地獄

つかの間の端居をよぎる過去未来

気がねなく余生をつかふ端居かな

夕景のいつしか夜景ビアホール

美しき独断薔薇は崩れけり

冷し中華午前零時の街にひとり

すゞしさや死ねば原子になる話

すゞしさや星に生死のあることも

滝壺の恐ろしければ又覗く

滝となり又滝となり又滝と

臨終ののち風鈴の鳴つてをり

旱天や紙の葬花の紙の音

斎の座に酔ふ鰻屋の二階かな

金閣の金を見すぎし霍乱か

みづうみの夜雨すがしき洗鯉

女人より泊めぬ禅林沙羅の花

化粧ふれば舞妓は暑さ忘じけり


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