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2014年12月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像12月

山眠るふつと活断層のこと

三十六峰しめし合はせて眠るかな

空箱の中に空箱十二月

御破算で願ひましては十二月

顔見世や松葉の蕎麦もお目当てゞ

密やかにこひびとと逢ふ年忘れ

止まり木のいつもの席の年忘れ

夜雨そと初雪となる別れかな

枇杷色に屋台はともり雪催

冬深し標本室の千の蝶

みちのくの伏目のこけし冬深き

猟銃に色気の如きもの光る

これやこの枝垂桜の枯木かな

南窓開けて茶の花日和かな

手を浸けて海ぬくかりし水仙花

水仙や怒濤いくつも見てゐたる

狛犬の阿吽の分かつ霜の花

山眠りゐて石英は水晶に

短日を曲り損ねし事故ならん

風邪引いて一所懸命眠りけり

休校の砂場に遊ぶ風邪の神

風花は都をさして荼毘の空

初雪は水子のために降りにけり

自動車も静かなオブジェ深雪晴

酒ばかり届くを恥づる歳暮かな

賀状書き了ふ皓々と月ありぬ

しぐれねばならぬ如くに小督塚

長考に沈みゆくなる襖かな

裸木の膚(はだへ)艶めくネオンかな

剥製の鷹翔つかたち冬座敷

十二月八日未明の放屁かな

ちちははの世より住みなす隙間風

人生の誤算のごとし隙間風

炬燵居の脳の大部を使わざる

今にして遠火事に似る青春よ

日記買ひ川の行く方見てゐたり

邂逅や哲学の道枯るゝ中

鷹の眼が我には見えぬものを見る

寒雀遊ばせたまふマリアさま

猫さまの家来となりて冬籠

倖せか余白の多き日記果つ

大原はけふも雪積む牡丹鍋

猪鍋の煮え立つ比叡颪かな

熊出でし山にも市制布かれあり

狐より賢からざり狐罠

火事跡を離れぬ犬のをりしこと

ロボットの犬撫でやれば冷たさよ

酌下手の汝を愛しむおでん酒

一つ翔つと皆翔つあはれ都鳥

昔男ありけり老いて着ぶくれて

炬燵猫ときどき出でて美食せる

点鬼簿にわが知らぬ名や冬の星

ひとり碁を打つ音響く枯山河

落日を一鳥よぎる枯野かな

ひたすらに一點となる枯野人

行く年の動く歩道を歩いてゐる

清水へ七味を買ひに冬うらら

おほきにといふ妓の言葉冬ぬくし

冬凪いで猫日和とぞなりにける

枯園の一人と一人かゝはらず

冬耕の一人にとほき一人かな

いづくへと行く靴音や夜半の冬

冬の蝶大きあを空残しけり

雪の京むかしのキネマ見るごとし

約束の刻を守りし白息よ

美しき真顔に逢ひし雪の町

曲つても曲つても迷路雪女郎

猿山の猿も驚くくさめかな

たゞならぬ男が曳くや夜鳴蕎麦

焼鳥やをとこの背中みな哀し

面白うなりさうな夜や京に雪

昼月のかくも清らに年の暮

残骸もまた旨かりし鮟鱇鍋

牡蠣食うて賀茂鶴酌みて呉にあり

爆心の鬼哭の街の虎落笛

音消して救急車去る寒夕焼

寒夜行き人ゐぬ怖さゐる怖さ

年の瀬の背中押されて足が出る

年の瀬をやをら過りぬ霊柩車

生き死にを篩にかけて年歩む

佳き墨を買ひて天皇誕生日

若き日の悔いが犇く冬銀河

雪つぶて雪へ抛りて一人なる

満目の枯を見てきし深睡り

しぐるゝや立食ひ蕎麦も薄味で

洛中の朝餉つましやすぐき漬

街師走イエスに似たる瞳と遇ひぬ

反故焚けば極月の火の美しく

着ぶくれの人さし指の静電気

ヴィーナスの一粒のほか世は凍つる

仕事納め大時計の内部掃く

流水のごとひとゝせの過ぎてけり

顔見世も千龝楽やゆりかもめ

年越の観念したるしゞまかな

大年の大きしゞまを星流れ

年歩む大き静寂ありにけり

一服の紫煙のゆくへ除夜の星


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