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2014年11月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像11月

鳴く鹿に小糠雨降る宵も来ぬ

11月1は淋しき数字なり

一対の白狐に視られ神の留守

鮑入り和風バーガー文化の日

うかうかと小春日和の暮れかゝり

蝶一つしまひ忘れし冬日和

紙ヒコーキの宙返り小春風

恋人の名前はふゆ子冬よ来よ

遠むのみ十一月のはうき雲

ひととせや冬の服より一名刺

蟷螂の首を傾げて枯れてをり

もみぢ且つ散りゐて祇王祇女の墓

一葉の喪中欠礼冬に入る

ジョン・レノンおもひださせて時雨かな

八ツ橋を焼いてゐる香や初しぐれ

花買へばしぐれて和泉式部町

三条に大橋小橋しぐれけり

しぐるゝやむかし揚屋の細格子

色町に抜け路地いくつ小夜時雨

祖母静江享年三十しぐれけり

洛中は花の盛の屏風かな

絵屏風のいづれが光源氏なる

冬怒濤さらに激しき次を待つ

手袋の右手(めて)喪ひて左手(ゆんで)捨つ

落とされし片手袋の流転かな

大原女の真白き脚絆冬に入る

中年のまた流れつくおでん酒

中年の自虐も楽しおでん酒

天井を電車の走るおでん酒

もう一人詰めれば坐れおでん酒

湯豆腐や玻璃にけぶれる嵐山

西陣の機織る音や日短

京を見て鳥の眼となる屏風かな

消しゴムで消せば済むこと冬の虫

室花か造花か分かず精神科

大阪のやくざな奴とふぐと汁

てつちりは好き大阪は嫌ひどす

狐火も座敷わらしもダムの底

しぐれては祇園の燈し華やげる

忠興とガラシャのねむる冬紅葉

雑炊にお開きとなる六腑かな

暮れてより裏手にまはる虎落笛

本能寺址の暗闇もがり笛

清水へ七味を買ひに冬うらら

この路のみるみる銀杏落葉かな

冬霧の底ひに響む五番街

死とはその脱ぎし手套のやうなもの

天狼やおのれ支ふるアフォリズム

苺ジャム煮てゐる香り小春空

冬海に真向ふ鬼の面つけて

マキノより冬めいて来ぬ湖西線

運命のせゐにしてゐるおでん酒

枯蟷螂なほ正眼に構へけり

女傘をとこが差して朝時雨

日向ぼこおなじ日向を鳩あるく

さびしらに陸(くが)を見に来る鯨かな

狼の絶滅以後の堕落かな

冬眠なき人類に鳴る目覚しよ

幸福の木にうすぼこり冬館

透明のガラスの破片寒波来る

人参を微塵にすれば食ぶるひと

亡き父のものも一枚重ね着て

外套が臭ふ世に狎れ人に狎れ

海鼠から宇宙におよぶ夜話となり

なんぴとが始めに食ひし海鼠かな

音もなく怒濤砕けて煖房車

あすのため冬の怒濤をいくつも見る

ソプラノの響きあまねく冬銀河

ゆきずりの嬰泣きやみぬ聖樹の灯

風花やはんなりといふ京言葉

御仏のまへ冬帽子脱ぎたまへ

我がために紅き花買ふ寒暮かな

寒灯をいくつも点し一人なり

底冷の底を奔りて蒼き川

底冷の紫がかり比叡昏るゝ

千年の古都の川音浮寝鳥

煮凝や町家の冷えも懐かしく

銃声のたび青まさる狩の空

あをあをと大白鳥の大空よ

止まり木にひとり勤労感謝の日

北風や耳はかなしき岬なる

冬の孔雀少しく人を集めをり

冬の園機械に礼を云はれけり

粘菌を視る虫眼鏡冬ごもり

冬籠るつむりの中の詰将棋

ユダのごと髭たくはへて冬籠

うつくしき昆虫図鑑冬ごもり

ひきしほの美しかりし湯冷めかな

北風や貝殻なべて深手負ふ

焼鳥や資本論など聞かされて

冬の蝶供華より供華へ翔びにけり

冬の蝿存ふるとは咎に似て

クリスマスツリー角を曲れば裏社会

凍夜ふと街角に降る電子音

レンズに土星蒼かりし湯冷めかな

つぐみ焼昭和もとほくなりにしよ

帰り花仏の母につぶやくも

三寒の四温の兆す雨気かな

母遺す編みし毛糸の未来形

寒林にこゑ美しく禽の棲む

オロシヤの舶を怖れず冬かもめ


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