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2014年10月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像10月

菊月や錦にそろふ旬のもの

鳥は翔び人は歩みて菊日和

ふりむけばすでにたそかれ柳散る

かにかくに白川に散る柳かな

柳散るぎをん新橋巽橋

更けてより華やぐ花街柳散る

釣瓶落し宇治の早瀬に見了んぬ

古池も完全な青十月よ

髪切ればこころも変る鵙日和

をはりあればはじまりありて鉦叩

百獣の王の瞑想秋深し

秋深き音をあつめて地獄耳

傷みたる木馬もまはる秋夕焼

青春の一つのりんご齧り合ひ

いわし雲胸一杯にひろがりぬ

秋雲やフーテンの寅永遠なり

いつか死ぬ話してゐて高き空

鬼の子の鬼ともならず揺れてをり

二階には二階の風や雁の声

霧の夜の掌の中の手の繊かりし

つれづれの手のひら白き秋思かな

爽やかに何も持たざる手がふたつ

秋風や最後に拾ふのど仏

キネマ出て釣瓶落しにまぎれたる

真顔とは寂しきかほよ秋の水

秋燈や自問自答の夜も更けぬ

秋郊や雲の影追ふ雲の影

三叉路は別るゝために秋の蝶

身のうちの鬼を宥むる温め酒

露の夜の星にも生死ある話

あをあをと蟷螂飢ゑてゐたりけり

なんとなくキリストに似る案山子かな

たれかれのそびらがとほし秋の暮

日の本の色となりたる熟柿かな

この辺りむかしのままや木守柿

神妙に猫のはんべる障子貼り

末枯や結びたる実は朱を尽くし

黄落の水の迅さとなりにけり

デッサンの線走らせて黄落季

耳塚といふ虫の闇ありにけり

鈴虫や寝物語のとぎれがち

柿干して御歳百になりたまふ

初鴨や洛北の水青まさる

松手入せし香あふれて妙心寺

生きて死ぬそれだけのこと天の川

十三夜茶屋の格子も古びたる

后陵秋のてふてふ頻り舞ひ

色鳥や飽かず眺むる洛外図

松茸の辺に悪びれず毒きのこ

指にまた包帯をして夜学生

ゆく秋のすゝみ癖ある時計かな

真夜覚めて秋を深むるひとりごと

色鳥の色に焦がれてわび住めり

化野やきのふのけふを秋時雨

読みさしに戯曲閉づれば露時雨

穂芒のあつむる風のやはらかし

草の絮空想旅行してゐたる

死火山にしてめくるめく紅葉かな

町川に落ち町を去る一葉かな

この天の高さに思想掲ぐべし

時計とふ非情の機械夜業人

夜業人なべて機械のしもべなる

脳のこと考ふる脳冷ゆるなり

ふるさとの秋の昼寝によき柱

燕去り俄かに錆ぶる山河かな

木守柚子一つが空に充満す

冷やかに裏切る猫を愛しけり

まつすぐに逃げて猪撃たれけり

空瓶にコスモス挿して独りなる

雁のこゑ暦剥ぐこと淋しうす

惜秋や骨董街をたもとほり

惜秋や塔より塔の影長く

飲食(おんじき)の短さ夜の長さかな

しあはせを装ふ秋果盛りにけり

玲瓏と霜降の空ありにけり

ひとけなき花魁の墓櫨紅葉

逢ふまじと決めし水草紅葉かな

かの人をおもひつめたる紅葉かな

秋深む十人十色のよそほひに

霧の夜の抱き寄せやすき肩なりし

深々と菊の香を吸ふ訣れかな

柿喰へばはらわた冷ゆる大和かな

銀木犀府立図書館閲覧室

風立てば風に身構ふ蟷螂かな

猿酒を猿と酌みける佳き夢よ

居酒屋の意外の混みや秋霖雨

小栗栖(おぐるす)に光秀の藪穴惑ひ

冷まじや紙の葬花の紙の音

大谷を埋め尽くす墓天高し

一塵の如く吹かるゝ秋天下

つきつめて考へてゐる秋燈

穂絮飛び宇宙膨張してやまず

鳩吹いて帰るむかしのありにけり

仏壇の塵を許さず菊かをる

北山の杉の匂ひや新豆腐

鳥渡る宙に起伏のある如く

有耶無耶にしておくことも温め酒

独り酌む酒人肌にあたゝめむ

ひとづまと訪ぬる嵯峨の薄紅葉

乗換へてまだ蹤いて来る草虱

好晴のつづく秋思のつづくかな

猫抱きて猫につぶやく夜寒かな

鳴き砂を鳴かせて秋を惜しみけり

門灯の守宮と秋を惜しみけり

昧爽に醒むるこのごろ素嗄れ虫

さらばさらばよ霧といふ闇の中

すさまじき川あり高層街の底

剥げさうな季寄せの表紙冬隣

冬帝は比叡より京を窺ひて

好く晴れてけふは秋刀魚を焼く日かな

月のみの知る道化師の素顔かな

城址に佇てば聞こゆる秋のこゑ

鬼が先づ親に呼ばれて秋の暮

かげぼふしより歩き出す秋の暮

半眼に猫の見透かす長き夜

秋惜むみたらし茶屋の外床机

うまさうな酸素を吸ひに星月夜

銀閣と色なき風の中にゐる

季寄せの背繕ふことも冬支度

秋蝶の何かせはしき花背かな

菊月をひと美しく闊歩せり

サンドウィッチマン雑踏に老ゆ鰯雲

ゴリラにもゴリラの秋思眼が合ひぬ

草の絮ふつと現し世抜けてゐる

美(は)しき石拾ひて嬉し秋の川


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