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2014年9月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像9月

秋の夜の振子時計の振子音

秋雲や十で神童いまいづこ

秋めくや海のもの着く二條駅

横浜の九月の沖を見て飽かず

コンピュータひとり働く星月夜

一粒の露の中なる太虚かな

あさつてに食べ頃になるラフランス

地球まろく葡萄一粒づつまろし

凶年をきれいな蝶の舞ふことよ

大陸の匂ひのしたる落花生

蓑虫の揺れゐて遠き昭和かな

父が炊き母に供ふる零余子飯

萬籟のなか鉦叩まぎれなし

鬼の子の宙ぶらりんの流転かな

男 坂 又 男 坂 法 師 蝉

水筒の番茶がうまし野菊晴

木の家が木の音立つる夜半の秋

詩の話より死の話へと夜半の秋

眉月の産寧坂の二階かな

虫売のそれは静かな男かな

ひとつぶの栗の貫禄丹波かな

声量のゆたかなる空鳥渡る

うかうかと昏れかゝりたる茸山

草相撲痩せぎすの子が勝ちに勝ち

名にし負ふ蛇塚にして穴まどひ

日の本の秋の暮なる藁火かな

水澄みて近江に富士のありにけり

初鵙に紺碧の空ありにけり

流星や十七文字の訣れの詩

上野発芋煮会へとかへる人

金銀の鯉のたゆたふ良夜かな

風の名もかはりて鮎は落ちゆけり

ありなしの風に我揺れコスモスゆれ

久闊の京の松茸づくしかな

雁渡し老婦が吹くと云へば吹く

うなじより人は老けゆく雁のこゑ

くもりのち小鳥来てゐる金閣寺

石庭をまへに瞑(めつむ)る昼の虫

西鶴の日に穴に入る蛇を見し

祇王寺の庭より昏れて竹の春

竹春の門よりまゐる天龍寺

銀閣に銀箔あらず秋のこゑ

黒猫の眸の金色(こんじき)の無月かな

十六夜の家路をいそぐ理由なく

忘じたるひとの名一つ秋の虹

蟷螂が畳に遊ぶ天気かな

百年の生家の闇のつづれさせ

うつくしき北嵯峨の雨新豆腐

番地には既に家なし猫じやらし

乙訓の風あをあをと竹の春

ダージリンと手作りケーキ小鳥来る

「考へる人」は考へ小鳥来る

野仏の久遠の微笑(みせう)小鳥来る

露けしやひとり占ふトランプに

秋燈や芸妓老いにし畳の上

ねもごろに紅を注しゐる竜田姫

愛憎のあはひを揺るゝ曼珠沙華

亡くなりて本名を知るすまふとり

老犬が老人を曳く秋夕焼

コンドルが金網を咬む秋夕焼

下町に電線多しいわし雲

竹を伐る音かぐや姫の昔より

天守閣址に佇む秋のこゑ

放たれし囮のとまる囮籠

いとうりが曲がり初め詩が生れけり

秋水や急ぎて過ぐるものばかり

北行きを上ルと云ひて秋暑し

実柘榴の見事裂けたる吉事かな

医のゆるす一合の酒温めむ

自分史に落丁の章蚯蚓鳴く

右手より左手冷ゆる理由あり

ひとりとは耳敏きこと秋のこゑ

おもひだす女の体温火恋し

松花堂弁当に秋闌けにけり

忘れてもいいことばかり草の絮

然らばとふ男のことば秋燕

小鳥来て弘法さんの日なりけり

落鮎の過ぐる離宮の畔かな

くもりのち晴れてときどき秋愁ひ

うつくしき山の容(かたち)の秋思かな

をととひはすでに昔日秋の蝉

調律の済みたるピアノ涼新た

とほき日のとほき秋雲見てゐたり

誰彼にひとひらの背な秋の風

花道や背なで泣きをる負すまふ

わが推理迷宮に入る夜長かな

長き夜の猫のお相手致しけり

わらんべのうしろの正面秋の暮

みづ色の空そら色の水小鳥来る

まぼろしの竜よ麒麟よ天高き

きぬぎぬのもの言はざれば草雲雀

鬼がゐてうはばみがゐて濁酒かな

鵙の贄人目に触るゝ高さにて

宵闇の窓辺にをれば二胡噎ぶ

さやうなら空のまほらへ秋の蝶

化野に蝶見てよりの秋思かな

この秋思よみひとしらず読みてより

水バーに水を味はふ銀河かな

明く暗く桜もみぢの盛りかな

粧へる山ふところの荼毘の径

祇王寺の滝口寺の初もみぢ

長き夜の猫とはオセロできぬなり

コリーにも笑顔のありて花野風

乗換へてまだ蹤いて来る草虱

明朝体うるはし灯火親しめり

弥次郎兵衛静止して水澄みにけり


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