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2014年8月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像8月

八月の濤とたゝかふ砂の城

高層街衢八月の落葉せり

熱帯夜草木も眠る丑三つか

濤は己(し)が重みに崩れ夏の果

正視してをとこ心の桔梗かな

朝顔の紺を愛する家系かな

遍く主はいます糸瓜曲がり初む

かなかなのこゑのみ透きて杉襖

かなかなや俄かに昏るゝ貴船川

蚯蚓鳴くさすが六道珍皇寺

存在をかそけくすれば蜻蛉来る

校庭にだあれもゐない法師蝉

かなかなの鏡の中の鏡かな

夏惜むタクラマカンの石一つ

冷房の効きゐて壁に原爆図

天衣なる霧霽れ摩周ブルーかな

再会を誓ふシスコの夜霧かな

芋の露笑ひころげる天下かな

露の世に坐りなほして飯を食ふ

白露やたまたま人に生れけむ

サンダルについてきし砂夏終る

残暑とは猫の抜け毛のやうなもの

満室のカプセルホテル原爆忌

蛇口みな虚空を向きて広島忌

ひしひしと石積むが見ゆ広島忌

銀漢やプラットホームは岬なる

銀漢や抜けたる一歯屋根に捨つ

どぶろくや此処は銀河の番外地

自転車で2マイル帰る銀河かな

久闊の送信二秒天の川

銀河より漁火ひとつ帰り来る

東京が淋しくなつて秋立ちぬ

かはたれの濃き珈琲に秋立ちぬ

坂道に影の蝶生れ長崎忌

饂飩にもきつねとたぬき西鶴忌

踊りの輪囲み踊らぬ輪のできる

みちのくの或みちのべの男郎花

見えてゐる一樹が遠し秋の蝉

秋蝉をあつめて広し妙心寺

ふり向けば既にたそかれ秋の蝉

ぎす鳴いて関東平野しづかなり

きりぎりす昔男に鳴きにけり

バッタ跳び亜細亜大陸蒼茫たり

比叡より比良へと秋の蝶となり

秋蝶を日暮れの色に見失ふ

狐面つけてまぎるゝ秋祭

この道になまへはなくて明治草

八千草のどれもゆかしき名をもちて

坐しゐても心そぞろや萩の風

稲妻のふところ深き丹波かな

うしろより牛に啼かるゝ盆の月

過去帳に水子がひとり茄子の馬

この川を京へ流るゝ盆供かな

東京の空のすがしき盆休

東京に不二見えてゐる終戦忌

恐竜展見てゐて残る蚊に喰はれ

初秋の雲の影追ふ雲の影

美しき数式はあり秋の雲

大文字消えし祇園の灯にまぎる

つかの間の逢瀬となりぬ大文字

秋の蝶水琴窟を聴きにけり

をととひはすでに昔日秋の蝉

まぼろしの巨椋(おぐら)の池の秋茜

からだよりこころ疲れて螻蛄の夜

あした死ぬ蜉蝣に透く夕山河

芙蓉咲く駅を乗り継ぎ黄泉の祖母

星流れ千夜一夜のものがたり

セロ弾きがセロ抱きて寝る星月夜

月光のダム月光の一縷吐く

ピエロまだピエロのままの夜食かな

止まり木に女将がひとり月の雨

花野風ここは鈍行のみとまる

大花野こどもがふつとゐなくなる

のら猫にノラと名づけて花野かな

花野ゆくいつか一人になる二人で

まだ過去にならぬ移り香秋扇

鳳仙花一所懸命爆ぜにけり

ひとけなき松虫草の盛りかな

鈴虫や夢のはじめに水流れ

京町家奥に鈴虫鳴かせをり

きぬぎぬを弱き雨降る草雲雀

ちちろ鳴くやはらかき闇を生家とす

各駅に停まる虫の音に停まるかな

化野のまつくらやみの鉦叩

落柿舎の殊に裏手の虫しぐれ

虫の夜のなかなか寝顔美人かな

革命の霧のなか霧うごきをり

うたよみをかなしうしたる秋の雲

新涼のイノダコーヒのテラス席

昼の灯を点して淋し萩の雨

千年の水千本の萩の花

大阪の水のにほへる残暑かな

何や彼や手に提げてゐる残暑かな

稲の香やみちのくは青の国なる

精魂の充満したる葡萄かな

有の実をいのち少なき母に剥く

仮病われに母は林檎を剥きくれし

爽やかや死ねば原子になる話

秋風の京に七口ありにけり

歩まねば径も消えゆく秋の風

秋風や一つ喪ふ永久歯

斎場へつづく矢印秋の風

日時計の影鋭角に帰燕かな

水面はや夕べのけはひ河鹿笛

川あれば川のかゞやき秋めきぬ

秋の灯に故人の句集多きこと

をんなよりをやま美し秋燈

台風の置いてゆきたる鼠かな

ひとづまと逢ふ台風の目の蒼空

白鳥座研ぎ澄ましたる野分かな

流れ星たかが人生ではないか

夜業人なべて機械のしもべなる


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