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2014年7月の俳句
田畑益弘  俳句新作


新着情報 画像7月

浪速は夏やおつちやんのヘボ将棋

刑務所のほとりに佇てる白日傘

法然院さまの下闇長ゐして

猿山にひと騒ぎあり旱梅雨

七月の人をいざなふ無人島

無人島ひとをゆるして夏旺ん

傍にゐて水着の娘はるかなり

眼下夏海あをあをと魔が誘ふ

よべのこと蚊遣の灰の渦に似て

室町も二階囃子の夜風かな

あぢさゐの尚あをあをと七七日

曖昧な色もなかなか七変化

山椒魚人間嫌ひに徹しけり

白日傘楼蘭城址に忘れあり

炎天へふらんすの水買ひにゆく

ゆびさきに覚えなき傷朝の虹

斑猫や京の終なるみささぎに

京のものなべてあえかや川床料理

京ことば舞妓は炎暑やりすごす

また太き雨が降るなり鉾祭

けふの蝉かの日の蝉や忌を修す

藪蚊鳴く寂一文字の墓の裏

東山暮れても青き麦酒かな

雨降れば雨を愉しむ籠枕

エマヌエル夫人がひとり砂日傘

避暑の宿ピンポンばかりしてゐたる

頭の中を真つ白にして蝉が鳴く

青嶺より望む母郷の青嶺かな

サントロペ水着濡らさぬ夫人ゐて

チャウシェスク倒しし弾痕灼けてゐし

しまひまで線香花火よくよく見る

手花火の向う三軒ひとりつ子

鱧買うてけふに始まる鱧祭

涼しいね淋しいよねと夜のファクス

雲の峰をんなが四股を踏んでをり

遠花火あなたは別のことおもふ

ヤマトンチュと呼ばれ泡盛ふるまはれ

泡盛にたくましきかな島野菜

百足死し遅れて百の足が死す

毘沙門の使ひの百足殺めける

懈怠なく生きゐて蟻と蟻地獄

母の眸に少しく痩せて帰省かな

ふるさとの先づはおはぐろとんぼかな

人妻と蛇のゆくへを見てゐたる

蛇這ひて毫も汚れぬ身をもてり

自転車で行けるだけ行き蛇捨つる

無辜の民無辜のくちなは搏ちにけり

蛇に遭ひ遂に神とは邂はざりき

風聞の蛇がだんだん大きくなる

サングラス未だに坊と呼ばれをり

夏痩せて御歳百に叱らるゝ

夏痩せていよいよ火酒の旨かりし

たゞ灼けて芹沢鴨の小さき墓

玉虫や形見も減りし桐箪笥

こいさんも初の浴衣の三姉妹

地下出れば祇園囃子の最中なる

けふは未だ宵々山の嬉しさよ

宵山をぬければ洛中真くらがり

肩車され宵山の空をゆく

清正の鎧も屏風祭かな

腕時計せぬ腕かろきハンモック

ハイヒールに足踏まれたる巴里祭

茹で過ぎて黒ずむ卵夏あらし

夏旺んなり蟻喰は蟻を喰ひ

蝉しぐれ京に七口ありにけり

なかなかに戻らぬ恋のボートかな

緑蔭や二人ときどきものを言ふ

熱帯夜スパークリングワインでも

つれづれに聖書読むなど避暑ホテル

避暑の宿長野日報など読んで

頭の中を真つ白にして蝉が鳴く

生きて死ぬそれだけのこと蝉時雨

いうれいに訊ねてみたる落し物

幽霊も汗をかくらし夏芝居

らふそくの火が一つ百物語

胆試しすれちがひしは誰ならん

風入や古き写真に泣けてきて

七月も後祭とぞなりにけり

事もなく箱庭の日も暮れにけり

学校に七不思議あり夏休み

骸骨に袋かぶせて夏休み

大夏野ひき返すには来過ぎたる

夏の河ふぐり濡らして徒渡る

夏負けや絶壁としてビルが屹つ

ハツといふ心を食べて暑気払

骨相といふかほのある大暑かな

上蔟や深空は星の数殖やす

白繭の静謐の夜となりにけり

あの世とはきつと退屈走馬灯

日盛りの御町内ちふしゞまかな

まつすぐな胡瓜つまらぬ世となりし

夏痩て火の酒いよゝ美味かりし

尺取の一枝加ふる青山河

でで虫のゆつくりいそぐ浄土かな

炎昼の未来が歪む道路鏡

座の釜に蓋なき劫暑かな

残念なき蝉の骸のかろきかな

夜の蟻よ国捨てゝ来たりしか

日盛りの蟻の仕事のしづけさよ

風鈴と筆と硯と佳き墨と

いま打ちし水いま消ゆるこの世かな

ひとつ落ちて死ぬる蝉ゐる蝉時雨

天体となれぬ砲丸雲の峰

昼寝人しみじみ足の裏大き

父の忌や戸棚の奥の蝮酒

亡き母の財布より出づ蛇の衣

夜の秋の星空浴に君の星

追ふものは追はるゝものや走馬燈

喪の酒にゑふ鰻屋の二階かな

茂るまま茂りて過疎化高齢化

わが生のどのあたりなる夕焼川

もう読まねど『されどわれらが日々』曝す


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