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2014年6月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像6月

七曜の早くもめぐる四葩かな

噴水の翼たゝみし星夜かな

若者が一人帰らず海夕焼

朝焼や誰かきれいに死ぬ予感

香水を更へたるひとをいぶかしみ

軋みしは己れの五体籐寝椅子

片蔭もゆかしき京の町家筋

蕗を煮て町家の奥の暗きかな

簾を垂れて祇園新橋灯しごろ

父の死後艶の失せたる竹夫人

冷素麺ひとりぼつちのしあはせよ

金魚死す或る日誰かの身代りに

プール蒼く静かに世界記録生む

見てしまひぬ毛虫の一つ二つ百

ゴリラは怒つてゐる我は氷菓舐む

ほととぎす智恵子の空を鳴きわたる

空梅雨か首を反らせる陶の亀

扇風機めし屋の壁に裕次郎

美しき距離ハンカチのなほ振られ

鉛筆に木のかをりしてついりかな

ハチ公はとはの忠犬梅雨滂沱

鑑真の聞きおはします梅雨の闇

学校に七不思議あり五月闇

淡墨に暮れてうつくし梅雨の京

キームンの香りの向う梅雨の街

時にジャズたゞの騒音大西日

鮎食うて六腑に香る貴船川

夕立あとなかなか香る東京都

美しき思案のさ中梅雨の蝶

梅雨晴のイノダコーヒのテラス席

梅雨晴や生八つ橋を焼く香り

白川やかくも静けく梅雨流れ

気がねなく余生をつかふ端居かな

涼しさの譬へば窓のある封書

回送の涼の一塊よぎりけり

夏祭をとこに風の立ちにけり

六月の樟の香の雨降りにけり

蟇われ在るゆゑにわれ思ふ

百の豚百の鼻ある溽暑かな

梅雨闇や壜の中なる日本丸

かのひとも窓辺に佇ちて梅雨の人

いくたびも寄る同じ窓同じ梅雨

事無げにけふも昏れゆく蟻地獄

茶漬飯食うて参ずる真夏の死

みづうみの夜雨すがしき洗鯉

女人より泊めぬ禅林沙羅の花

つかの間の端居をよぎる過去未来

ハツといふ心を食べて暑気払ふ

五月闇標本室の蝶にほふ

一服の向精神薬梅雨の蝶

人類の脳重すぎる黴雨かな

忘れゐし魚と眼の合ふ冷蔵庫

容赦なく急ぎ去るもの蚊遣香

蝮酒むかしの父は恐かりき

父の日の機嫌の悪きゴリラかな

父の日の父さりげなく旅にあり

年半ば梅雨最中なる不如意かな

扇風機おのれを熱くしてまはる

太陽を一個残してラムネ干す

舞妓けふ暇の絞り浴衣かな

化粧ふれば舞妓は暑さ忘じけり

ひとつづつともしび消えて月涼し

たゞ一机たゞ一硯のすずしさよ

そのむかし駄菓子屋ありし片かげり

水鉄砲こどもになれるかも知れぬ

清水の舞台より翔つ夏の蝶

狂ほしく火虫舞ひをり死が近し

国捨てゝ来て夜の蟻の彷徨へる

薄命の遊女に供ふ著莪の花

夕景のいつしか夜景ビアホール

朝焼褪せ高層街衢起動する

たれかれに吠ゆる痩せ犬日蔭街

七曜のおほかたは雨七変化

影来り止りて髪切虫となる

決めかぬる明日シャワーを全開す

出水して戻らざる亀太宰の忌

仏壇の水に泛く火蛾死んでゐず

天龍寺さま境内に氷菓舐め

この下闇を祇王寺と云ふべかり

法然院この下闇が好きで来る

夕立を過ごす碧眼本能寺

金閣の金を見すぎし霍乱か

学校に来ぬ子麦笛上手なり

麦秋を大きな風の吹きわたる

山積みのバナナの中の日本かな

昼寝覚ガリレオ温度計ふわり

光年の星のまたゝく端居かな

けさの卵に黄身二つ沖縄忌

空梅雨のはたして騒ぐ群鴉

青鷺の一歩に揺るゝ金閣寺

美しき飴買ひしのみ夜店の灯

滝壺の恐ろしければ又覗く

滝となり又滝となり又滝と

かなぶんになりてかの日へ帰りなむ

子かまきり無数のその後知らざりし

でで虫に捜し物ある銀河かな

見てをればつゆたゝかはぬ闘魚かな

夜の蟻をつまみて夜へ帰しけり

したゝかに浮世草子のきららかな

しづけさのさびしさとなる根無草

おもかげの立ちては消ゆる花藻かな

ハーモニカつたなく鳴るもみどりの夜

男とは孤り泣くもの夏の星

人類の滅びし星のゴキカブリ

故郷の先づはおはぐろとんぼかな

とうすみのゐるやさしさのやのかたち

毘沙門の使ひの百足殺めけり

現し世をいつしかはづれ螢舟

街娼の眼の青醒むる白夜かな

葛切や祇園の燈しうつくしき


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