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2014年5月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像5月

三毛猫が黒猫産んで聖五月

薫風も九十九折なす鞍馬山

ハーバーに風を見てゐるサングラス

喪疲れは頬に出でゐてサングラス

かりそめの水に金魚の一世かな

渋滞のたゞなか憲法記念日よ

まつすぐに大人を見る眸こどもの日

お通しの酢の物の香や夏近し

天摩するビルのかゞやき夏隣

春たけなは植物園の花言葉

一雨の予感に揺るゝ夏のれん

打水や一見さまは御ことわり

水打つて抜かりなかりぬ祇園町

水更へて金魚に鳴らすモーツァルト

掛香や灯りて昏き先斗町

日照雨(そばへ)には日傘をさして先斗町

山国に帝のねむる遅桜

春蚊出づ青磁香炉のほとりより

長閑なるものに帝と鼻毛かな

フリージアけふも香りてけふも病む

タンポポも占領されし平和かな

菜の花や雲の影追ふ雲の影

美しき独断薔薇は崩れけり

カンバスはまだ白きまゝ夏が来る

マネキンの眸みづいろ夏帽子

三条も四条も見えて川床涼し

メロン切る女将のけふの機嫌かな

水打つて暮色とゝのふ祇園町

父に遺書なく籐椅子の窪みをり

水打つて創業三百五十年

病人の目に蝸虫の迅さかな

紙魚走りゐる『或阿呆の一生』

永らへよ『ゲバラ日記』のきららむし

したたかに浮世草子のきららかな

明易やグラスの底の琥珀色

短夜や忘れてゆきし耳飾り

短夜の逢瀬のための時刻表

少年と少女の秘密麦は穂に

麦秋の納屋に終りし少年期

木の根道山の蟻にはかなはざる

山蟻の何より山を悉る歩み

嶮にして泉へつゞくけもの道

微動だにせぬも守宮の自由かな

青松の白砂を借りて蟻地獄

分け入つて蚋に喰はるゝ山頭火

風聞の蛇がだんだん大きくなる

蛇に遭ひ遂に神とは邂はざりき

大寺に大蟻の国ありにけり

うつぶせに臥てゐる女明易し

いつよりを晩年と云ふ夕焼川

高瀬川あくまで浅し灯涼し

真向ひに如意ヶ岳据ゑ夏座敷

書く事もなしと書く日記夜の蟻

夜の蟻這ひて白布を哀しうす

パルテノン神殿さして蟻の列

たかむなの早やも長髄彦の丈

業平の終の栖の苔の花

CoCo壱のカレーの香り夕薄暑

懸葵機嫌ななめの牛の啼く

飾られて葵祭の馬となる

かげろふの中へ去にゆく賀茂祭

蝿とんで清少納言筆を止む

いつ来ても誰かたたずむ未草

梅雨兆す幸福の木のうすぼこり

冷し中華零時の街にひとり食ふ

すゞしさや死ねば原子になる話

すゞしさや星に生死のあることも

夕凪げばサーファーの来るグリルかな

冷酒や放つておいてくるゝ見世

法然院この下闇が好きで来る

この下闇を祇王寺と云ふべかり

木には木の言葉溢れて緑の夜

夏の灯や昭和のにほふ古本屋

驟雨過ぐ箸の先なる箸休め

生れたる蜻蛉の眼に無数の宙

まひまひの舞に落日落ちかぬる

近づいて見て水中花屈折す

千人の千のまなざし花氷

華燭といふ一つの別れ花氷

夕景のやうやう夜景川床座敷

昼寝覚ガリレオ温度計ふわり

竹夫人ときどき愚痴も聴かさるゝ

網戸よりわたしの不在わが覗く

頓堀に男前なる夏の月

夏月やふわりと豆腐沈みたる

火蛾も乗せ東京メトロ終電車

案の定くすぶるばかり毛虫焼く

鵜籠へとみづから入りて鵜の帰る

香水や未だ源氏名より知らず

夜の雷や女に別の貌がある

情死とふ古き死に方誘蛾灯

今はすぐ今でなくなり蚊遣香

亡きひとの好みし香り京扇

薄味は京のならひや夏霞

横浜のネオンを游ぐくらげかな

天近うして人やさしお花畑

とある日の仏足石に蜥蜴の尾

日表ゆ日裏に澄める金魚かな

父も逝き耳に棲みつく青葉木菟

種痘痕うすくもさだか更衣

静脈の腕に透きて新樹光

荒草のみるみる生ひて聖五月

夕焼小焼ひとりの飯はすぐ炊けて

夜の蟻や堂々巡りする思案

日を送り月を動かす牡丹かな

一汁一菜一人暮しの涼しさよ

牛蛙天の穴より雨が降る

眼を開きしまま熱帯魚口づけす

かうもりや七堂伽藍まくらがり

とらへては放つ螢や思ひ川

ほうたるの今宵をとことをんなかな

掻い抱けば仄と螢のにほひせり

手囲ひにほうたるの火はつめたき火

更衣一生傷といふがあり

コクリコの碑に触れてゆく夏の蝶

右源太といふもゆかしき貴船川床

老鶯や息継ぎ水のこんこんと

奥の宮へと大いなり夏木立

白妙の小流れに遇ふ青葉闇

明易のまなこにテストパタンかな

身の内の鬼を宥むる冷し酒


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