田畑益弘俳句の宇宙 ロゴ

2014年3月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像3月

三月の空を去るひと来たる人

春めくや海のもの到く二條駅

朧夜の京に図子とふ小道かな

朧夜の抜け路地いくつ先斗町

京雛や過ぎにし御世のうるはしく

水ぬるむ近江に富士のありにけり

まつさきに手が出て蝌蚪の長子なり

占ひにひらくてのひら星朧

くらがりや女雛の細目おそろしく

鉄棒は嫌ひのままに卒業す

春休み小鳥のやうに早起きし

ジャムを煮て学生妻の春休み

うなじより人は老けゆく鳥雲に

少年の日のローマ字日記鳥雲に

引鶴や別るゝために邂ひしとも

リモコンがいくつもあつて春の風邪

いかなごの釘煮といふも無慚なり

朧夜のそろそろ眠き十指かな

朧夜やろうぢと云ふも京言葉

天井に龍の眼のあるおぼろかな

春休み風のなまへを蒐めけり

爺ぃより婆ぁが元気桃の花

どこからを晩年といふ鳥雲に

鳥雲に志賀にさゝ波あるばかり

紙袋うごいてをれば仔猫かな

春を寝て未生以前を旅してをり

赤き蟻黒き蟻出て交はらず

恙なく今年も出でし蛇に遇ふ

啓蟄やふりがなを読む虫眼鏡

龍馬の目切れ長にして沖霞む

肉じやがの煮くづれてゐる目借時

春昼や生八ツ橋を焼く香り

春の午後京のお菓子の美しく

恋猫の雨にも負けず啼きにけり

万年を生きねばならず亀鳴けり

青空の青をふやして揚雲雀

地虫出ていきなり嘴の先にかな

母子草母逝きてより目につきぬ

春の虹きれいな嘘をつかれけり

花種蒔くや鳥獣はもう飼はじ

蛇出でてやさしき婆の死を知りぬ

虻が来る己が羽音の後ろより

かへりみて蜷の道にも似たること

鉛筆を噛む癖とともに進学す

春光のさゝ波なせる千枚田

豚落ちて黄河の春を泳ぎけり

嘘泣きの女なだめて夜半の春

ハーモニカ拙きが良し春夕焼

光年といふ巻尺や星朧

朧夜の身に九穴のありにけり

テニスコートの君が初蝶になる

イザナギとイザナミ遊ぶ春の泥

逃水や引返すには来過ぎたる

風車不意にシャネルの香り来て

進学し僕から俺になつてゐる

ひとひらの波ひとひらの桜貝

ぼんぼりの灯にひそひそと朧の夜

お持たせの春の三時の五色豆

春燈や明朝体のうつくしく

けふもまた葬に出くはす春疾風

存分に歩きて春の夕焼かな

遠浅の海とほあさの春の空

頬杖に異国をおもふ春の海

啓蟄や欠伸ちふもの伝染し

流氷を一期一会の人と見る

ギモーヴちふ仏蘭西の菓子春の風

春風やたまさかに買ふ時刻表

春光や偶にはバスに乗つてみる

とことはの父母の留守春落葉

かのひとは菜の花好きで薄幸で

薄氷を薄幸と読みたがへたる

うらうらと茶碗は買はで茶わん坂

北野より平野へ花をうかゞひに

春の夜や髪かきあぐる女の香

りんくうインターチェインジ蝶迷ふ

蝶博士蝶を愛して娶らざる

春昼の孤りに蛇口一滴音

少年とわたしの秘密小鳥の巣

あをあをと潮満ち来る初桜

去勢せし猫に出しおく春炬燵

飯を食ふかりそめの世に接木して

化野に胡蝶の空のありにけり

揺り椅子にまた春愁を揺らしをり

花冷のつながつて出るティシューかな

まれびとを待つ花冷の京都駅

春風や手乗文鳥手にのせて

春雷や地下街にまた地下がある

落ちてゆく羽毛となりて春の夢

野遊びの度に大人になるこども

野遊びのコリーに笑顔ありにけり

春宵の家路をいそぐ理由なし

春眠の中でも傾ぐピサの塔

春暁の花のやうなる炒玉子

かざぐるま不意にシャネルの香り来て

麗かや孔雀のまへに長居して

花冷や切子のグラス出してより

タクシーを拾ふ女人や花しぐれ

桜鯛紀淡海峡晴れ極む

鯛の腹きれいに裂かれ花の昼

待ち合すフラミンゴのまへ花衣

老人の眼のすぐ潤む櫻かな

秒針の音聴き澄ます櫻かな

言霊の駆け抜けてゆく櫻かな

花冷やふらんす窓の半開き

花人の中に亡き人ゐるやうで

ふりむけばすべてまぼろし花の道

陽炎や薄暮ゲームと云ひしころ

しづかなる牛の反芻春の昼


BACK  俳句 田畑益弘俳句の宇宙HOME