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2014年1月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像1月

白朮火を護りて上ル東入ル

かりそめの世に遊びせむ初日記

恵方へと魔物の金を持ち歩く

むかひ風立ち来る方を恵方とす

相識らぬ幾万のかほ初まうで

しろたへの嗚呼しろたへの京雑煮

皓々と月はたゞ耀る去年今年

ばつたりと南座まへの御慶かな

遠景に如意ヶ岳据ゑ筆始

ひそやかに一歯喪ふお正月

ワインロゼ互みに酌みて姫始

獏枕亡き人々に賑はへる

高層街衢手毬つく子の一人きり

蝉丸も小町もとられ負け歌留多

てまりうた九つ十で雪になる

止まり木に女将とふたり寒の雨

虚しさのその大きさの雪仏

蜜柑に爪深く悪女かも知れず

待春の一本脚にねむる鶴

鶴のこゑ白日輪の中にあり

哭いてゐる方が勝ちたるラガーにて

寒紅や祇園は昏きところなる

人の日の鏡に早も薄ぼこり

うかうかとけふ人の日の無精髭

独り身を徹す彼女の黒セーター

冬耕のひとりに遠きひとりかな

熱燗や酔うてをらぬと酔うて云ひ

ロボットの犬撫でやれば冷たさよ

狐より賢からざり狐罠

火事跡を離れぬ犬のをりしこと

あづまびと京の底冷かこちける

日向ぼこ抜けてこの世を一人去り

アリバイのごとく点して一寒灯

戻り来し賀状ひとひら寒の星

三十六峰みな名をもちて初霞

賀茂川の真白き鳥も今年かな

妥協せじ寒の断崖見て立てる

老猫を褒めて去にける老礼者

七草粥食べていちにち淡々し

順々に逝きて一人や置炬燵

湯波半の湯気かぐはしく寒に入る

日向ぼこもの哀しさも身に溜まり

恵方へといつか一人になる二人で

成人の日のまだ踏まぬ道の雪

酌下手の汝を愛しむおでん酒

凍蝶のいのちの色の夕茜

寒施行キャットフードを撒くことも

寒泳の老いの抜き手のうつくしく

初旅や柿の葉鮓の葉の香り

おでん屋台とゞのつまりは孤りなる

物干に母在りし日や虎落笛

女正月出前の寿司の届きけり

風花や舞妓のいそぐ祇園町

平凡といふしあはせや餅を焼く

冬凪いで猫日和とぞなりにける

待春や白梅町に茶を喫し

待春の身をひるがへす近江鯉

一駅を歩きて日脚伸びにけり

女礼者いまだに吾を坊と呼び

寡婦よりのあえかに香る賀状かな

獣医より猫のいたゞく賀状かな

寒濤の玉砕といふかたちかな

六根に沁みとほりけり寒の水

北風や拳に固く無をにぎる

買初の元祖みたらし団子かな

枯園の一人と一人かゝはらず

真つ先に翔ちたる鴨が撃たれけり

あはあはと海に雪降る実朝忌

医者がそと微笑むほどの風邪なりし

なまなかな恋にはあらず寒椿

人生の誤算の如き霜焼よ

人生のうしろを見れば寒鴉群る

吊革にゆらりと日脚伸びてをり

薄目してモーツァルト聴く冬の猫

大島渚逝く寒の夜這星 (2013年1月15日死去)

正月の余韻の空気祇園さん

弱き地震ありしを春の近さとも

人体におもてとうらや焚火燃ゆ

家猫のけだもの臭き冬籠

石炭や学び舎の地下怖かりき

大寒のほのほの中の中華鍋

心根に寒柝のしむ旅寝かな

深海の如き夜天や寒の月

あたゝかき冬月なりし逢瀬かな

暮れてより華やぐ小路細雪

薄紙の中の京菓子春近し

四温へと亀がそろりと首を出す

三寒の紐のほどけて夜半の雨

炬燵猫ときどき出でて美食せる

人形の起こせば開く眸春隣

島の灯が真珠のごとし春隣

歌がるた帝の恋も引つ叩かれ

野の宮の苔うつくしき落葉かな

鳰の湖鳰もろともに茜さす

詩を書きて不器用に生き寒の星

寒卵けさあをあをと日本海

湯豆腐や玻璃を拭へば天龍寺

美しき真顔に逢ひし雪の町

大阪にいちにち遊ぶ寒日和

未来あり冬の薔薇の咲くかぎり

樹海にて冬越す蝶に邂ひしこと

冬の蝶とほくより来てとほく行く

冬の蝶大きあを空残しけり

鳥獣に春未だしき高山寺

霙るゝや古町片町廓町

繰り言が母の遺言帰り花

月に出て越のうさぎは白兎

冬の蠅罰があたつて生きてをり

絵双六まこと京(みやこ)の遠かりし

殲ぶとは踏むもののゐぬ雪のこと

まつすぐに寒九の水の腑にとどく

風花や青まさりつつ荼毘の空

群れてゐて孤を守りゐる水仙花

人間に飽きてしまひぬ鷹にならむ

昔男ありけり老いて着ぶくれて

東京に雪降る夜の鮟鱇鍋

空席が一つ密かに冬去りぬ


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