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6月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像6月

舞妓けふ暇の絞り浴衣かな

川床涼み花かんざしの風に揺れ

梅雨晴や生八つ橋を焼く香り

年半ば梅雨最中なる不如意かな

白川やかくも静けく梅雨流れ

回送の涼の一塊よぎりけり

父の死後艶の失せたる竹夫人

金魚死す或る日誰かの身代りに

プール蒼く静かに世界記録生む

ゴリラは怒つてゐる我は氷菓舐む

てふてふに疲れの見ゆる西日かな

気がねなく余生をつかふ端居かな

あの世とはきつと退屈走馬灯

夏祭をとこに風の立ちにけり

ほととぎす智恵子の空を鳴きわたる

冷素麺ひとりぼつちのしあはせよ

涼しさの譬へば窓のある封書

夕景のいつしか夜景生ビール

見てしまひぬ毛虫の一つ二つ百

ジャズ時にたゞの騒音大西日

網戸よりわたしの不在わが覗く

我在らぬ岸を眺むる立泳ぎ

傍にゐて水着の娘はるかなり

空梅雨か首を反らせる陶の亀

かなぶんになりてかの日へ帰りなむ

コクリコの碑に触れもせで鳳蝶

扇風機めし屋の壁に裕次郎

扇風機おのれを熱くしてまはる

子かまきり無数のその後知らざりし

太陽を一個残してラムネ干す

つかの間の端居をよぎる過去未来

ハツといふ心を食べて暑気払ふ

掛香や灯りてくらき祇園町

シナリオになき夕立や野外劇

夕立あとなかなか香る東京都

サングラスよそ者のごと郷に入る

百年の柱を背なに昼寝して

鮎食うて六腑に香る貴船川

捕らへては放つ螢や思ひ川

旱天や紙の葬花の紙の音

いま打ちし水いま消ゆるこの世かな

斎の座に酔ふ鰻屋の二階かな

ヤマトンチュと呼ばれ泡盛ふるまはれ

簡単服ひとは首筋より老けて

浴衣着てむかしは男前なりし

夏の河ふぐり濡らして徒渡る

決めかぬる明日シャワーを全開す

父の日の機嫌の悪きゴリラかな

父の日の父さりげなく旅にあり

夕立を過ごす碧眼本能寺

金閣の金を見すぎし霍乱か

曝書して昭和時代を旅してをり

考への空白くらげ浮きにけり

でで虫に捜し物ある銀河かな

一汁一菜一人暮しの涼しさよ

美しき距離ハンカチのなほ振られ

臨終ののち風鈴の鳴つてをり

冷蔵庫卵が減ると不安になる

人間の罪ぎつしりと冷蔵庫

あぶり餅炙るかをりや梅雨晴間

涼しいね淋しいよねと夜のファクス

外寝して宇宙に暮らす人おもふ

泡盛にたくましきかな島野菜

二十一世紀を歩く黒日傘

コンピュータルームに仄とシャネルの香

眠れよと眠るなと鳴く青葉木莵

保育器に数多のいのちみどりの夜

五月闇標本室の蝶にほふ

猿山にひと騒ぎあり旱空

パルテノン神殿さして蟻の列

カサブランカをんなの香り消すために

風鈴と筆と硯と佳き墨と

ゆふべのこと蚊遣香の灰の渦

蚊火の灰残すこの世といふところ

まつすぐな胡瓜つまらぬ世となりし

溽暑なる白熊さほど白からず

やることもなくて熱帯魚争へる

日盛りの蟻の仕事のしづけさよ

日盛りの御町内ちふしゞまかな

蜘蛛の囲のかなた落日落ちかぬる

西方を探りあてたる蚯蚓這ふ

夏痩て火の酒いよゝ美味かりし

無人島ひとをゆるして夏旺ん

眼下夏海あをあをと魔が誘ふ

女人より泊めぬ禅林沙羅の花

昼顔や寝起きの悪き女なる

蟻の屍を蟻が運びて落着す

夕網のものばかりとぞ夏料理

追ふものは追はるゝものや走馬燈

夜店の灯きれいな飴を買ひにけり

ぶんぶんを愛して不良少年なり

麦笛が上手でいぢめられつ子で

日焼してカレーライスの好きなひと

「通りぬけできます」と路地涼しけれ

お持たせの柿の葉鮓をともに食べ

出水して戻らざる亀太宰の忌

東京の夜景を游ぐ海月かな

新宿を海と思へばくらげかな

見てをればつゆたゝかはぬ闘魚かな

でで虫のゆつくりいそぐ浄土かな

学校に来ぬ子麦笛上手なり

片蔭へ片蔭へ年とりにけり

たれかれに吠ゆる痩せ犬日蔭街

いくたびも寄る同じ窓同じ梅雨

しくしくと腰骨が泣く梅雨の冷

蟇われ在るゆゑにわれ思ふ

茶漬飯食うて参ずる真夏の死

エマヌエル夫人がひとり砂日傘

一筋のをとこの泪サングラス

わが裸体しづかに流転してゐたり

極道の裸身に楚々と臍がある

ひとつづつともしび消えて月涼し

コーラ飲みつつ戦争をテレビで視る

清水の舞台より翔つ夏の蝶

五月闇標本室の蝶にほふ

一服の向精神薬梅雨の蝶

砂時計過ぎ去るものの涼しさよ

ひよこ売るをとこを憎む夜店かな

廻転扉シャネル五番の香もまはる

サングラス未だに坊と呼ばれをり

哲学として喰はぬなり心太

夏帽の飛ばされ易く飛ばされし

人間の脳重すぎる黴雨かな

美しき思案のさ中梅雨の蝶

ナイアガラ瀑布のまへの一切空

灯涼し祇園の小路夜も濡れて

業平の終の栖の苔の花

私鉄沿線アパート多き西日かな

夜の露台もつとも遠き灯を見つむ

滝落ちし水にあらたな天地かな

御来光待つ二杯目の濃き珈琲

これがまあ京の暑さや阿国像

葛切や祇園の燈しうつくしき


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