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8月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像8月

八月の濤とたゝかふ砂の城

虚雷聞く天神さまの細道に

雷鳴のプール老人抜き手きる

稲妻やをんなに別の貌がある

刑務所のほとりに佇てる白日傘

ふり向けば既にたそかれ秋の蝉

かなかなのこゑのみ透きて杉襖

脳髄より冷ゆるかなかなしぐれかな 脳髄=なづき

旱天や眼科に昏らき検査室

霧の中霧うごきゐる革命史

露の世に坐りなほして飯を食ふ

白露やたまたま人に生れけむ

夜の蟻を抓みて夜へかへしけり

赤き蟻黒き蟻ゐて交はらず

高層街衢八月の落葉せり

風入や古き写真に泣けてきて

夏惜むタクラマカンの石一つ

遠くゆく片道切符いわし雲

雲の峰をんなが四股を踏んでをり

夏負けや絶壁としてビルが屹つ

蚯蚓鳴くさすが六道珍皇寺

芋の露笑ひころぐる天下かな

天衣なる霧霽れ摩周ブルーかな

再会を誓ふシスコの夜霧かな

夜の秋の星空浴に君の星

東京が淋しくなつて秋立ちぬ

蛇口みな虚空を向きて広島忌

満室のカプセルホテル原爆忌

ひしひしと石積むが見ゆ原爆忌

坂道に影の蝶現れ長崎忌

つかの間をこの世に日照雨原爆忌

不眠なり夏暁の星の色失ふ

夜の雷や鏡を覗く女の貌

床涼み刻あをあをと流れをり

向日葵はいつも真顔できらひなり

しゝむらの表も裏も熱帯夜

かはたれの濃き珈琲に秋立ちぬ

現し世のふとはるかなり蝉時雨

かなかなや俄かに昏るゝ貴船川

朝顔の紺を愛する家系かな

星月夜メールせずともメール来て

をんなよりをやま美し秋燈

贋ものの寶石ひさぐ白夜かな

うつつなり砂漠に西瓜売る男

サントロペ水着濡らさぬ夫人ゐて

草涼しサラブレッドの母子ゐて

朝涼しロンドンに鳴る君が代に

供へある水に泛く火蛾死んでゐず

風あらけれど長城のたゞ灼けて

チャウシェスク倒しし弾痕灼けてゐし

即身仏見たるひとみに揚羽蝶

秋の蝶水琴窟を聴いてをり

つきつめて思ふわが影秋ともし

日本のいちばん長き日秋の蝉

東京の空のすがしき盆休

ロンドン五輪済みて俄かに秋めきぬ

秋灯や利口さうなる指狐

からくりの木隅も艶めく秋ともし

比叡より比良へと秋の蝶となり

饂飩にもきつねとたぬき西鶴忌

うたよみをかなしうしたる秋の雲

美しき数式はあり秋の雲

天体となれぬ砲丸晩夏光

弔ひの送信二秒天の川

屋根の上に捨つる一歯や天の川

かなかなに水玲瓏と流れけり

みちのくは青の国なり稲香る

この川を京へ流るゝ盆供かな

うしろより牛に啼かるゝ盆の月

とことはの不孝者なり盆の月

過去帳に水子がひとり茄子の馬

東京に不二見えてゐる終戦忌

秋蝉をあつめて広し妙心寺

新涼のイノダコーヒのテラス席

大文字連れてゆきたき人とほく

灯を消して舞妓と見やる大文字

束の間の逢瀬となりぬ大文字

大文字の後の祇園の灯にまぎる

緑蔭のベンチきのふの人に遇ふ

白日が一つ青野三百六十度

滴りのりりりりりりと切りもなく

アメリカの蝿も払へば弧を描く

あまねく主はいます糸瓜曲がり初む

正視してをとこ心の桔梗かな

一軒の八百屋の残る片蔭り

仰山の虫に螫されし大夏野

蟻が這ふ礎灼けても灼けてもや 礎=いしじ

紐ほどの径ゆき秋の蛇に遇ふ

秋風に五体のそよぐ畳かな

人形と盆供と流れゆきにけり

まぼろしの巨椋(おぐら)の池の秋茜

ふるさとの先づはおはぐろとんぼかな

存在をかそけくすれば蜻蛉来る

昼の灯を点して淋し萩の雨

みちのくの或るみちのべの男郎花

日時計の影鋭角に帰燕かな

水面はや夕べのけはひ河鹿笛

川あれば川のかゞやき秋めきぬ

秋の灯に故人の句集多きこと

千年の水千本の萩の花

匙投げて読まざるカントまた曝す

忘れゐし魚と眼の合ふ冷蔵庫

火取虫水のおもてに死んでをり

いつはりの髪色の子ら熱帯夜

チェス盤と椅子を残して夏逝きぬ

いづこかに胡弓の鳴れる月見船

老犬が老人を曳く秋夕焼

コンドルが金網を咬む秋夕焼

銀漢やプラットホームは岬なる

芙蓉咲く駅を乗り継ぎ黄泉の祖母

秋蜂の客死してをる畳かな

小栗栖に光秀の藪秋の蛇

霧ふりて別れ遅るゝ国際線

踊りの輪囲み踊らぬ輪のできる

あふむけに寝て死の如し大花野

台風の置いてゆきたる鼠かな

蜩のこゑのみ透きて杉襖

虫の夜のなかなか寝顔美人かな

有の実をいのち少なき母に剥く

仮病われに母は林檎を剥きくれし

夜業人なべて機械のしもべなる

法師蝉ちから溜めては鳴きにけり

ぎす鳴いて関東平野しづかなり

きりぎりす昔男に鳴きにけり

バッタ跳び亜細亜大陸蒼茫たり

月光のダム月光の一縷吐く

眉月の産寧坂の二階かな

校庭にだあれもゐない法師蝉

をととひはすでに昔日秋の蝉

白鳥座研ぎ澄ましたる野分かな

流れ星たかが人生ではないか

星流れ千夜一夜のものがたり

自転車で2マイル帰る銀河かな

どぶろくや此処は銀河の番外地

セロ弾きがセロ抱きて寝る星月夜

残暑とは猫の抜け毛のやうなもの

大阪の水のにほへる残暑かな

何や彼や手に提げてゐる残暑かな


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