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6月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像6月

六月の樟の香の雨降りにけり

東山げになだらかや雲の峰

夏めくや海豚の芸の人だかり

白熊の汚れてゐたり夕薄暑

大阪の水のにほひや夏の月

やませ吹く間近にありて無人島

絶海の孤島をおもふ大南風

記憶より痩せて母郷の夏の川

故郷の先づはおはぐろとんぼかな

身の内の鬼を宥むる冷し酒

かうもりや七堂伽藍真暗がり

七曜の早くもめぐる四葩かな

玉虫や形見も減りし桐箪笥

蟇われ在るゆゑにわれ思ふ

とある日の仏足石に蜥蜴の尾

蝮酒むかしの父は恐かりき

夕立あとなかなか香る東京都

驟雨過ぐ箸の先なる箸休め

キームンの香りの向う梅雨の街

かのひとも窓辺に佇ちて梅雨の人

事無げにけふも昏れゆく蟻地獄

茶漬飯食うて参ずる真夏の死

夕焼やあゝ赤チンの膝小僧

百の豚百の鼻ある溽暑かな

梅雨闇や壜の中なる日本丸

みづうみの夜雨すがしき洗鯉

人すわり犬もすわりて大夏木

冷蔵庫卵が減ると不安になる

夏の河ふぐり濡らして徒渡る

淡墨に暮れてうつくし梅雨の京

片蔭もゆかしき京の町家筋

七曜のおほかたは雨七変化

影来り止りて髪切虫となる

決めかぬる明日シャワーを全開す

大夏木すでに母亡き郷なれど

木には木の言の葉のあり緑の夜

水バーに水を味はふ夜半の夏

我在らぬ岸を眺むる立泳ぎ

傍にゐて水着の娘はるかなり

白川やかくも静けく梅雨流れ

学校に七不思議あり五月闇

夕立を過ごす碧眼本能寺

金閣の金を見すぎし霍乱か

ハチ公はとはの忠犬梅雨滂沱

鉛筆に木のかをりせる梅雨入かな

いくたびも寄る同じ窓同じ梅雨

鑑真の聞きおはします梅雨の闇

父の日の機嫌の悪きゴリラかな

父の日の父さりげなく旅にあり

空梅雨か首を反らせる陶の亀

しくしくと腰骨泣けり梅雨の冷

出水して戻らざる亀太宰の忌

香水を更へたるひとをいぶかしむ

軋みしは己れの五体籐寝椅子

大人とは汚れしこども水鉄砲

しやくとりのとりあましたる山河かな

掻い抱くや螢の中に螢ごと

業平の終の栖の苔の花

梅雨晴や生八つ橋を焼く香り

容赦なく急ぎ去るもの蚊遣香

夕網のものばかりとぞ夏料理

子かまきり一人まへに斧構ふ

おはぐろのはらはら翔べる川の上

とうすみのゐるやさしさのやのかたち

蜻蛉生れ早や水底を忘じけり

白妙の小流れに遇ふ青葉闇

この下闇を祇王寺と云ふべかり

この下闇が好きで来る法然院

梅雨晴のイノダコーヒのテラス席

川風や甘味処の麻のれん

そのむかし駄菓子屋ありし片蔭り

冷房の効きゐて壁に原爆図

扇風機めし屋の壁に裕次郎

悪口もほどほどにせよ冷奴

六月やすでに毟れぬ草の丈

竹皮を脱ぐ乙訓(おとくに)の風やはし

髪切つて梅雨空すこし軽くなる

人間の脳おもすぎる黴雨かな

朝焼や誰かきれいに死ぬ予感

朝虹失せ高層街衢起動する

たれかれに吠ゆる痩せ犬日蔭街

夜の蟻おのれの影をもてあます

をさな子は十まで算(よ)めて初螢

流螢やゆふべの逢瀬はや遠き

若者が一人帰らず海夕焼

凪といふ淋しき刻の平泳ぎ

たそ彼ゆ彼はたれ淋し蛍籠

白々といちにち降りぬ夏至の雨

法善寺横丁に酔ふ鱧の皮

日焼してカレーライスの好きなひと

シーツに残す短夜の長き髪

長端居してポアンカレ予想など

金魚玉吊るして人の世の歪(いびつ)

毘沙門の使ひの百足殺めけり

回送の涼の一塊よぎりけり

父の死後艶の失せたる竹夫人

病葉やビルを映せるビルの窓

舞妓けふ暇の絞り浴衣かな

けふもまたあすをうしなふ白夜かな

街娼の眼の青醒むる白夜かな

みんな不幸で西日のバスに揺られをり

蚊を打つてわが血に汚すわが腕

案の定くすぶるばかり毛虫焼く

蝸虫のやをら逸れゆく憂世かな

火蛾も乗せ東京メトロ終電車

梅雨晴や錦に香る走りもの

錦やないきなり穴子焼く匂ひ

天龍寺さま境内に氷菓舐め

年半ば梅雨最中なる不如意かな

簾を垂れて祇園新橋灯しごろ

抜かりなし夜も水を打つ祇園町

噴水の翼たゝみし星夜かな

卯の花に子のなき夫婦住みなせり

在五忌の過ぎたる寺の苔の花

山水に切れとふものや不如帰

郭公やまほらはひと気なき処

なにもかもいつも見てゐる水中花

水中花咲かせてきのふけふ未来

女人より泊めぬ禅林沙羅の花

夏の灯や昭和のにほふ古本屋

口あけて冥土を見する鯰かな

現し世をいつしかはづれ螢舟

喪の酒に酔へぬ喪主なり冷奴

病葉の町川に降り町を去り

夜の蟻熟慮の末に潰しけり

もう読まぬ『されどわれらが日々』曝す

高瀬川あくまで浅し灯すゞし

夜の雷や女に別の貌がある

灯取虫落ちて瀕死の革命史

百足死し遅れて百の足が死す

かなぶんになりてかの日へ帰りなむ

コクリコの碑に触れもせで鳳蝶

猿山にひと騒ぎあり梅雨旱

北行を上ルと云ひて京暑し

川床涼み花かんざしの風に揺れ


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