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1月の俳句
田畑益弘 俳句新作


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相識らぬ幾万のかほ初まうで

鍵善にこひびとと逢ふ初まうで

白朮火を護りて上ル東入ル

白妙の嗚呼しろたへの京雑煮

かりそめの世に遊びせむ初日記

遠景に如意ヶ岳見ゆ筆始め

恵方へと魔物の金を持ち歩く

獏枕亡き人々に賑はへる

ひそやかに一歯喪ふお正月

水の出ぬ蛇口が一つ山眠る

狐より賢からざる狐罠

火事跡や離れぬ犬のをりしこと

買初の茶碗をゑりてちやわん坂

一つ翔つと皆翔つあはれ都鳥

昔男ありけり老いて着膨れて

高層街衢手毬つく子の一人きり

手毬唄こゝのつとをで雪になる

つぐみ焼昭和もとほくなりにしよ

虚しさのその大きさの雪仏

正眼に構ふる剣士寒オリオン

初旅や柿の葉鮓の葉のかをる

三寒の紐のほどけて夜の雨

熊出でし山にも市制布かれあり

冬芽赤し少年はいま反抗期

蜜柑に爪深く悪女かも知れず

寒紅や祇園は昏きところなる

三十六峰みな名をもちて初霞

賀茂川の真白き鳥も今年かな

金箔の減りたる酒も馬日かな

眼鏡汚して人日の人の中

妥協せじ寒の断崖見て立てる

冬耕の一人に遠き一人かな

冬の蝶供華より供華へ翔びにけり

冬の蠅罰があたつて生きてをり

流浪記の序章に群るる冬の雲

雪描くと絞り出したる黒絵具

ワインロゼ互みに酌みて姫始

歌がるた帝の恋も叩かれて

ばつたりと南座まへの御慶かな

老猫を褒めて去にける老礼者

あづまびと京の底冷かこちけり

七草粥食べていちにち淡々し

人体のおもてとうらに焚火燃ゆ

湯波半の湯気かぐはしく寒に入る

化野の石にはじまる寒暮かな

順々に逝きて一人や置炬燵

独身を徹す彼女の黒セーター

長考に沈みゆきたる襖かな

水仙や怒濤いくつも見てゐたる

蝉丸も小町もとられ負け歌留多

成人の日のまだ踏まぬ道の雪

燦々と六腑に沁むる寒の水

家猫のけだもの臭き冬籠

薄目して凡て視てゐる冬の猫

待春の一本脚にねむる鶴

炉語りやOldParrの氷鳴る

自動車も静かなObjet深雪晴

野の宮の苔うつくしき落葉かな

止まり木に女将とふたり冬の雨

都鳥一つはぐれて高瀬川

鳰の湖鳰もろともに茜さす

鶴の影鶴よりおほき雪の上

鶴のこゑ白日輪の中にあり

虎落笛耳は哀しき岬なる

星屑が画鋲のごとし虎落笛

すき焼と決めて同期を集めたり

石炭や学び舎の地下怖かりき

ロボットの犬撫でやればつめたさよ

寒菊に埋め尽したる夭死かな

一行の寒の日記を書きて寝る

吊革にゆらりと日脚伸びてをり

枯れ切つて哲学の道見事なり

裸木となりおほせたる果報者

切結ぶ竹の音聴く寒九かな

部屋隈に蜂のしかばね日脚伸ぶ

心根に寒柝のしむ旅寝かな

詩を書きて不器用に生き冬の星

深海の如き夜天や寒の月

あたゝかき冬月なりし逢瀬かな

ひとりごち愈々醒むる霜夜かな

オルゴール途切れし後の凍夜かな

還る地もあらぬ木の葉や摩天楼

日向ぼこもの哀しさも身に溜まり

憑かれたる如くにくさめ戻橋

いづくにか川音(かはと)を置きて川涸るる

裸婦像や枯園の陽をほしいまま

窓際の背中に冬日ありにけり

脳髄(なづき)にも燦と沁みゐる寒の水

金閣のさかしまにあり冬の水

哭いてゐる方が勝ちたるラガーにて

大くさめして東京の地下なりし

四分の一の白菜買ふ独り

頓堀のネオンに浮かむ冬菜屑

湯豆腐や硝子のくもり拭けば雪

湯豆腐や嵯峨野の宵のしぐれ癖

道をゆく冬青草に励まされ

草枯に日照雨(そばへ)は小さき虹生みぬ

マスクして鏡に我といふ他人

雲の上の鳥の眼になる屏風かな

銀屏に翳あはあはと家人来る

経写すひとりとなりし障子かな

翳りなき海を写して寒卵

つつがなく定刻に覚む寒卵

酌下手の汝を愛しむおでん酒

熱燗や放つておいてくるゝ見世

斎の座にゑふ海鼠腸のせゐにして

寒卵母郷の空の日本晴れ

寒櫻少なき人をあつめけり

冬薔薇をとめのために咲きにけり

冬さうび香る未通女の筆先に

冬木の芽見つけしことをけふの日記

きのふ来てけふも来てゐる寒菫

底冷にしてはんなりと京言葉

待春の身をひるがへす近江鯉

亡き母にとゞく一葉冬の虹

大寒のほのほの中の中華鍋

世界地図つぶさに見入る冬籠

まなうらに雪嶺の屹つ眠りかな

枯れ切りし哲学の道なぜか好き

おのが影叱咤激励して一月

枯野人こどものやうに石を蹴り

雪虫や友の消息杳として

寒星や詩を書く人の頬蒼き

もゝとせの家に住みなす隙間風

遠祖のこゑもまじりて隙間風

寒櫻ひとりあそびの子供ゐて

寒櫻無住となりし山の寺

室花か造花か分かず精神科

日向ぼこ立つたら帰るほかはなく

目つむれば遠つ世にあり日向ぼこ

すつぽんの血を呑まさるゝ薬喰

大原はけふも雪積む牡丹鍋

憂かる日の終止符をうつ寝酒かな

風花や更けてにぎはふ先斗町

暮れてより華やぐ小路牡丹雪

春近し平等院をうつす水

島の灯が真珠のごとし春隣

人形の起こせば開く眼春隣

はらわたに寒の怒濤をためておく

山眠りゐて石英は水晶に

賀茂の水古鏡のごとし都鳥

しばれると京に来て云ふあづまびと

寒空やマッチは燃えて身を捩る

炉の部屋に寄りて親しき他人かな

鮟鱇を喰ひし身ぬちの真暗がり

鮟鱇を裂き掴みだす地獄かな

埋火のまま消えゆくに似たること

みちのくの伏目のこけし冬永き

釈迦如来像おんまへに大嚏

月光を纏ひしごとき湯ざめかな

日向ぼここの世去るごと一人去る

寒星や賢治の詩を諳んずる

嚏してチンパンジーに嫌はれし

春節やハマに老酒ふるまはれ

榾足すやよべの話のつゞきして

枯葉舞ふ御池通は好きな路

酢茎漬提げて上賀茂御園橋

水仙花潮の匂ひにまぎれざる

人誹らねどくちびるも冬ざるる

闇汁を囲み愚かなわれらかな

なにとなく男ら屯する寒さ


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