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7月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像7月

鱧食うてけふに始まる鱧祭

室町も二階囃子の夜風かな

あぶり餅炙るかをりの梅雨晴間

朝の虹愛は執するものならず

あきらめてミステリー読む熱帯夜

涼しいね淋しいよねと夜のファクス

すゞしさや死んで原子になる話

砂時計過ぎ去るものの涼しさよ

花火会や連れて行きたきひと遠く

リンゴ飴ふたりで舐めて夜店ゆく

喪の酒のはじめ静けき冷奴

如意ヶ岳向ひに据ゑて冷奴

こいさんも初の浴衣の三姉妹

舞妓けふいとまの絞り浴衣かな

 

〜暫し短歌を〜

飽食の国の辺飢餓の国ありて飢餓なき如き兵の行進

行く方も生死も分かぬ老いありてグーグルアースに屋根の上の猫

手に何も持たずに歩くたゞ歩く手がかろきとは足かろきこと

一球に大の大人が十八人投げる打つ捕る盗む刺す殺す

1800℃で煮ると云ふ大市のすつぽん食ひて暑気払ふべし

孵化近き朱鷺の卵を烏が喰ふ我々の罪軽くはあらじ

 

己が名を検索窓に入れてみるわたしの知らぬわたしが現るる

ティッシャーのさし出すティシュー取らず過ぐけふの気分の小さき反抗

あをあをと眼下夏海吾を誘ふ魔物は遂にわが内にをり

不和反目嫉妬裏切りもろもろのそのどろどろを政党と云ふか

3分の2ほど終りし蚊火を見る見る間も過ぐる時の急流

生きて死ぬそれだけのこと本当にそれだけのこと星が流るる

『昭和萬葉集』ひらけば黴の香の中ゆ黴びぬ言の葉立ち上がりくる

 

京都祇園花見小路のサンドウィッチマン人波の中にひとり老いたり

嘗て陸(くが)を捨てし鯨がさびしらに陸を見にくる黒潮の岬

死ぬ高さ死ねぬ高さをゆつくりとけふも廻つてゐる観覧車

奔流は滝となり又滝となり永遠に未完の一行の詩

滝落ちて又滝落つるまなうらをふと立ちのぼる水のありけり

河原町阪急が消え待ち合はす阪急前が消えわが不倫も消えし

身の上話ぜーんぶ嘘と笑はせて善花(ソンファ)といふは本名と云ふ

 

ないやうに見えて道ある青野かな

いま打ちし水いま消ゆるこの世かな

遠花火あなたは別のことおもふ

宇宙に暮らす人おもふテラスかな

いうれいに訊ねてみたる落し物

らふそくの火が一つ百物語

影来たり止まりて髪切虫となる

茂るまま茂りて過疎化高齢化

きのふがまだ傍らにゐる熱帯夜

泡盛にたくましきかな島野菜

大阪の水のにほひや夏の月

頓堀に男前なる夏の月

胆試しすれ違ひしは誰ならん

冷房に籠るときどきひとりごち

回転ドア香水の香を残しゆく

コンピュータルームに仄とシャネルの香

夏痩せて御歳百に叱らるゝ

夏痩せて紫煙の行方見てゐたり

夏痩せていよいよ火酒の旨かりし

喪の膳のげにも涼しく海の幸

喪の膳の百人百の鱧落し

サングラス未だに坊と呼ばれをり

浴衣着てむかしは男前なりし

老人が此方(こち)見て笑まふ網戸かな

無人島人をゆるして夏旺ん

何もかも見てゐし如く水中花

ぼうふらのふらふら明日を待ち侘ぶる

日本に父ゐずなりし大青嶺

さまよへる昼寝の国の快楽(けらく)かな

暗室のありなしの灯にひとりむし

紫陽花の藍の極まるなゝなのか

メロン切る女将のけふの機嫌かな

そのむかし胡瓜正しく曲がりけり

また太き雨が降るなり鉾祭

たゝなはる祇園囃子も四条かな

蟻走る白亜紀ジュラ紀三畳紀

屍に群るゝ蟻を見てをり頭垂れ

日盛りや蟻の足音聴き澄まし

熱帯魚そびらに夜の大都会

簡単服ひとは首筋より老くる

清正の鎧も屏風祭かな

肩車され宵山の空をゆく

その奥はをぐらき祭屏風かな

祭屏風その奥に下駄の音

宵山を遠く離(か)れても鉦の音

地下出れば祇園囃子の真只中

鉾回すをとこの気負ひ佳かりける

京暑し上り勾配なる大路

去来塚かゞめば蟻のさ走れる

をがむ間に夏蝶消ぬる去来塚

化野の仏も灼くるこの世かな

化野や土用干して人住まふ

たゞ灼けて芹沢鴨の小さき墓

蝉鳴けり蝉の屍のうへ蝉鳴けり

蝉しぐれ葬始まりて葬了る

青嶺より望む母郷の青嶺かな

「通りぬけできます」と路地涼しけれ

お持たせの柿の葉鮓を共に食べ

嶮にして泉へつゞくけもの道

座の釜に蓋なき劫暑かな

涼しく掃くは碧眼の修行僧

M女史の香水タブーと云ふらしく

面影よりも香水の香の記憶

このひとの項すがしき庭花火

線香花火しまひまでよくよく見る

傍にゐて水着の娘はろかなり

うすく怒りうすく笑ひて大暑かな

尺取の一枝加ふる青山河

子かまきり皆おなじ貌おそろしき

ちりぢりのその後を知らず子かまきり

水母らの流離のなみだ海になる

さまたげにならぬしほさゐ籠枕

牛の舌豚の心臓暑気払

法然院さまの下闇長ゐして

藪蚊鳴く寂一文字の墓の裏

でで虫のゆつくりいそぐ浄土かな

夜の秋の星空浴に君の星

冷蔵庫卵が減ると不安になる

人間の罪ぎつしりと冷蔵庫

残念なき蝉の骸のかろきかな

ひきしほに汐木をかへす晩夏光

淋しさへぐいと沈みぬ晩夏の日

水バーに水を味はふ夜の秋

炎天へふらんすの水買ひにゆく

炎昼を歪んで横切る道路鏡

夏惜むタクラマカンの石一つ

雨乞ひや首を伸ばせる陶の亀

蟻地獄蟻落しては子の遊ぶ

夜の蟻けふは白紙の日記かな

しんがりの蟻がんばれよほどほどに

千年の古都の外れの道をしへ

夏つばめ火の見櫓を子は知らず

日盛の猫の目覚めぬほどの地震(なゐ)

昼寝せむ水平線に異状なく

仰のけの触れば鳴ける落蝉よ

蝉鳴けり寿限無寿限無と蝉鳴けり

暑気払ひ韓(から)のをとこと火酒を酌む

白紙なるファクスひらりと夜の秋

木屋町の夜蝉も鳴きて金曜日

夏蝶の笑ひて去りし日和かな

百匹の金魚に我は君臨す

見てゐるとつゆたゝかはぬ闘魚かな


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