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2009年一月の俳句
田畑益弘 俳句新作


新着情報 画像1月

砂時計の天地反して去年今年

年明くる猫の欠伸のたまゆらに

白朮火と四条の闇にすれちがふ

をけら火を庇ふ大橋渡るとき

花かつをふはりと浮かめ京雑煮

一月やわが立てばわが影も立つ

天井を元気に鳴らし嫁が君

初鶏に一歩二歩闇あとしざる

朗々と声落すかな初烏

初鳩も人馴れしをり祇園さん

恐慌の只中に注ぐ福茶かな

ばつたりと大丸まへに御慶かな

初空や三十六峰欠くるなし

冬櫻散つてをりたる安堵かな

初比叡三十六峰率て晴るゝ

花札の鶴ふりさくやお正月

うかうかと午も過ぎたる三日かな

金箔の減りたる酒も四日かな

初夢の石階(いしはし)にまた躓けり

数の子や一歯抜けにし噛みごこち

買初の茶碗を撰りてちやわん坂

買初にいなりずし買ふ稲荷駅

初写真千本鳥居そびらにし

七草菜ゆび折りながら声にして

猫一匹人間一人寒に入る

燦々と腑に沁みとほる寒の水

寒風や怒濤を離(か)るゝ怒濤音

まなうらに寒の断層妥協せず

寒月の見透かす如し我の闇

なにもせぬ男が飼へり炬燵猫

薄目して凡て見透かす炬燵猫

牡蠣食べて賀茂鶴酌みて安芸にあり

振り出しに戻る長男絵双六

双六の上がりの如く京に到く

冬苺ひとりで食べて淋しき日

どの黄身もにこにことして寒卵

独りごつにあらず独り歌留多読む

仏眼に守(も)らるゝ如し冬満月

雪景色黒一色で描くべけれ

ちちははの世より住みなす隙間風

外套の祖父の懐おもほゆる

耳ひとつ枕に埋む虎落笛

やすらけく一裸木となりおほす

大いてふ思ふ存分枯れゐたり

寒林にこゑ美しく禽の棲む

町川に町を去りゆく冬菜屑

天のもの天に還りぬ冬の蝶

天よりも地の輝ける氷かな

水仙の香に水仙の意志感ず

冬菊に埋め尽しても夭死なる

海鼠腸を買はんがために錦へと

きざみ酢茎あれば足らへる朝餉かな

毬のごと小犬のまろぶカーペット

冬館深き深きにピアノ音

朴落葉たゞ青空のあるばかり

榾を足すオンザロックに氷足す

藁しべも滞りゐて川涸るゝ

石炭よ昭和時代よ淋しさよ

をんな三人よく喋る炬燵かな

脳の大部使はずにゐる炬燵かな

石炭や学び舎の地下暗かりき

枯木山むしろ孤独を愉しめる

茶一服莨一服日脚伸ぶ

実千両雪にこぼれて目出度さよ

一本の藁しべ噛みて初氷

照れば懐き昃れば拒む冬の海

寒潮の陸(くが)を蔑して滔々たり

寒水に映りて己れ真顔なる

夕日の黙冬耕の黙つつがなし

巌の黙凍滝の黙我の黙

凍滝の凍て極まりて青ざむる

狐より賢き筈よ狐罠

大寒のきれいに残す魚の骨

大寒の箸の先なる魚の骨

大寒の炎の中の中華鍋

待春の箸の先なる明太子

何人(なんぴと)がはじめに食ひし海鼠かな

ほくほくのコロッケ買はん寒暮なる

月光に咲きしと思ふ寒櫻

室咲を造花とおもひ触れてみし

未来あり冬の薔薇の咲くかぎり

遠ざかる山陰本線雪もよひ

虎落笛吹きて過るは韋駄天か

寒日和大阪城に遊ぶかな

待春の達磨の白きまなこかな

童んべにお菓子のやうな雪の降る

身に合ひて亡父の冬服哀しとも

粕汁や舌のやけどはすぐ治り

熱燗やをとことをんな馴れやすく

天狼を指し少年のゆび真直ぐ

鮟鱇鍋酔うてをらぬと酔うて云ふ

遠縁の談笑しをる喪の冬灯

襖閉むればふたりにて充満す

京極に牛鍋囲む同期かな

こつそりと遅き朝餉の凝鮒

闇汁の箸にかゝりし物に箸

野良猫は好き炬燵猫嫌ひなり

一行の冬の日記を書きて寝る

千鳥聴きつつ盲ひの確かなる歩み

枯野ゆく海一片が眼路の果

冬の蝶供華にとまりて動かざる

凍蝶の千々に砕けて風になる

夢むることこの凍蝶と同じうす

身のほむら消すべく落葉焚きにけり

五色豆ついでに買うて春隣

寒鯉に噛み殺したる欠伸かな

島の灯が真珠の如し春隣

春近し孔雀は尾羽開かねど

酒に酔はず冬の星座の燦にゑふ

樹海にて冬越す蝶に邂ひしこと


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